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2021年を「神」に挑む年に!

前回の記事では、16世紀のヨーロッパで「神」という称号を得るほどに称賛された、フランチェスコ・ダ・ミラノというリュート奏者をご紹介しました。今回はその続きです。

結論から言うと私は、この2021年をフランチェスコ・ダ・ミラノとともに歩む年にすると決めました
具体的には、自分のYoutubeチャンネル内で、週二の頻度(火曜日と金曜日)でフランチェスコ・ダ・ミラノのリュート曲の演奏動画をアップする、というプロジェクトを立ち上げたのです。

先だって昨年のクリスマスに、イントロダクションの動画を公開しました。

このプロジェクトを「il Divino challenge」と名付けたのはもちろん、フランチェスコ・ダ・ミラノの称号「il Divino(神)」にちなんだものです。
そしてやや恣意的に解釈すると、「神に挑むチャレンジ」とも言えます。

「大げさな!」と思われるかもしれませんけども、これに取り掛かることを決めるまでには、実際は大きな葛藤がありました。
普通に考えて、実現困難なプロジェクトであることが目に見えていたからです。
でも意を決して決行したのには、大きく二つの理由があります。

まず一つ目の理由として、単純に、リュートを弾く者としてフランチェスコ・ダ・ミラノの音楽は憧れだから。
二つ目は、こうした試みは昨今の事情で、人前での演奏の機会が減ってしまった今しかできないことであると思ったからです。

一年完結という目標を立てる中で、まずはフランチェスコのリュート曲でも特に、リチェルカーレ(Ricercare)とファンタジア(Fantasia)に対象を絞ることにしました。これらは彼の作品の大半を占める、概して即興的で自由に作曲されたジャンルで、「神」と称された彼の演奏技術の一端を、見事に今に伝えるものです。
なんと全部で110曲ほどあるのですが、短い曲を1つの動画にまとめるなどして工夫すると、週二ペースを守ればでちょうど一年で終わる(!)ことに気づきました。しかも、今年は元旦と大晦日が同じ曜日であるということも、定期的に動画を出すのに有利に働くと思いました。

さて次に、録音方法及び、演奏の収録場所が問題となりました。

最近は、良い録音機器や音源編集ソフトも増えて、いわゆる「宅録」でもかなりのクオリティのものが実現できます。
しかし今回のシリーズではあえて、各曲の演奏はノーカット、一発テイクにこだわりました。極力、ライヴ感を大事にしたかったからです。

さらに収録場所は、私の住んでいる町であるバーゼル市内に残る、16世紀の建物の中と決めました。これも16世紀にこだわったのは、フランチェスコ・ダ・ミラノ本人が活躍した時代であったからで、ならばいっそイタリアに行きたいところですが、さすがに時勢柄それは無理ということで・・

そうした経緯で、各所有者の許可を得て、これまでに演奏動画の撮影に使用させていただいた場所が、以下の四か所です(各会場の名前のリンクから、それぞれの公式サイトに飛べます!)。

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↑ ハウス・ツム・ホーエン・ドルダー(Haus zum Hohen Dolder)
バーゼル市の夜警団が代々住んでいた建物の一室で、16世紀前半の内装を今に残しています。
この画面右側に見えているのは、スイスの人々なら誰もが知っている、ウィリアム・テルの物語を描いた、当時の壁画。
先ほどのイントロ動画と、1月から2月に公開した動画は、全てここでの収録です。
変化をつけるため、曲によって同じ部屋でも座る場所を変えたりしています。

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↑ レーヴェンツォーン(Löwenzorn)
バーゼル旧市街の中心にある、由緒あるレストランで、その中で最も古い部屋がこれ。
時計その他の調度品を、16世紀のイタリアから取り寄せたものが残っているのも貴重。

3月の前半と、4月の下旬に公開した動画の一部をここで収録しました。
ロケーションは抜群なのですが、中心街であることもあって、時間帯によってストリート・ミュージシャンの演奏が外から聞こえてきて、しばしば録音を中断しなければならなくなることがあって、ちょっと大変でした。

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↑ ヴァイゼンハウス(Waisenhaus)
ライン川にほど近い、かつての孤児院だった建物で、ここにも16世紀初期の部屋が2つ残されています。

私が気に入ったのは、この捻じれた形の柱を備えた小さいほうの部屋。
音響も良く、弾いていて気持ちの良いところでした。
ここも、3月と4月に公開した動画の多くで収録場所としています。

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↑ シュッツェンハウス(Schützenhaus)

これもレストランで、何ともとは武器庫だった建物です。
そしてこの大広間にも、16世紀の調度品がいくつか置かれています。

5月から開始した最新シリーズの動画は、ここで収録しています。
また秋(おそらく10月以降)に公開予定の、リュート二台用の作品も、ゲストをお呼びした上で既に録りました。乞うご期待!

来週に、再度最初の会場で収録を行い、順調に行くと夏までに全ての曲の収録を終える予定です。もちろん、それからも編集作業は続くわけですが・・

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以上、「il Divino challenge」の収録場所のご紹介でした。
実はちょっとした、バーゼルの観光案内のようにもなっています。

再度、私のチャンネルのリンクをこちらに載せますので、もしよろしければ、各ロケーションにも注目しつつ、音楽を楽しんでいただければ幸いです(概要欄にも情報は書いてあります)。

また次回以降、今度はフランチェスコ・ダ・ミラノの音楽についてより深く、ご紹介することができればと思います。

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