兵庫運河におけるブルーカーボン取組視察
J-ブルークレジットを所掌している「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合 (JBE)」の母体となっている「ジャパンブルーエコノミー推進研究会 (BERG)」の勉強会。
いつも、新橋の会議室で行っていますが、「東京以外でも開催してほしい」「現場へも足を運びたい」という会員の要望により、日本で最も熱い(?!)、関西、神戸へと繰り出しました。
初日は「兵庫運河」で、現地視察を行った後、場所を移動して、兵庫運河で生まれたJ-ブルークレジットを購入頂いた、神戸酒心館での勉強会。
2日目は「須磨海岸」、小型船に分かれて乗船しての現地視察。
須磨里海の会の吉田代表から、具体的な説明を受けるという予定でした。
さらに、同日「ひょうごブルーカーボンシンポジウム」も開催されており、2日間どっぷり「ブルーカーボン漬け」の方もいらっしゃったでしょう。
残念ながら、須磨海岸は都合がつかず不参加でしたが、梅雨真っ只中、雨は確実で準備万端で臨んだところ、望外の曇り空。長靴に履き替える必要も無く、普段入ることのできない干潟へ下りて、観察できました。
兵庫運河には、「あつまれ生き物の浜(あつはま)」と「キラキラビーチ」の2つのサイトからなります。
兵庫運河の由来は、1500年前、奈良時代まで遡るということで、和田岬という船の難所を避けるバイパスとして開削されたという歴史があるそうです。
ですが、戦後は「貯木場」として使用されることになり、そこへ工場や家庭からの排水が流入。船からの燃料漏洩や、剥がれた丸太の皮のヘドロ化等も相俟ってで水質が悪化、メタン臭が漂う状態になっていたとか。
その後、神戸市の下水処理や工場排水規制等によって運河の浄化が進んだこともあり、メバル・イワガキ・アサリ・ホソウミニナ・イソガニ・マナマコなどの多様な生物が見られるようになった、と説明を受けました。
そこで、平成25年度から、兵庫漁協、兵庫運河を美しくする会などの団体がが協業。平成28年度から、兵庫運河を真正面に臨む浜山小学校とも連携し、兵庫運河の生物多様性を、さらに高める活動を開始したことが、今回のJ-ブルークレジット創生につながっています。
さて、実際現地に赴いてみると、透明度は特別高いという印象ではありませんでしたが、「メタン臭漂うヘドロの海」など想像もつかないほど、ごみ一つ落ちていない、キレイに生まれ変わった運河がそこにありました。
小さい魚の群集やイソガニも多数見られ、巻貝や二枚貝などが浜に拡がるなど、「生物多様性」が担保された干潟といっても過言では無いでしょう。
場所を移動して、キラキラビーチ。こちらでは、浜山小学校の児童らによる、手作り感満載の看板が、出迎えてくれました。
「あつはま」より透明度が高く、多くのアサリが採れるとのこと。実際浜に下りて即席「潮干狩り」をしてみましたが、小粒のアサリがようやく見つかった程度。生長するとこれくらいになると見せてもらいましたが、なんとも楽しみではあります。
現地では、プロジェクトを実施されている兵庫漁協の糸谷氏よる説明がありましたが、興味深かったのは「ブルーがあったからやったのではなく、50年来行ってきて”たまたま”ブルーが始まったから」という「ホンネトーク」
これって、クレジットを創生している事業者、全てに当てはまります。
J-クレジットと比較して単価が高いといわれますが、はっきり言って、その収益でプロジェクトの費用を賄うなど、とてもできません。
それでは何のためにやるか?
ブルーカーボンが生み出すコベネフィットの波及効果だと考えます。
つまり、ブルーを創生する活動が、地域社会、地域経済、環境教育など、気候変動や生物多様性に留まらない、好循環を生み出すからだと思うのです。
なので、私は相談を受けたときには、「何のためにブルーを作りたいのか」と問います。「ブルーを生み出せる素地があるのか」が重要だからです。取り組みの先にブルーがあり、ブルーの後に取り組みがあるのでは無いのです。
もうひとつ、よい話を聞きました。
「行政は、自分たちの主張を受け入れ、動いてくれた」というもの。
「言ってみるもんです」とは、説得力がありました。
いずれにせよ、兵庫運河の成功は、このように、自治体も含めたステークホルダーが一丸となって取り組んだ賜物なのでしょう。
以上で現場視察を終えて、勉強会会場の、神戸酒心館へ。
視察は40名程度でしたが、こちらは、想定以上の80名と大盛況。
式次第はこんな感じ。
JBE桑江理事長による現状の紹介から始まり、国の施策、クレジットを生み出している事業者による活動説明、クレジット購入者による「購入に至った経緯」の説明、そして、自治体の取り組み紹介と進みました。
盛り沢山の内容でしたので、詳細は、別の機会にご案内したいと思います。
ご期待下さいませ。
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