見出し画像

JクレとJCMがCORSIA申請(2)

J-クレジットがCORSIAという、国際民間航空機関(ICAO) が主管する排出量取引制度で使用できるクレジットに申請した、という話をしています。

J-クレジットが申請した理由は明快。J-クレジットの活性化です。

運営委員会でも「2050年カーボンニュートラル実現に資する」として、
活性化策について、検討が続けられています。

クレジットに関する現状(J-クレジットウェブサイト)より
クレジットに関する現状(J-クレジットウェブサイト)より

2009年の発足当時を知る人間として、このようなPR資料を委員会が作るというのは、つくづく、時代が変わったなぁと思わざるをえません。

確かに、ぎっしりと文章で埋め尽くされていて、プレゼ資料の悪い見本そのままです。ですが、官僚の方々が作る資料は、ワードで文章だけとか、エクセルの表だけとかだったりでしたので、飛躍的な進歩(!)なのです。

事務局提出資料には、しっかり「参画メリット」の記載がありました。

第24回運営委員会資料より

「日本の削減義務分は、2024年において年間数百万トン」とあります。
世界では、2020-2036年の17 年間で46億トンですから、1年当たりだと、2億7,000万トン。まぁ、1%くらいになるのでしょうか。
ですが、その量たるや、バカにできません。

後述しますが、申請するクレジットは太陽光発電となるようで、その「累積」認証クレジットが、400万トン弱。1年で玉切れになるのです。

「活性化の切り札」と目の色を変えるのも、十分納得できます。

第24回運営委員会資料より

さて、発着国が参加対象国であれば、CORSIA対象飛行ルートとなります。
そのルートにおいて排出された排出量を元に、ある一定ルールに従って算出されたオフセット義務量を、「CORSIA適格排出ユニット」でオフセットしなければなりません。

したがって、対象のエアラインは、ANAやJALだけではありません。
日本発着便を有するエアラインは、殆ど全てが対象なのです。
すると、ちょっと疑問が湧いてきます。

海外のエアラインがJ-クレジットでオフセットすると、日本の排出量は増えてしまうのではないか?

明確には記述がありませんが、オフセットした場合は「相当調整」をすることが一般的なルールです。

クレジット創出者が販売した場合、購入者の排出量がマイナスになる一方、販売者の排出量をプラスに「調整」する作業です。「オンセット」ですね。

これが厳格に実施されないと、「ダブルカウント」となってしまいます。
カーボン・オフセットでは、絶対に避けなければならない事態です。

ですので、先ほどの疑問の答えは「YES」でしょう。

ただ、訪日外国人のことを考えて見て下さい。
日本経済に多大なる恩恵を与えてくれています(くれていた?)よね。
日本便を有するエアラインも、同様に、日本の経済活動に資する事業を行っていると言えます。というより、日本の経済活動そのものかもしれません。

そう、クレジットの地産地消なのです。

ただ、日本発着便以外の削減義務分のオフセットに使用されると、この考え方が成り立ちません。また、必ずしも多くはないクレジット。できれば、より多くの便数を有するエアラインに使ってもらいたい。

このように考えたのでしょうか。
J-クレジット事務局は、下記条件を制度文書に記載する意向のようです。

1.日本発着便に係る排出に対するオフセットに活用すること
2.CORSIAへの活用は日本発着便○%以上の航空会社に限る

1は当然でしょうが、2は何だかなぁ。
便数はエアラインの規模で変わってくるでしょうし。
逆に、中小のエアラインに使ってもらった方がよいのでは、と思ったりもします。余力がない中でも、日本を就航地に選んでくれているのでしょうし。

さて、申請は方法論毎にする必要があります。
事務局としては、

・国内空港において太陽光発電によるクレジット創出が検討されていること
・方法論毎のJ-クレジットの総出量
・CORSIAにおける他のクレジットの方法論毎の審査・登録の状況等

を踏まえつつ、初回の申請においては「太陽光発電設備の導入」といくつかの方法論を先行的に申請するとしています。

次回は、承認の流れを見ながら、J-クレジットがめでたく承認されるのかを考えてみたいと思います。

もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。