まどみちおさん「存在」
存在ってなんでしょうか。
そこにある。そこにいる。それがわかる。ふれられる。そんな感じでしょうか。
谷川俊太郎さんの詩を読み始めて
「存在」について、よく考えるようになりました。
谷川さんの詩を辿って辿って、、
そこには谷川さんが絶賛する詩人がいました。
まど・みちおさんです。
みなさんも聞いたことのある有名な童謡
『やぎさんゆうびん』
『ぞうさん』
『ふしぎなポケット』
『一ねんせいになったら』
なども、まどさんの作品です。
国語の教科書でまどさんの作品を読んだことがある方も、多いのではないでしょうか。
谷川さんは、まどさんのことを、
「こんなにやさしい言葉で、
こんなに少ない言葉で、
こんなに深いことを書く詩人は、
世界で、まどさんただ一人だ。」
と絶賛されています。
そんなまどさんの『いわずにおれない』(集英社,2005年)を読みました。
私にとって、宝ものの一冊になりました。
今日はまど・みちおさんの作品と
まどさんの考えを皆さんにご紹介しようと思います。
まどさんは、『存在』について、長い時間見つめていました。
テーブルに置かれたリンゴを見て、その美しさにハッとし、「なぜハッとしたのか、美しいと思ったのか」を追求していったところ
「リンゴが占めている空間は、ほかの何ものも占めることができない」ということに気づいて、またハッとしたそうです。
ひとつのものがあるとき、そこにはほかのものはあり得ない。そういう「ものの存在のしかた」がすごく美しく荘厳に思えて、その素晴らしさをいわずにおれなくなったのです。
そうして生まれたのが「リンゴ」(1972年)です。
まどさんの、世界の見え方はどうなっているんだろう。
まどさんのすごくシンプルで、それでいて核心をついたような表現に、私もハッとさせられることばかりです。
気づいて、考えて、追求して、言葉にすることができるまどさんに、いつも深い驚きを感じます。
それからしばらくすると、今度はまどさん、存在することのありがたさを感じるようになったと言います。
「リンゴでも、ゾウでも、ノミでも、マメひと粒でも、あるいは私みたいなインチキのぐうたら人間であっても、それがここにおればほかのものは重なってここにいられない......っちゅうことは、この地球のうえでは、どんなものも何ものにも代えられない、かけがえのない存在として存在させてもらっている、自然の法則によって大事に大事に守られているということでしょう?
それは、なんてありがたいことだろうと。」
そんなことをいわずにおれなくなって、誕生した詩が「ぼくが ここに」です。
存在するということが
どれだけの奇跡であるか
考えずにはいられません
誰もがとおいところにいる
大きな存在に見守られていて
大きな愛で包まれている
ここにいること、ここに存在すること
当たり前のように思えますが
考えれば考えるほど不思議で、人間がいくら考えてもわからない、何ひとつ当たり前ではないということに気付かされます。
そんな人間が、「自分で自分の人生を生きている」と思わせてくれるほどに、自然の法則は大きな愛を注いでくれている、とまどさんは言っています。
そんな想いを綴った詩が、「こんなに たしかに」です。
まどさんのように、生かされている感謝をいつまでも忘れずにいたいです。
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