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Orville Peck - Pony (2019)

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総評 : 10/10

次世代カウ・ボーイ、Orville Peckのデビューアルバム。私の去年のフェイバリットアルバム。

まず目を引くのがその風貌。フリンジとカウボーイハット。なんだコイツ。というのが第一印象。しかもライヴやインタビューに至るまで、ずっとこの格好をしている。素顔を検索しても全く出てこない。また、Orville Peckというのも芸名らしく、素性が全く分からない。(カナダのグランジバンド Nu Sensaeのドラマーだという説が濃厚だが、明らかではない。そもそもそっちを知らん)。分かっているのは、彼がゲイだということと、そして本作が非常に素晴らしいということのみ。

まず1曲目、"Dead Of Night"を聴いてみましょう。微妙にフランジャーの効いたジャズマスターによるシンプルなリフ。ピアノとロネッツリズムが混ざり音は増えていくが、圧倒的な静寂が曲を支配している。本作のムードを決定する寂寞の静寂こそが、Orville Peckの最大の魅力だと私は思う。

3曲目"Turn To Hate"はシングルになっており目下の代表曲。ある程度の疾走感が心地よい。耳を惹くのはその美声。低音ではJohnny Cash並みの朗々たる渋みを聴かせ、一方高音でもかすれること無くハリのある美声。

8曲目"Big Sky"はその名の通りただただ広く澄み渡る秋空を想起させる、広ーい空間を上手く生かした名曲。虚空をふらふら漂うこの寂しさと安心感は一体何なんだろう。

9曲目"Roses Are Falling"、そして12曲目"Nothing Fades Like The Light"。私はカントリーは聴かないから分からないけど、この純然たるカントリーっぷりはどうだろう。まるでスタンダードナンバーのような安心感を誇る。この人、ソングライティングセンスも一定以上の素晴らしいものを持っている。

10曲目"Take You Back (The Iron Hoof Cattle Cail)"は、彼のテーマソング。メロディと美声、そして乗馬体験。こんな曲他では聴いたことがないのに、猛烈に懐かしさが込み上げる。

11曲目"Hope To Die"は、あらゆるジャンルの名曲たちと共通する崇高さを湛えるスロウバラード。ジャンルを超えた名曲だと思う。そしてOrvilleの美声が容赦なく襲う。

一見イロモノにしか見えないが、よく聴くとかなりの才能を持った本格派であることが分かる。空間と静寂を上手く使った名作。

MVはどれも普通に100万回再生行ってるし、新曲"Legends Never Die"も公開から1週間で70万回再生されてるので(8/24現在)、割と人気が有るようだ。どの層に受けてるのか全く分からない。自分でもまさかこんな変なアーティストにハマるとは思わなかった。


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