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カーボンプライシングとGX戦略(6)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、6回目です。

5回目では、行動を起こす動機付けになるような、排出量削減がもたらすベネフィットについて、「マイナス→ゼロ」、つまり、リスクを回避・低減できるという側面について説明しました。

今回は、「ゼロ→プラス」側面、つまり、やった方が得をしますよ、というお話です。これについては、「見える価値」と「見えにくい価値」の両面がありますが、最初に「見えにくい価値」から行きましょう。

ここで「見えにくい価値」と表現するのは、企業における価値の捉え方、コミュニケーションの仕方によって、変わってくるからです。これを踏まえた上で、以下、ご覧ください。

まずご案内したいのは、RE100です。
このnoteをご覧の方にとっては基礎知識かと思いますが、ひと言で言うと、事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業で構成される国際イニシアチブです。

日本では2017 年4 月より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が地域パートナーとして、日本企業の参加を支援しています。

環境省も、グリーン・バリューチェーンプラットフォームで、SBTやCDPなどと同等の扱いで、PRしています。

グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(環境省)より

とはいえ、国内ではなかなか再エネ100電力の調達が難しく、まだまだ単価も高いのが事実。そもそも、足元では電気料金が高騰している折に、と考えるのも無理はありません。

国内における再エネ100電力の調達方法(環境省)

しかし、先にご案内したように、このコストは「予測可能」なのです。
そして、電気料金が高騰していて、先が読みにくいからこそ、安定的に調達できる「再エネ100電力」の魅力が増すのです。

2012年度から始まった、全量買取制度開始時は40円/kWhだった買取単価も減少の一途であり、入札制になったり、FIPという別の制度が始まったり、廃棄費用を天引きで徴収されるようになったり、法改正も頻繁だったりと、「予測可能」な「儲かる」制度ではなくなっています。

売電ではなく自家消費のビジネスモデルが主流となりつつあるのは、このような背景があるからなのですね。

私としては、脱炭素に果敢に取り組んでもらうには、失敗して欲しくない、他方、しっかりとしたメリットを享受してもらいたい。だからこそ、RE100をご案内する訳です。

グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(環境省)より

RE100がもたらすベネフィットでは、「見えないメリット」に着目して欲しいです。コスト削減ももちろんありますが、比較的高値でありながらも、安定している点を評価すべきです。

2008年に原油価格が高騰した折は(WTIという原油価格の指標となる価格が2008年7月には、1バレル当たり$40~$50だったところ、$145ドルを突破しました)、ボイラの燃料がA重油から、高値でも安定していた天然ガスへシフトしました。

リスク回避及びBCP対策としても有効なのが、RE100なんですね。

もう一点、RE100は、多数の国際的な環境関連のイニシアチブの中でも、抜群の知名度を誇り、世界中の機関投資家から信頼を得ていることに注目。

政府がコミットしている、官民合わせて150兆円のGX経済移行債においても、高く評価されます。

世界はどうでしょうか。

PwCのレポートでは、ESGに向けた運用資産が、2015年の約6,000億ドル(約83兆円)から2021年には1兆1,000億ドル(約153兆円)に増加しており、2026年のベースケースで2兆7千億ドル(約376兆円)、ベストケースでは最大4兆5千億ドル(約627兆円)と予想しています。

GPs' Global ESG Strategies(PwC)より

同じレポートでは、機関投資家が76%以上が非ESG 商品への投資を停止すると回答しており、「ESGか、それとも何もしないか」という考え方への転換を示唆していると言えます。

つまり、国内外の機関投資家や事業会社、コーポレートベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタル、はたまた個人投資家は、「Go Green」に前のめりなのです。

このときに、これら機関投資家が投資判断をするときに参考にるのが、国際的な環境指標です。そう、RE100もその一つなのです。

国内外からのESG投資を呼び込むにあたって、これ以上ないステータス。
金銭的価値、金額では測ることのできないベネフィットです。

企業ブランドを構築するために、是非トライしてみて下さい。

ちなみに、RE100に参加するには年間の電力使用量が「50GWh以上」という制限があります。(世界企業では100GWh以上であるところ、日本企業では緩和されています)

50GWhは相当の使用量で、対象とならない企業の方が大多数です。
そのような企業は、「再エネ100宣言」の方へ参加下さい。

230306 自然エネルギー100%プラットフォームセミナー資料より

どうでしょうか。

再エネ100電力がもたらすベネフィットをどう捉えるか、コミュニケーションすることによってお客様との関係性がどのように変わるのか、分かれて来るとは思いますが、個人的には、明確な「見える」ベネフィットだと理解しています。

ということで、今回は、「ゼロ→プラス」側面、つまり、やった方が得をしますよ、というお話のうち「見えにくい価値」についてご案内しました。

次回は、私が是非ともご案内したい、「見える価値」「見えにくい価値」両方の可能性のある取組についてご案内したいと思います。

よろしくお願いします。

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