日本のクレジット市場 一歩前へ
皆さん、「BeZero Carbon」ってご存知ですか?
このnoteでも、繰り返し「高品質なクレジットとは何ぞや」についてご案内してきました。どのような資質を備えていれば「高品質」なのか。どうすれば、ウォッシュの誹りを免れるのか。
元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏らが、ボランタリークレジット市場の拡大を目指して2020年に設立した「TSVCM(Taskforce on Scaling Volungtary Carbon Market)」傘下のICVCMが今年公開した、信頼性確保に向けたルールも、紹介したところ。
とはいえ、「玉石混交」というのが市場の見方であることは否めず、クレジットを創る側(プログラムオーナー)とメディアとの論争は各所で見られています。
この状況って、株式や債券、ファンドなどと同じよう構造であって、すると、格付やインデックスなどがあっても不思議ではありません。ということで、その格付を行う新興企業の一つが「BeZero Carbon」なのです。
具体的には、公開されたリスクベースのフレームワークで、炭素効果を評価するとのことで、BeZero Carbonの評価(BCR)は、特定のクレジットが1トンのCO2排出を回避あるいは除去する可能性を表すものだそうです。
BeZero Carbonは、昨年22年の11月に、シリーズ B 資金調達ラウンドで5000万ドル(約70.2億円)を調達しており、この金額は、英国における今年最大の資金調達となり、 BeZero Carbonの過去1年間の調達額は7000万ドル(約98.3兆円)超というから、市場に高く評価されているといえるでしょう。
そんな「BeZero Carbon」が東京にオフィスを構えるというから驚きです。
めでたいリリースだからということもあるでしょうが、これは言い過ぎでは?
GX-ETSは、あくまでも「ボランタリー」であり「コンプライアンス」ではないので、一般的な「Cap & Trade」が目指す確実な排出削減が実現するかは不透明ですが、逆に日本だからこそ、達成できるかもしれません。
コロナ禍における行動抑制も、法に基づいた戒厳令を敷くことなく、「緊急事態宣言」をすることだけで、自主的に政府が望むような行動変容につながったのも、日本人の気質がなせる技だったと思いますし。
もっと、リリース読んでいきましょう。
これには、私もガッテンです。何故かというと、こういうことです。
6条2項で、NDCの達成に一定の条件下でVCMが使用できるようになるからです。(コンプライアンス目的に使用できるクレジットが、VCMかというと、矛盾しているような気もしますが)
現状では、国連管理下のクレジット以外でNDC達成に使用できるクレジットというと、日本の二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)が先駆けであり、抜け出ています。(他にはスイスのみ)
ちなみに、JCMとは、パートナー国への優れた脱炭素技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、パートナー国でのGHG排出削減・吸収や持続可能な発展に貢献、その貢献分をクレジット化、相当分を獲得することで、日本のNDC達成に貢献する仕組みです。
2011年からモンゴルと協議を開始を始めたのが最初で、2023年4月現在で、26カ国と署名済みです。
ここで「はは〜ん」と思った方もいらっしゃるでしょう。
実は、このメカニズムを日本主導で世界に拡げるため、途上国支援を行う事務局「6条実施パートナーシップセンター」を4月に立ち上げているのです。
なので、このリリースの内容も納得することしかりです。
つまり、NDC達成を求められる国の需要によりもりあがりをみせるであろうVCMに着目、そこで取引できるスペックを有するクレジットを創生している日本に拠点を構え、トレンドを掴んでいこうという戦略らしいです。
カーボンプライシングでは、最後発と見られている日本がフロントランナーに躍り出るのか、個人的には、期待を持って見守っていきたいです。