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中小企業のカーボン動向〜想定内ですが

ESGデータの収集及び開示について、上場企業などの大企業に対するリサーチ結果について、以前ご案内しました。大企業であっても、「必要性を感じていない」あるいは「感じているものの、まだ動けていない」という実情が明らかでした。

大企業がその程度なら、中小はどうだろう?

ということで、探していたところ、商工中金が「中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査」というレポートをリリースしていました。

商工中金ニュースリリースより

「ESGデータの収集・開示じゃないじゃないか」というご指摘はごもっともですが、事業活動における環境配慮姿勢、あるいは事業活動の環境に対する影響の把握及び開示についてどのような意識なのかを確認する上では、有用だと思います。

さて、今回も、調査では超重要な、調査概要について。
非上場の中小企業、9,927社に送付し、有効回答が5,233社。
回収率52.7%と半数を超えているので、優秀ですね。
地域は言及ありませんが、全国組織なので、まぁ、代表できるかなと。

皆さん一番知りたいのは、こちらでしょう。
「実際に動いているのか?」

結論は、まさしく想定通りで、2年前と比較して、大幅増。
「既に着手している」が+6.5%、「検討している」が+17.7%。
2年前に検討していた企業が、実行に移したのでしょう。

どのようなソリューションを選定しているのかをみると、やはり太陽光。

既に削減実績を上げているグローバル企業の担当者に聞いてみても、確実な方法として挙げられるのは「電力の再エネ化」です。一部のApple Watchでカーボン・ニュートラリティを達成したAppleも、結局再エネ電力でした。

意外だったのは、新電力の再エネ100%メニューなどの方が「手っ取り早さ」からすると有利だと思われるところ、イニシャルコストのかかる、自家発の導入の方の割合が大きかったこと。設備導入/更新の方が、補助金を得られ安いというメリットがあるからでしょうか。

算定及び開示支援をしている立場からすると、「排出量の測定」や「削減目標の設定」も方策として挙がっているのはうれしいですね。算定の結果、ホットスポットが判明し、「排出量の低い原材料などの調達」が増えてくるとさらにマル。

実施・検討するに当たっての動機を聞いてみたのがこちら。
「実施している」「検討している」「実施も検討もしていない」別になってます。

「コスト削減」「補助金・税制優遇」は良いとして、「企業イメージの向上」が、「実施している」「検討している」企業が約5割なのに対し、「実施も検討もしていない」企業はその半分に過ぎない点に着目。

実施して気づいたのか(結果なのか)、それが動機となって実施したのかは不明ですが、一番差違が生じている動機なので興味深い。逆に考えると、「コスト削減」や「補助金・税制優遇」よりも背中を押すための、よいスイッチになるカモです。

もう1点挙げるとすれば、「規制強化、法制化の動き」
こちらは、「実施も検討もしていない」企業の方が若干割合が高い。
中小企業はこの傾向が強いことは確認済みですが、後ろ向きな企業の方がさらに「法に触れない程度でやっておこう」スタンスが強いようです。

中小企業は特に、サプライチェーンで大手企業と繋がっていることがほとんどかと思います。その大企業は、ご案内の通りスコープ3排出量算定にも着手しているところ、取引先へも排出量を報告するよう要請し始めています。

このような、外部からの要請が対応動機になっているかは、関心どころでしょう。調査では、「輸送用機器」「金属製品」「運輸業」に絞って分析しています。

「輸送用機器」「金属製品」が高いのは、自動車や家電など、まさしく、サプライチェーンで成り立っているセクターだからでしょう。最終メーカーは、輸出も多いと思われるところ、欧州の環境規制なども効いているでしょうね。

「運輸業」は、やはり直接の削減手段が限られることから、導入したくても中々着手できないのではと推測します。今後、EV軽貨物車や、バイオフーエル車など、実用的な選択肢が増えてくることを期待したいです。

そうそう、荷主の役割も重要ですよね。
モーダルシフトや共同輸送など、一体的な削減活動を行う必要があります。

具体的に実施しようとした場合の、ハードルは何でしょう。

前回との比較では、「規制やルールが決まっていない」「対処方法や他社事例などの情報が乏しい」が減少し、「コストが高い」「人材がいない」が増えています。

ルール作りが進み、実施するに当たってのガイドライン等が整備された一方、着手しようとしたところ、「コストがかかる」「人がいない」ことに気づいた、といったところでしょうか。

この課題については、今となっては数多存在する「算定支援ソリューション」企業のビジネスフィールドですが、それぞれのサービス間でデータの連係ができない、という新しい課題も生み出しています。

このビジネスに身を置く者として、「結局高い買い物になった」とならないよう、お客さまにとってベストな提案をしていかねば、と肝に銘ずる次第。

ということで、中小企業のカーボンニュートラルに対する取組状況についてご案内してきました。本文では、自由回答も掲載されているので、一読されてみることをお奨めします。「そうだよねぇ」と納得することしきり。

これからも、サス担の方々のお役に立つ情報をお届けしていきます。
ご期待下さい。

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