地域活性化と再現性。

「地域には地域の個性がある」「その地域特有の文化がある」「二つとして同じような地域はない」などとよく言われているが、この前提の受け取り方によって、解釈がまるで変わってしまう。地域活性化を実践する上では、地域の個性という言葉について、深く掘り下げないと見えないことが多い。

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地域活性化の理論がある。崇城大学の星合隆成先生が提唱する「地域コミュニティブランド」だ。星合先生がNTTの研究所に在籍していた時に、P2Pネットワークの理論「ブローカレス理論」を提唱した。

ブローカレス理論では、様々なコンピュータ同士を仮想化させ、必要に応じたインターフェイスを開示することで、コンピュータ同士がつながれるようにしている。仮想化=ピア化として、つながる対象全てが“ピア”になれば、どんなものだってつながるよね、と説明している。
(ネットワーク技術の素人なので、雰囲気で解釈してます。すみません)

であれば、現実世界でも同じことができるのではないか?というのが、「地域コミュニティブランド」(Social Community Brand)だ。現実世界では、地域にあるヒト、モノ、カネ、情報、すべてが“地域資源”であり、これらをピア化できれば、有機的なネットワークが構築できるはずだ。

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地域に長く関わっていると、地域の個性の正体は、その土地の歴史以外ないと感じている。僕はこれを“土地のコンテクスト”と呼んでいる。土地の歴史が地域の人の個性に大きな影響を与えると考えている。

多くの場合、地域の”今”を見て、それを地域の違い、個性と呼んでいるように感じる。けど、時間を軸に地域を捉えると少し違う。“土地のコンテクスト”は、“連続する因果関係”(楠先生の「ストーリーとしての競争戦略」の中で使われていた(?)言葉かどうかは忘れたけど、読んでいるときに認知したフレーズ。物凄く気に入っていて、文脈に基づいて思考する“コンテクスト・シンキング”のヒントになった)の結果だ。今があれば、過去もあるし、未来もある。そこに生まれ、育った人もまた、その土地のコンテクストの結果として表われたにすぎない。その人がその土地に暮らしている以上、土地のコンテクストにも影響する。土地のコンテクストとそこに暮らす人との関わりによって、その場所が、楽しくもなるし、寂しくもなる。そうやって影響しあうのだ。

人は、土地のコンテクストに影響を受けるし、人の暮らしが土地のコンテクストに影響を与えるが、人そのものについて考えると、沖縄だろうと、北海道だろうと、人そのものが大きく変わることはない。好きなものは好きだし、嫌いなことはしたくないし、ストレスを感じれば避けたいし、楽しいことはずっとしていられる。道具を生み出し、道具を使うことで、生活や環境は変化してきたが、走るスピードに違いはあれど、空を飛べる人はいない。

そして、人の暮らしには、自分以外の人や土地のコンテクストや環境など、全てが関わって成立する。この関わりこそ、つながりの正体だ。つながり方を意図的にコントロールして構築することが出来たらどうだろうか?土地のコンテクストを差分と捉えて切り離してみると、どの地域に存在するもの=地域資源に、大した差はないのだ。

言い換えるなら、地域の個性とは、その土地の歴史や環境などに影響された場所と、そこに暮らす人たちとの間に生まれたつながりの結果が可視化したもの、と言えるだろう。簡単言えば、土地×人×つながり=個性で、土地の違いを把握し、人を切り離した上で、繋がりの正体を突き止めて、再現性あるものにできれば、個性はコントロールできるはずだ。

地域コミュニティブランドが面白いのは、つながりにのみフォーカスしている点。つながりを科学することで再現性が生まれるのだ。

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