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排出削減は具体的成果を求めるフェーズへ

Googleは、2024年7月5日に2024年環境報告書をリリースしました。

報告書では、Googleの二酸化炭素排出量が2019年から48%増加していることなど、同社の環境への影響と取り組みについて詳しく説明。データセンターの電力効率が業界平均の1.8倍であることや、AI処理チップ「Trillium」の開発など、積極的な対策も紹介されていました。

ですがサス担としては、日経GXが紹介していた点ではないでしょうか。
(GX会員でないと閲覧できません。申し訳ありません。)

この記事に接して、初めて原文に当たった人もいるかとは思いますが、当該箇所を抜粋しておきますね。

We aim to neutralize our residual emissions with high-quality carbon removal credits by 2030, and to do so in a way that maximizes our positive impact on global decarbonization. This approach represents an evolution of our strategy: starting in 2023, we’re no longer maintaining operational carbon neutrality. We’re instead focusing on accelerating an array of carbon solutions and partnerships that will help us work toward our net-zero goal, and are aiming to play an important role in advancing the development and deployment of nature-based and technology-based carbon removal solutions required to mitigate climate change.

これは、排出削減の旗印を下ろしたと言うことではありません。

自社及びバリューチェーンを超えた削減(BVCM)が喫緊の課題であること、既存技術(あるいはその延長線上にある技術)に基づいた吸収・削減活動ではネット・ゼロは到底おぼつかないことを踏まえ、ブレイクスルーとなる技術開発に寄与することを宣言したものと思います。

つまり、クレジットの活用でなく、量的にコスト的に誰でも利用できるCDR技術の普及という、もっと上位の概念の達成に軸足を移すということ。

具体的には、Frontierに2億ドルの資金拠出を約束したり、First Movers Coalition(FMC)に参画し、炭素除去分野における最先端技術を活用した製品を率先購入することをコミットしたりしています。

加えて、ICVCMにも2023年、100万ドルの助成金を行うなど、「高品質なクレジット」の普及推進にも貢献しています。クレジットと直接技術、両面でBVCMを実践していると言えます。

さて「Frontier」と「First Movers Coalition」について補足しておきますね。

「Frontier」は、Carbon removalの技術開発を加速するため、Stripe、Alphabet、Shopify、Meta、McKinseyによって設立されたイニシアチブ。

買い手からの需要を集約する一方、供給者を精査、購入を促進することで、質の高いCarbon removal製品の開発と流通が担保されるというわけです。

「First Movers Coalition」は、革新的な技術であるが故に高価格な製品を、率先して購入することをコミットしている「購買者」のイニシアチブ。

率先購入する対象は、アルミニウム・航空・炭素除去・セメント及びコンクリート・海運・製鉄・貨物という7つの高排出セクターで、どのセクターの製品を購入するかをコミットして参画するものです。

FMCは、noteでもご案内していますので、詳しくはこちらを参照下さい。

ところで、炭素除去クレジットのマーケットは、Microsoftが2023年に参入したことで、飛躍的に購買量が増えています。

Microsoftと言えば、2015年にビル・ゲイツによって設立されたBreakthrough Energyも、同様の課題意識の下実施されてているプロジェクトです。

次のようなプロジェクトにより、2050年ネット・ゼロを目指しています。

Breakthrough Energy Ventures:
クリーンテクノロジーを開発する企業に投資するためのファンド
Catalyst:
新しい気候技術を利用する企業に資金を提供するプラットフォーム
Fellowsプログラム:
新技術を開発する発明家や研究者を支援するグローバルプログラム

このように、自身のビジネスが、GHG多排出型であることを真剣に捉え、サスティナブルであるための施策を愚直に推進していると言えます。

ということで、GoogleとMicrosoftの、現在のネット・ゼロに対する姿勢を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

クレジットが悪いということを言いたいのでは無く、「高品質」であれば積極的に活用して欲しいと思います。その上で、安価で効果的な削減技術が普及すれば、クレジットという仕組みに頼ること無く、誰でも、どこでも「削減活動」ができるようになるはず。

2050年ネット・ゼロは、そのような普遍的な技術がなければ実現不可能であるところ、一足飛びという訳にはいかないので、選択肢を狭めることなく、できることから着手すべき、と思っているのでした。

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