インドネシアのカーボン・クレジット市場(2)
隔月で、国・地域のクレジット市場を深掘りしたレポートをリリースしているACX。今回は注目していた「インドネシア」をフィーチャーしていましたので、その内容についてご案内しております。
前回は、セクター別まで説明しておりました。
このように、Waste DisposalとRenewable Energyで、CDMレジストリに登録された全クレジットの70%以上を占めていることが分かりました。
ですが、グラフから内訳は分かりませんので、UNFCCC CDMプロジェクト検索ツールを使って調べてみました。いずれも、2023年12月末時点のデータとなっていることにご留意ください。
対象となるプロジェクトは、このようになっています。
ただ、登録されているというだけであり、全てがパリ協定6条2項ルールによって京都議定書第二約束期間で使用できるCERになるのではありません。
しかし、その比率で、およそ推定できるかと思います。
さて、インドネシアにおけるWaste Disposalプロジェクト数は231件
処理の段階で発生するメタンを回収して適切に処理することにより創生されるクレジットとが、殆どということですね。なお、フレアというのは、発生するメタンを燃焼させてCO2にすることです。CO2の方がGWPが低いため、「削減」できることにはなりますが、もちろん、制限がかかっています。
そして、Renewable Energyプロジェクト数は1,023件。
Waste Disposalの5倍となっており、グラフとは齟齬しますが、パリ協定下のクレジットへ移行された件数を考慮しているのではないかと推測します。
インドネシアは豊富な水資源を有していることが背景にあり、水力発電プロジェクトが比較的多く実施されているのでしょう。近年では、他国同様、太陽光発電やバイオマス発電などのプロジェクトも増加しており、今後ますます多様化していくことが予想されます。
クレジットの発行量と償却量を表したのがこちら。
コロナの影響が世界的に現れだしたのが2020年だと思いますが、発行量は影響を一時的に受けたもののすぐに復活。他方、償却量はほぼ影響を受けなかったように見えます。
京都議定書第二約束期間に入り、ほぼ一定であったところ、増加に転じ、2020年から急激な伸びを見せていますので、パリ協定へ移行できないことが判明し、償却を急いだのかもしれません。
ということで、インドネシアのカーボン・クレジット市場を見てきましたが、いかがだったでしょうか。日本と異なるのが、クレジットの活用を、政府が協力に推進していることです。
実際インドネシア政府は、数年にわたりインドネシア排出量取引制度(ETS)の基礎固めを行ったことで、炭素市場におけるインドネシアの歩みは大きく前進したと言えます。
2022年10月、環境・林業省は、ETSとオフセット取引の法的基礎を提供する規則を発行、2023年初頭にニライ・エコノミ・カルボン(NEK)取引スキームが開始されましたが、これが重要なマイルストーンとなりました。
2023年9月には、インドネシアで最初で唯一の公式ETSであるIDXCarbonが発足しました。IDXCarbonはインドネシアの金融サービス規制当局であるOtoritas Jasa Keuangan (OJK)によって登録・監督されているそうです。
なお、IDXCarbonはインドネシア証券取引所(IDX)により運営され、ACXの独自技術を採用しているそうです。ACXは、ドバイの取引所であるICE Futures Europeと協業していますし、ベトナム政府機関とも覚書を締結、ベトナムにおけるカーボン市場の発展に向けた協力を開始しています。
ACXは、アジア太平洋地域の主要なカーボン市場のハブとなることを目指していますが、インドネシアのマーケットにもシステムを提供しているとなると、着実にその目標に向かっていると言えるでしょう。
ちなみに、Natural Capital Credit Consortium (NCCC) とACXもMoUを交わしています。その内容は、日本の企業の脱炭素化戦略を加速し、日本の現在のカーボンエコシステムを拡大するための協力に関するもの。
国内でも、クレジットの取引がOTAでできるようになるとよいですね。
国内ばかりに目を向けていると、置いてけぼりを喰らいかねません。
これからも、グローバルな視点の内容をお届けしていきたいと思っていますので、どうぞご期待下さい。
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