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下駄の話

今日は下駄の話でもしようか。駒下駄。

私は夏期はバイトでもない限り基本的に下駄しか履かない。少なくとも5年前以上前から同じ下駄を履き続けており、歯の磨耗が著しくなっていた。長く使っていながらも左右を定期的に履き替える方がいいという事を知らぬまま適当に履き続けていたので、外側がかなり斜めに削れている。

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小指が当たる部分の板まで歪みだしたので、流石に限界かと思い新調したのが先日の話。

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サイズについては、踵が少し出るくらいが良いとされている―――下駄を履いたキャラのイラストを見ると大抵デカいのを履いている事に目がいってしまう。デカくていいのは、高下駄の話である。尚上の画像は買ったばかりで鼻緒(前緒)が少しキツく、やや浅めに履いていたのでやたら踵が出ているように見えるかもしれない。

履物専門店で5000円弱だった。以前のものが二千数百円程度だった気がするので、たまには高めのものも良いだろうと思ったのだが……どうやら、素材自体が違っていたらしい。恐らく桐製だろう。和装履物の界隈では桐以外のものは全て雑木扱いされるらしく、良い下駄は殆ど原則的に桐で作られているようだ。買った次の日に1日歩き回ったら帰る頃には違和感も全くなくなっていたので、桐の柔らかさは、なるほど歩きやすくするには好ましいのだな。

―――しかし、私にはこの柔らかさがダメだった。歩きやすいのはいいが、私の使い方だとあっという間に損耗してしまう。

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買ったの9/1だぞ? もうこんな減ってるのか?

前の下駄では上画像の歯の角部分のような欠落は起こらなかったし、小石も爪で引っ掛ければすぐに落ちる程度までしか刺さらなかった。履物に限らず、何であれ高級で出来の良い物より多少使いにくくとも耐久性に特化した物の方が私には望ましいのだ、と再確認した次第である。古い下駄を捨てる前にその素材を調べておくべきだった。


ところで、下駄を履いていると最もよく訊かれる質問に、「歩きにくくないの?」というのがある。答えよう。

坂や階段の登りは歩きやすく、慣れると普通の靴にも勝る。下りはかなり歩きにくい。平面を歩く分には、私は歩きにくさをあまり感じないが、これは偏に慣れかもしれない。走ったりジャンプしたりといった運動に関していえば、普通の靴には到底及ばない。総評としては……まあ、趣味の域を出るものではない。私は普段から和服なので、普通の靴を履くのも気が引けるという理由もある。……そういえば大学の頃は、知らない学生にまで「下駄の人」とか呼ばれてたなあ。


下駄を履くよりもずっと前からの私の歩き方の癖として、親指に妙に力が入る、というのがあった。靴の中敷を見ると、拇指級や踵も減りはするが真っ先に穴が空くのは親指の部分である。指に力を入れて歩くのは、雪道の歩き方である。そして今日歩いていて突然気付いたのだが、脚でなく足先に頼ったこの歩き方は、後ろの足で地面を蹴り出すように歩く下駄の歩き方と相性が良いようだ。下駄はその安定性を鼻緒に頼っており、且つある程度早歩きする分には親指と人差し指でこれを掴むようにして歩く事になる。すると自然に、親指に力が入る歩き方になるのではないか……と思うのだ。

姿勢や健康面等で見ればこれは好ましくはないのかもしれないが、雪道の歩き方をしていたらしい私の足は、元々下駄には合っていたと言えるのかもしれない。その事に気付き、なんだか嬉しい気分で今日は帰路に着いたのであった。

然らば。

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