40㍍Pの比喩(6曲鑑賞)
40㍍P(40mP, 40meterPとも)は2008年から今までボカロの世界で活躍する音楽家です。
彼の人気楽曲を聴いてみるとキャッチーなメロディーと比喩表現を活かした歌詞が印象に残ります。
ここでは【比喩のモチーフ】に着目して40㍍Pの曲を鑑賞してみます。
【道化師】からくりピエロ
報われない恋に踊らされる自分を道化師に喩えた切ない曲です。
冒頭の「待ち合わせは二時間前で」で状況が明確に浮かび、サビでは「Ah 回って 回って」というフレーズが耳に残ります。終盤では「もうやめた ここで君を待つのは」と決意し、冒頭の待ち合わせ場所を去るようです。
【視力検査】シリョクケンサ
いつも自分が隠している本音も「君」は分かってくれているかな。自分の「心の隙間」を「君」には見破ってほしい……そんな複雑な願いを抱えながら、視力検査のように「君」を試してしまう曲かと思います。
視力検査の環っかの隙間と「心の隙間」を重ねる発想がユニークです。
【ジェンガ】ジェンガ
時間をかけて築いたのに一瞬で崩れてしまう二人の関係を、ジェンガの積み木の塔に喩えた離別の歌です。想い合った二人も最後は「逃げた者勝ちの 駆け引きのゲーム」に陥ってしまうのが、恋愛のリアルなのでしょうか。
主人公は最後に積み木を拾い集め、戻らない幸福を思い出します。切ない!
【法廷】恋愛裁判
浮気を問い詰められて言い訳する様子を法廷に喩えています。
「アリバイ工作」「監獄」「最終弁論」等の物々しい言葉と、「僕独りじゃ生きてけない」「君にフラれるくらいなら」といった情けない台詞がアンバランスで、おかしみを出しています。最後にちょっとしたオチもあります。
【切り取り線】キリトリセン
曲名や「山折 谷折」の語から学校生活をイメージさせます。「未完成で曖昧な恋の色」とありますが、十代も前半の不器用な淡い想いでしょうか?
こういう恋って叶わなくて(そもそも付き合うという発想の無い年代かも)、「色褪せた感情」を切り取って捨てるのがほろ苦い現実です。
【演劇】悪役にキスシーンを
恋人との変えられない別れを演劇の台本に喩えています。「君」が振り返らず次の恋に進めるように「最低最悪の僕を演じる」という健気な悪役です。
景色が現実味を失って見えることを「ハリボテの街」と演劇風に表現するなど、細部まで練られています。ちなみにキスシーンはありません。
最後に
40㍍Pはaikoのカブトムシが好きだそうですが(著書より)、J-POPの比喩からも影響を受けているのかもしれませんね。
このようなJ-POPの比喩(個人的に、あいみょんのマリーゴールドやOfficial髭男dismのミックスナッツが好きです)や他のボカロPの比喩についても語りたいこと沢山ですが、またの機会にします。
お読みくださり、ありがとうございました!