クレジットの会計上の扱いどうなるの?
広く知られるようになった、カーボン・クレジット。
SBTiやCDPなどの環境イニシアティブも、バリューチェーン内のみでの排出量削減では1.5℃目標の達成は難しく、バリューチェーン外での削減も必要であることを認識し、BVCM(Beyond Valuec Chain Mitigation)を推奨していることは、ご存知でしょう。
まぁ、バリューチェーンを突き詰めていくと、全ての企業、自治体、個人も含まれてしまうので、あくまでも概念的なものではありますが、ヒト・モノ・カネといったリソースが不足している対象に対し、「クレジット」という形でファイナンシングしようというのが、その目的です。
ですが、ウォッシュ懸念により、クレジットの購入に踏み切れないグローバル企業がいることも事実。これに対しては、ICVCMのCCPの策定や、CCP-Label獲得を目指した、Verraを始めとするボラクレのスキームオーナーが対処することで、改善が進んでいると思われます。
しかしながら、クレジットの利活用が進まない理由として、もう1つ挙げられるのが、「会計上の取扱いが定まっていない」ことではないでしょうか。
金融庁も認識しており、2022年の12月、既に「カーボン・クレジットの取扱いに関するQ&A」を設置することで、明確化を図るとしています。
ただ、ご案内のようにクレジット周りの環境が激変する中、設置から1年半以上経過するも更新されておらず、「会計監査の時に痛くもない腹を探られるのはご遠慮願いたい」と、二の足を踏んでいる事業者もいるでしょう。
なので、ようやく「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラの在り方に係る検討会」を設置、具体的な議論を開始しています。
なお、あくまでも「取引」についての議論の場であり、「制度」については、経産省と環境省の共催で実施される「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」で議論されることにご注意下さい。
このように、日本では「今から」といった感じですが、世界ではどうかというと、IFRIC(International Financial Reporting Interpretations Committee)において、ほぼ解決済みのように思われます。
IFRICは、国際財務報告基準(IFRS)に関連する解釈を提供する組織で、国際会計基準審議会(IASB)の一部として機能し、IFRSの適用において発生する複雑または不確実な会計処理の問題について、公式な解釈を提供するもの。
そのIFRIC、IASBにおいて、次のことを明確化することを求める要望を受けたそうです。
カーボン・クレジットに特定して、「どのような会計処理が必要となるかをIASBの基準に追加してくれ」ということだと思うのですが、IFRICの結論は、
既に、現状で明確化されているので、議論は不要ということらしいです。
「じゃぁ、どうするの?」が気になるところですよね。
会計の知識は皆無なので、説明はできないのですが、クレジットの会計処理を行う場合、次の2点が論点になるそうです。
この議論を行った結果「審議不要」となっているので、引当金が認識される場合「費用」として処理し、購入後「費用処理」するまでは、「資産」扱いとなる、ということで決着していると思いました。
といっても、「何のことやら?」状態だと思うので、具体的な説明をすると、こんな感じでしょうか。
企業が削減目標を設定して開示、コミットする一方、ステークホルダーを始め「この企業は目標を達成するべく削減活動を行うんだ」と認知された場合に、「推定的義務」が発生する。
ただ、目標年にならないと「義務」が発生しないので(目標年まで毎年排出続けるけど、確定はしない)、それまでは「引当金」が認識されない。
つまり、削減目標と削減計画の策定・開示を前提とし、クレジットを購入した場合は「在庫」、目標年以降に目標達成のために無効化した場合は「費用」となる訳です。
ただ、削減計画がなかったらどうなのか、目標年以前に「カーボン・ニュートラリティ」達成のために無効化したらどうなるのか、などなど、論点は残っています。
これについては、「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラの在り方に係る検討会」における検討結果を待つ必要があるでしょう。
ということで、カーボン・クレジットの会計上の取扱いについて説明しましたが、いかがだったでしょうか。
説明しながら「お前が分かっていないじゃないか」と自問自答しつつ、それでも、自分が理解できる範囲でご案内したつもりです。
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一緒に、勉強していきましょう。
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