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能傍タルツの実話怪談コレクション「現代筑前奇談考」その二十七 -2月-『信号機』

筆者の大学時代からの友人、
S氏から聞いた話。

大宰府市に在住のS氏。

二十年前くらいの話だが
当時やっていた
バンドの練習帰り。

 福岡市と大宰府市を繋ぐ
 通称「五号線」は
 都市間の交通の動脈であり
 朝早くから夜まで非常に
 交通量が多い通りだが
 深夜ともなると打って変わって
 たまにタクシーが通りすぎるくらいの
 寂しい通りとなる。

 S氏が深夜
 五号線の岡本という四つ角を
 自家用車で通過しようとしたら
 ライトに照らし出された
 岡本の信号機の上に
 誰かが日本人形を置いていたそうだ。

 不意を突かれて
 びっくりした彼は
 ハンドルを切り損ね
 ガードレールに接触。

 幸いにして
 前述通り
 訪なう人とてまれな
 深夜ということで
 対向車も歩行者もおらず
 単なる自損事故となった。

 ところで周知の通り
 地上から七、八メートルはあろう
 信号機の上に人形を置くのは
 高所作業車でも使わなければ
 まず、無理である。

 また、
 上空は風も強く
 不安定極まるそんな場所に
 いったいどうやって
 人形を固定させていたのだろうか。

 悪戯にしては
 いろいろ不可解な点が多い。

 いずれにせよ
 S氏はその一件以来
 日本人形を見ると
 なんとも言えない怖気が走る
 と、筆者とのメールに
 記されていた。

 ちなみに
 筆者もその岡本の四つ角は
 何度も通過したことがあるが
 なんの変哲もない
 信号機である。

 ただ、
 そこの四つ角を
 東にまっすぐ行くと
 陸上自衛隊春日駐屯地の正門に向かう。

 そこいら辺りは
 終戦後まもないころは
 米軍に接収され
 春日ベースと呼ばれ
 米兵相手に大変賑わった街である。
 
 今でも
 いわゆる米軍ハウスのあとが
 あちこちにある。

 それと
 日本人形が関係あるかどうかは
 はなはだ不明ではあるが。

 (終わり)
 
 
 
 

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