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ISSBが着々とアップデート

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2022年3月31日、「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項(IFRS S1)」と「気候関連開示(IFRS S2)」からなる、新フレームワークの草案を公表しました。

7月29日にはパブリックコメントの募集を締め切り、今年の23年6月の最終決定に向けて、昨年より精力的に議論が進められています。

2022年10月の会合では、Scope1、2、3の絶対的総排出量の情報が無ければ企業の移行リスクを十分に理解できないという投資家からのフィードバックを受け、S2のドラフトにScope3の開示を含めることに合意しました。

しかし、ISSBは、企業がScope3排出量を測定するプロセスを導入するためのガイダンスや救済措置を通じて、これらの開示の提供を支援することにも合意しています。

2022年12月の会合では、Scope3のGHG排出量の測定について、過度のコストや労力をかけずに入手できる合理的で裏付けのある情報の利用を求め、推定の利用を組み込んだ枠組みをS2に定めることに合意しました。

企業がこの枠組みを利用する場合、投資家がScope3 GHG排出量の測定根拠を理解できるような情報開示が必要となるとしています。

直訳してしまうと分かりにくいのですが、
・スコープ3排出量のうち、一次データを使用している割合
・スコープ3排出量のうち、妥当性確認を受けている割合
・スコープ3排出量が算定できない場合、どのように管理しているのか
を明らかにしなさい、ということだと理解しています。

このあたりは、CDPの回答において、必要な場合は説明を加えるかと思いますが、同じような要求であると考えればよいでしょう。

12月の会合は、もっと具体的なことも決まっています。例えば、

1.移行のために、発効から最低1年間の猶予期間を設ける
2.報告サイクルが異なるサプライヤーの情報も、期間が同一であれば許容
3.スコープ2排出量について、ロケーションベースも許容する
4.ファイナンス排出量の開示方法の修正

1.について、SBTiのセクター別ガイドラインなどは、猶予期間が半年ですから、1年は十分な長さですね。ただ、1年を経過した場合の措置についての言及は無いので、期間は厳守と理解しておく方がよいかと。

2.については、暦年と年度と異なっていてもOKということ。

3.については、マーケットベースを基本としながらも、ロケーションベースでもOKということ。GHGプロトコル及びそれに基づいた報告を求めているCDPは両方の回答を求めていますから、CDP回答企業やSBT認証企業であれば、問題ないですね。

4.については、まだまだ議論が煮詰まっているようには思えません。議事録に当たってみましたが、論点が多く流動的かと。GHGプロトコルやSBTにおいてもルールが明確になっているとは言えない状態と理解しているので、こちらも、最終決定まで状況を見守っていく必要があるでしょう。


2012年12月の会合は、奇しくも、COP15がまさに開催されている場所、時期に開催されていました。

上で述べたのは、IFRS S2(気候関連開示)のみですが、そもそも、IFRS S2(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項)がその上段として存在します。気候変動と生物多様性を切り離して議論するものではないのです。

ということで、ISSBは投資家やその他の市場参加者からのフィードバックに基づき、今後のアジェンダの優先順位に関する協議において、4つのプロジェクトを優先的に提案することに合意しています。

1.生物多様性、生態系、生態系サービス
2.人的資本
3.人権
4.IASBと連携した報告における連結性。

ISSBプレスリリースより

ISSBの議長であるエマニュエル・ファベールの言葉が、今後のISSBの動向を明確に表していると思います。

投資家は、このCOP15において、また、私たちの継続的なエンゲージメントを通じて、生物多様性と、大気や水の浄化、原材料の供給、害虫や洪水の制御など、世界経済が依存している生態系サービスに対するより良い洞察を必要とする理由を示しています。生物多様性は、ビジネスを含むすべての人間活動を支えており、そのため市場参加者にとっても大きな意味を持ちます。私たちは、資本市場のニーズを満たす持続可能性関連開示のグローバルなベースラインを提供するために絶え間ない努力をしており、生物多様性の包括的な開示は重要な鍵となるであろう。

開示ルールは、ISSBに収束するのでしょうか?
予断を持たず、動向を見守っていこうと思います。

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