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カーボン・クレジットを活用していこう

カーボン・クレジットに関しての質問を非常に多く受けるようになったこの頃、まずご案内しているのが、経産省の「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」がとりまとめた「カーボン・クレジット・レポート」です。

21年の12月から22年3月までの3回の検討会でドラフトを公開、5月までのパブコメを経た後、第4回検討会でファイナライズ、6月に公開されました。

社内での説明には、第4回検討会の資料に含まれている概要が使いやすいです。パブコメの結果も公開されています。また、第1回の資料には、カーボン・クレジットを巡る国内外の動向、第2回には、企業へのヒアリング結果等も含まれています。

委員の顔ぶれを見ても、早稲田の有村先生を座長に、MGSSIの本郷さんや、電中研の上野さん、MURCの吉高さん、CDPJ(当時)の森澤さんなど、クレジット界隈の第一人者が揃っているので、このレポートを引用して説明するのが、一番安全かと思います。

加えて、政府が公開している資料ですので、基本的なルールを守れば、かなり自由に引用できるのも魅力。検討会に提出されている資料も、優秀な「官僚」の方々及び外部リサーチ会社によるものなので、貴重な参考資料として活用できます。

さて、「クレジットとは何ぞや」は「カーボン・クレジット・レポート」でおおよそ概念的に捉えることができたとして、さて、どこで調達できるかという段階になりますが、日本でも、ようやく「お店」が開店し始めました。

代表的なところでは、昨年開始のJPXでの「カーボン・クレジット市場」

マーケットメーカー制度の導入や、売買対象にGXリーグの「超過削減枠」が追加されるなど、徐々に使い勝手が良くなってきています。

また、エネチェインの「JCEX」やSBIホールディングスとアスエネの合弁による「Carbon EX」など、私設の排出権取引所も誕生しています。

購入した後に気になるのは、会計処理でしょう。
こちらについても、金融庁の方で検討会を設置、議論が進んでいます。

加えて、「サステナブルファイナンス有識者会議」において「カーボン・クレジットの取扱いに関するQ&A」を作成することを決定、丁度先月アップデートが行われていました。

ちなみに、会計上の扱いは、noteでもご案内しています。
よろしければ、参照下さい。

クレジットを理解して、調達して、会計処理も済ませた。
ですが、これが目的ではありませんよね。

クレジット購入の目的は、BVCM(バリューチェーン外の排出削減に対する貢献)と、自社の排出量からの控除及び環境に対する取組のPRでしょう。

もちろん、「控除」については、使用するクレジット(国内・海外、コンクレ・ボラクレ、再エネ/省エネなど)及び、使用する制度・法令(温対法、SBTi、RE100、CDPなど)により、様々な条件がありますが、ここでは詳細には立ち入りません。

加えて、BVCMは、CDPやSBTiなどが推奨していますが、これを第一目的にしている企業は、あまり多くはないと思います。

これを踏まえて、純粋に自社の取組としてステークホルダーにコミュニケーションする方法には、CDPへの回答や、アニュアルレポート、統合報告書、ウェブサイト等々あるかと思いますが、2023年3月度より始まった、有価証券報告書での開示も効果的な手段でないかと思います。

法令により開示が義務付けされているものではありますが、開示内容は検討が進んでいる、SSBJのS1・S2が基礎になるとはいえ、まだ明確に定まっているものではありません。ですが、だからこそ、効果的に使っていってはどうかと思うのです。

でも、「具体的にどうすれば?」と悩まれるかと思いますが、そんな時は、金融庁が毎年公開している、「記述情報の開示の好事例集」がお奨め。

内容も、毎年充実してきており、こちらを参照して開示を進め、開示内容がフィックスされた際に他社に対して優位に立てるよう、スキルを磨いておきましょう。

ということで、企業がクレジットを活用するに当たって必要な情報を、段階的にお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか。

今年度末には、日本版S1・S2が最終決定されます。
それを受けて、金融庁は、有価証券報告書での開示内容を決定します。

今後、GX戦略が具体的に動き出し、GXリーグが活発化すれば、クレジットの有用性も飛躍的に高まると思っています。

日本でも、ようやくクレジットを活用できる環境が整ってきたといえます。
まだ遅くはありません。今から、クレジットで何ができるかを研究し、活かしていかれることを推奨します。

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