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再度「合目的的」に考えてみた(2)

「合目的的」と言う言葉が妙に納得させるワードなので、果たして、これで説明していていいものか、という不安になる方もいらっしゃるかも。
と自分自身不安に思ったので、払拭するお話をしてみたいと思います。

前回はこちら。

スコープ3基準の第4章「算定と報告の原則」には「スコープ3インベントリーのGHG算定と報告は以下の原則に基づく必要がある。」とあります。
その原則とは、以下の5つです。

関連性:GHGインベントリーが当該企業のGHG排出量を適切に反映し、ユーザー(当該企業の内部と外部の両方)の意思決定の必要性に役立つように確保する。
完全さ:インベントリー境界内での全てのGHG排出源と活動を説明し、それに関して報告する。何らかの除外項目があればそれを開示し、正当化する。
整合性:整合性ある方法論を使って、時間の経過に伴う意義ある目標達成性能の追跡ができるようにする。データ、インベントリーの境界、方法あるいはその他の関連要因に時間経過面での変化があればそれを包み隠さず文書化する。
透明性:明瞭な実態追跡調査に基づいて事実に沿った綿密な方法での全ての関連問題に対処する。何らかの仮定があれば開示し、算定と計算の方法論と使用したデータ源を適宜参照する。
正確さ:GHG排出量の定量化がシステマティックであり、判断できる限り、実際の排出量より過大あるいは過小でもないようにし、且つ、不確実性は実際的である限り縮小されるように確保する。十分な正確さを達成し、ユーザーが報告された情報の確かさについてもっともな確信をもって意思決定を下せるようにする。

スコープ3基準

ちょっと難しいので、簡単に言うと、

関連性:公開されるデータは、ステークホルダーの意思決定に有益か
完全さ:バウンダリー内の全GHGを把握しているか
整合性:ルールを定めて、随時基準年のデータをアップデートする
透明性:プロセス、手順、仮定及び限界について適切に開示する
正確さ:事業目的及びステークホルダーの意思決定に十分な正確性

これが、私が「合目的的に考えよう」と判断している根拠です。

例えば、前回「YES」とした下記クエスチョン

・排出係数の更新はどうあるべきか
・基準年の変更はした方がよい(してもよい)のか
・係数を変更したら全て再計算すべきなのか

これは「関連性」「整合性」「透明性」を満たすことになります。
納得して頂けましたでしょうか。

さて、この5原則を全て同時に達成することは、非常に困難ですよね。

「完全さ」を追求しようとすると、算定する対象毎に排出係数が必要になります。ですが、全てに対して適切な係数があることは有り得ません。すると、2次データの利用や、類似データの流用などで対応せざるを得ません。

カテゴリー11などでは、使用方法についてのシナリオを作成しますが、完全に実態を反映していることなんてあり得ないでしょう。

そうです。「完全さ」と「正確さ」は両立しないのです。

もちろん、この点はGHGも認識しており、実際に算定に当たって以下のようにアドバイスしています。

スコープ3基準 第4章

スコープ3の算定は、繰り返し行うことで学習効果が如実に表れてきます。
時間の経過と共に、これら算定原則間のトレード・オフも小さくなっていくことでしょう。

最後に、GHGプロコトルがデータ品質の経時的改善を求めている文章を紹介しておきたいと思います。算定結果が大きく変動するからといって、データのアップデートを躊躇することなく、自信を持って実施していって下さい。

7.6 データ品質の経時的改善
データ収集、データ品質評価およびデータ品質改善は相互関係するプロセスである。企業はデータ源を選択するとき、データ品質指標を先ず適用し、データが収集された後、インベントリに使われるデータの品質を検討する。スコープ3のデータ収集の最初の数年にわたり、企業は、データ入手性が限定的であるため比較的低い品質データを使う必要があるかもしれない。企業はそれが経時的に入手できるようになるにつれ、低い品質データを高い品質データで置き換えてインベントリーのデータ品質を改良するように努めるべきである。

スコープ3基準 第7章






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