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カーボン・オフセット都市ガスの意義

令和7年度の報告(令和6年度実績)から適用される新しい排出係数については、noteでお知らせしたところです。

この際には、一番馴染みがある電力の排出係数における扱いについて、及び、新しく導入される排出係数の概要、名称についてご案内しました。

新しい排出係数が導入される目的の一つは、SHK制度における算定方法のグローバル化でした。詳しくは、上記noteを参照下さい。

第9回 SHK制度における算定方法検討会(資料2 電気・熱の使用に伴う排出量の算定方法について(案))6ページより

ですが、今回の排出係数の見直しは、電力だけでなくガス(熱)も関係しており、逆に、こちらの方に重点があったとも言えます。

というのも、これまで電気事業者に認められていた、クレジットや証書による排出係数の調整が、ガス事業者でも認められたからです。

新基礎排出係数では、グリーン熱証書及び再エネ(熱)由来J-クレジット。
調整後排出係数では、上記に加えて、再エネ(熱)由来J-クレジット及びJCMが使用できるようになったからです

第9回 SHK制度における算定方法検討会(資料2 電気・熱の使用に伴う排出量の算定方法について(案))8ページより(著者改変)

これまでは、供給された都市ガス及び熱の利用に伴う排出量の算定には、基本的に省令で定められた係数を用いることとされていました。ですが、これであれば、GHG排出量の算定において「排出量を削減するには、活動量(使用量)を削減するしか手段がない」という状態と同じです。

第3回 SHK制度における算定方法検討会(資料4  本制度におけるガス事業者別排出係数・熱供給事業者別排出係数の導入について(案))1ページより(著者追記)

それに対する方策が、電力と同様に、事業者別の排出係数を公表すること及びクレジットや証書による排出係数の調整を可能とすることでした。

第9回 SHK制度における算定方法検討会(資料2 電気・熱の使用に伴う排出量の算定方法について(案))11ページより

スケジュールは、冒頭で説明したように、令和7年度報告から適用されますので、それに併せた動きが、ガス供給事業者で起き始めました。

その一つが、推進団体である「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」は、これまで使用していた、カーボン・クレジットを活用した都市ガスメニューである「カーボンニュートラル都市ガス」の名称を、「カーボン・オフセット都市ガス」へと新たに設定したことです。

2024年9月2日 一般社団法人日本ガス協会 プレスリリースより

アライアンスの幹事会社である東京ガスも、概要説明を行うと共に、自社の事業ブランド(IGNITURE)のソリューションとして提供する旨、同じくプレスリリースを打っています。

「カーボンオフセット都市ガスバイヤーズアライアンス」は、その目的については、プレスリリース内で、次のように説明しています。

当協会では、カーボン・クレジットを活用した都市ガスメニューについて、多様なオフ セット範囲や使用クレジット種をカバーできるよう再定義し、従来の「カーボンニュートラル都市ガス」に代 わるそれらの総称として、新たに「カーボン・オフセット都市ガス」という名称を設定し ました。

2024年9月2日 一般社団法人日本ガス協会 プレスリリースより

ですが、国際的なイニシアチブが「カーボン・ニュートラル」の達成手段として認めるものは、「e-methane」や「バイオガス」のように、リアルでニュートラルを達成するものや、クレジットでも吸収除去系で、CoC(Chain of Custody 追跡と管理のプロセス)が確立されているものなどに限定されます。

他方、「カーボン・オフセット都市ガス」は、J-クレジットなら種別を問わず何でもOKのような手段も含まれています。にもかかわらず「カーボン・オフセット都市ガス」を使っていれば、何でも無条件に「ニュートラル」と誤認させることにならないでしょうか?

2024年9月2日 一般社団法人日本ガス協会 プレスリリースより

もちろん、J-クレジットは、日本の施策なので、温対法の報告に活用できるのは当然としても、国際的に主張できるものではありません。

SHK制度とGHGプロトコルやISOの算定方法に齟齬があるからこそ、新しい排出係数が導入されたということを、思い出して下さい。

個人的には、カーボン・クレジットの活用については否定しません。というか、応援する立場です。ですが、それは現時点では「BVCM」としての活用です。これにより、バウンダリーを超えた、世界全体の排出量削減に資するからです。国際イニシアチブが賛成しているのも、当然でしょう。

当協会は、これらの取り組みを通じ、我が国の 2050 年 CN の実現に貢献してまいります。

2024年9月2日 一般社団法人日本ガス協会 プレスリリースより

ガス協会のこの目的については、完全に同意します。
が、同じシンボルマークのもとに導入される各施策について、十分周知を図り、適切な使われ方がなされるのか、ウォッチしていきたいと思います。

是非とも、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
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