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【往復書簡 エッセイNo.18】後期高齢者の両親との旅「家族ときどき他人」(1)

うららちゃん、こんにちは!
なんだってまあ酷暑ですね。いかがお過ごしでしょうか。

ご両親のお金にまつわるお話。私はパンドラの箱を開けてしまいそうで、通帳を見せてほしいと言い出せないのが現実です。まずは「何かあった時のために、親戚などの連絡先リストや、通帳・カード類の番号リストなんかを作ってみてほしい」と伝えていますが、果たして完成しているのやら・・・。

さてさて、6月最終週の1週間、父のふるさとを巡る旅に3人で行ってきました。今となれば楽しい想い出ですが、その最中はいろいろありました。

人間関係とはずばり「距離の取り方」なんだと悟った旅でもありました・・。

【往復書簡 エッセイNo.18】後期高齢者の両親との旅「家族ときどき他人」(1)


交通手段を調べたりホテルの予約をしながら、私自身がツアコンとして旅のプランを夢想し始めたのが今年の春先。その後、長旅が十数年ぶりとなる高齢の両親に、段階を踏んで旅のイメージをつかんでもらうべく、ビデオ通話で持ち物リストを一緒に考えたり、電車の乗り換えについて確認したりしてきた。

訪問先のいとこたちと連絡を取り合うたびに、旅のプランはふくらみそうになるが、今回の目的はとにもかくにも「墓参および存命の父のきょうだいとの面会」が最優先なので、スケジュールを詰め込まないようにした。

しかし、である。

最初の新幹線ですでに手間取り、東京駅には出発時刻の1時間前に到着したにもかかわらず、乗車できたのはなんと10分前!両親は過度にゆっくり歩いていたわけでもないし、地下鉄から東京駅につながる最短ルートで乗り換えもしたのに。理由を考える余裕はなく、リュックにキャリーケースの私はこの時点ですでに汗だく。もちろんリサーチ済みだった駅弁も入手なんかできるわけもなく、駅ナカのコンビニおにぎりとパンで、乗車後、3人の空腹を満たした。

新幹線がなめらかに発車すると、思わず両親に「ついに旅が始まったよ!」と声をかけてしまい、二人もテンションが高めだったが、無事に乗車できて緊張がほぐれたのか、車窓からの風景を楽しむ前にこくりと首をうなだれていた。

この先に待つ、在来線への乗り換えについて早くも不安を感じつつ、切符を失くしてないかとか、忘れ物はしてないかとか自分自身も含めてクールダウンしようと思い直した。

そして、おにぎりを頬張りながら、ふと新幹線乗車までの時間を振り返ってみた。乗車は午前10時台だったので、東京駅構内は多くの人がいて、気がつけば、両親の歩くスピードはいつもよりさらに遅くなったこと。

さらに「トイレの立ち寄り」に案外時間を要した。母から事前に聞いてはいたが、父は外出時には必ずどこかの時点でトイレに寄るため、その時間を確保しないといけないらしい。

私の中では、新幹線口に入場してからゆっくり入ってもらえばいいと思っていた。しかしこればっかりは思うようにいかず、父はその前にトイレに行きたいと言い出した。まだ時間の余裕があるから大丈夫と思って近くのトイレを探したが、思うように見つからず、たどり着いたと思ったら、母も行きたいと言い出し、予想外に時間がかかったのだ。

それから、もうひとつ、両親を焦らせないために、決して「間に合わないから急いで」と言わなかった。そう口にした瞬間、両親の足がもつれて転ぶんじゃないかとひやひやしたのだ。これは愛情というより、実は利己的な考え。

ここまで「両親のために」労を尽くして企画した旅が最後までやり遂げられないとしたら、きっと自分がむなしくなっちゃうだろうという気持ちから、である。

そう、このちょっとした「力(りき)み」こそが、旅の間のいさかいにつながるということを、この時は気づいていなかったのだ!

いやぁ、「家族ときどき他人」の距離感って実にムズカシイ。

<つづく>


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