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金融SBTについて(その3)

「金融SBT」最終回は、提出した目標が、めでたくSBTiの認証を受けたあとに、金融機関が実施すべき内容について説明したいと思います。

行うべきは、「Communicate」「Disclose」

まず、6ヵ月以内に自社が対外的に公開しなければなりません。(Must)

形式については、決まっていないものの、下記が推奨されています。

Climate partnerを通じて
1.SBTi website
2.CDPの質問書に対する回答

もしくは、企業のコミュニケーション手段を通じて
3.Annual reports
4.サスティナビリティ レポート
5.ウェブサイト

SBTiは、認証を受けた目標と共に金融機関名を「Companies Taking Action」とうサイトで公開してくれるので、何もせずとも1.は自動的になされます。

2.は、対象となっていれば質問書が3月中に送付されてきますので、締切までに回答をすれば、こちらも、適切な形で公開してくれます。

ですが、この2つは主に機関投資家向けであり、一般の方々が見に来てくれるようなサイトではありません。ですので、伝えたいメッセージを分かりやすい形で、誰にでも気軽に接することができるメディアを通じて、公開したいですね。


公開したら、それっきりでいい、というわけではありません。
毎年、その進捗についてアップデートしていく必要があります。

これについても、決まったフォーマットはありません。(各金融機関が決めるものとなります)

どの方法で目標設定したかで変わってきますが、基本的には、計画通りに進行しているのか(パスに乗っているのか)、進んでいる/遅れている場合には、どのような要因によるものなのか、リカバリーする手段はあるのか、等々を説明することになると思います。

とにかく、正直であることです。粉飾決済をしても、決してよいことはありません。毎年、決まった時期に「振り返り」を行いましょう。CDP質問書の送付に併せて、など、何かをトリガーにしておくと良いかもしれませんね。


進捗のアップデートは毎年ですが、定期的な再計算「recalculate」も行う必要があります。

まずは、定期的な見直しとして、5年毎に実施することが求められています。
進捗率を考慮して、より野心的なものに変更するのもありでしょう。逆に、遅々として進捗していないのであれば、抜本的な改革が必要かも。いずれにせよ、レビューをしましょうということです。

なお、目標に対して重大な(material)影響を与えるような変化があった場合にも、「recalculate」すべきとしています。まぁ、これは当然でしょう。

それを行わずに、ずるずるとできもしない目標を掲げていると、機関投資家は「削減努力を怠っている」と見なされて、何も良いことはありません。企業の姿勢を問われかねない状況に陥ってしまうかもしれません。

ただ、何をして「material」なのか、どのような変化があった場合に「recalculate」するのかは、組織が予め定義しておくことが「must」です。

先ほどの、公開方法もそうですが、「組織が決める」ものは、SBTiに多数存在しています。CDPを始め、その他のイニシアチブでも同様です。それはつまり、全てボランタリーな活動であるからです。

しかしながら、決めて、公開していますので、ステークホルダー他複数の監視下に置かれることになる。であれば、組織は自身で決めたものは遵守する動機が働く。考えようによっては、法的拘束力を上回る力があるのです。


1.目標を公開する
2.毎年状況をアップデートする
3.5年毎もしくは必要に応じて見直しを行う

これで実は十分なのですが、SBTiは「And beyond」を求めています。

それは「顧客に対するエンゲージメント」。
顧客と共に削減努力を行い、ネットゼロ達成を目指すことです。

投資先において、排出量削減が進み、ネットゼロへの道筋がつくように、ナレッジを提供したり、ファイナンスしたりすることを期待しています。

ここに、独立して「金融SBT」を立ち上げる狙いがあるのでしょう。

金融機関の皆様。これは、リスクではなく機会です。
投資先での削減には、ソフトとハード両面の対策が必要です。
それらをマネジメントするところには、皆さんだからこそ手がけることができるビジネス領域があると思います。

「危機」が「機会」に変わる、それは明日かもしれません。
一緒に頑張っていきましょう。

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