見出し画像

鉄鋼のSDAドラフトが公開されました

今年2022年、SBTiは矢継ぎ早にセクター別ガイドライン(SDA)をリリースしてきています。noteでも、紹介してきました。

今般公開されたのは、鉄鋼セクターのガイドラインのドラフトです。
FLAGやセメントのような正式版ではありません。

世界的に見ると、2019年の鉄鋼セクターの直接CO2排出量は2.6Gtで、エネルギーセクター全体の7%、産業界の28%に相当するそうです。(間接排出を含めると約3.6Gtに上昇)。

鉄鋼の需要は今後も増加すると予測されているところ、使用効率を最適化するための対策を講じなければ、2070年までに絶対需要が約30%増加することが予想されるとしています。

他のセクターでも同様ですが、このように、産業発展とCO2排出のデカップリングを可及的速やかに達成せねば、という危機感がSBTiにおけるSDAの整備を急がせるインセンティブになっているのでしょうね。


内容については、ドラフトなので変更される点があるかと思いますが、基本的なところは変わらないでしょう。

まず、SDAですから、原単位目標を設定します。これは変わりません。
1.5℃目標に合致した目標ですので、2050年には収束します。

鉄鋼セクターガイドライン草案ローンチウェビナーより

Scrap-input-dependent pathways
これが、鉄鋼セクターSDAのキモとなります。

鉄鋼セクターガイドライン草案ローンチウェビナーより

SBTiは、このセクターにおける排出量が、原料としてバージンを使用するかスクラップを使用するか、つまり、高炉なのか電炉なのかに左右されることを認識しています。

上右図のように、バージンを使用した方が、スクラップを使用した場合と比較して、排出量が大幅に増加することが分かります。ですので、鉄鋼セクタSDAでは、上左図のような「Scrap-input-dependent pathways」を設定することにしたようです。

基準年の原単位が曲線より上にあればあるほど、原単位削減の割合はより厳しくなります。もし企業の成長予測が、経路上のセクターの成長と比べて大きい場合、より急な排出原単位削減が必要となります。

鉄鋼セクターガイドライン草案ローンチウェビナーより

感度分析によると、スクラップの使用量によって、30年時点で達成すべき平均的な原単位削減割合が、△29%〜△11%で変化することが分かったとか。

このことはすなわち、スクラップの使用量を増やす計画を立てるインセンティブになるでしょう。

また、セメントセクターと同様、多排出プロセスを外注して、自社の排出量を「削減する」という誘惑もあるでしょう。ですので、鉄鋼セクターでも、中間材料の購入は、スコープ3カテゴリー1で算定することになっています。

鉄鋼セクターガイドライン草案ローンチウェビナーより

他方、鉄鉱石の採掘などのような上流側はバウンダリーから外れています。

鉄鋼セクターガイドライン草案ローンチウェビナーより

とはいえ、まだまだ最終決定では無いので、流動的です。
SBTiも、パブコメに当たり、「問い合わせ項目」を明らかにして、多様なフィードバックを求めています。

鉄鋼セクターガイドライン草案ローンチウェビナーより

さて、スケジュールですが、来年2023年1月23日まで、パブコメが実施されています。上記サイトから、ドラフトおよび作成ツールがDLできます。
まずは、ツールに自社の排出量および削減目標を入力して見るとよいかと思います。

利用可能なデータベースがすでに含まれており、自動的にシナリオを作成して、グラフ化してくれます。ガイドラインの中に、具体的な事例も紹介されているので、参照されて下さい。

パブコメ終了以降は、2月に審査、承認を受けた後、3月から4月にかけて、ターゲット検証プロトコルへの新しいリソースの組み込み&ターゲット設定ツールへのパスウェイの統合がなされ、4月にリリースとなるようです。

リリースとなれば、FLAGやセメント同様、ローンチウェビナーが開催されるでしょうから、ご案内しますね。

是非とも、フォロー&スキ、お願いしますです。


もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。