明日

その時は突然やってきた。
「どうして・・・?これからじゃないの・・・?」
そんな予感は全く感じていなかった。


そう、平沢健治騎手の引退である。
確かに今年小牧加矢太・小野寺祐太の勢いもあって騎乗数は減少傾向。
「この厩舎なのに平沢さんじゃないんだ・・」という障害デビュー馬もいた。
1年半前から五十嵐厩舎と関係が切れてピンチを迎えていた。乗鞍は減り、育ててきた乗り替わりの馬たちが成績を上げていく。けれども乗替でキッチリと結果を残していき、今年は9勝をマーク。重賞でも2着が3回あった。

安定した騎乗フォーム、短期間での置き障害での飛越改善はトップ騎手としてのスキル。内々で進める時の飛越に難が目立った騎手だけど(理解するまでに時間がかかった)、過去5年の複勝率は.350を超えるはず。
特に新潟では猛威を奮い、障害競争騎乗機会5連勝は今でも残る記録だ。(これからもネタにする所存)
同期の石神深一に比べて重賞の実績や、好走ゾーンの広さは上回っているとは言えないけど有力な先行馬に騎乗する時は絶対に馬券圏内に持ってくる
なんならたまにそれなんで勝てるの?って馬でも勝ってくる。
日本一追える障害騎手として苦しい展開でも絶対に最後まで諦めない。障害レースを買い始めてから5年経つけど「一番頼りになる騎手」だ。


障害競争の騎手は平地競争の騎手に比べてはるかに過酷だ。その上にお金がもらえない。
五十嵐雄祐がTwitterをはじめてからは特にそう思っている。
今でこそ家族団らん・田辺騎手・津村騎手と楽しそうな写真をアップして安心しているけれど、2,3年前は離脱が相次ぎリハビリの写真は痛々しかった。

熊沢重文は復帰できないまま引退したし、白浜雄造も復帰できるかどうか・・
高田潤は次落馬があったらどうなってしまうか分からない状況で復帰を決めている。

「持ち乗りの調教助手として、まだ身体が元気なうちに次の人生を・・」
気持ちはとても分かる。まだまだやりたいことが出来る心身があったうえでのポジティブな引退。

けれど◎を打って馬券を買って「一緒に戦う」ことが出来なくなること、
そして思っていたより10年ぐらいはその幕切れが早く来てしまうことに
どうしても寂しさが押し寄せてきてしまう。


「年上の先輩騎手は数多くいるしあと10年後ぐらい。平沢さんが引退する時が自分の馬券の引退かなあ・・」と思っていた。
ギャンブルであることは間違いないし、それなりに障害競争に対して時間と労力とお金を使っている。

障害競争には平地と違った楽しさがあり自分に合っている。更に買うために買うのではなく、得たお金を有効に使うために買いたい。
これから数年を110%の回収率で持っていけるだけの経験と知識はついてきた。(今年は現在110%)
何より皆さんとのやり取りは楽しいし、コースや飛越のポイントが分かっている人(特にWさん)との現地観戦もまた面白い。

森一馬や伴啓太、いい若手騎手も増えている。結局ギャン中なので来年も買い続けるんだろう。
けれどもこの感情にはまだ整理がついていない。

「推しは推せるときに推せ」
某関西TMの言葉。これまで当然のように勝ってきて、馬券圏内に入って、そして相手が抜けて馬券を外した日々が思い出される。
偶然代打で回ってきたラストランだけど、きっと最後まで全力のアクションで駆け抜けるんだろう。

中山大障害は障害レースファンにとっての「1年の総決算」だ。
自分は平沢騎手の長所も弱点もよく知っている。
どの馬どの騎手に今年の勝負を託すのかはまだ固まっていない。悩ましい時間はまだ続くが、悔いのないラスト1回の勝負にしたいと思う。

そして最後に何を語るのか、何を残してターフを去るのか…
しっかりと見届けたいと思う。


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