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エアラインは飛び立てるか?

つい先日、「理想論を議論する段階は過ぎ去り、具体的な削減活動を起こすフェーズに来ている」というnoteを書きました。

そんな折、タイムリー(?)に、ニュージーランド航空が2030年中間目標を撤回するというメディア報道がありました。

ニュージーランドヘラルドの記事には、併せてSBTiへ提出しているNear-term目標も撤回するという記載があったので確認しましたが、まだステータスは「TARGET SET」となっていました。

このように、Near-termで認定されている削減経路は「Well-below 2℃(WB2C)」で、WTWで2030年までに2019年比で原単位△28.9%、総量△16.3%を目指すとしています。

社内目標は撤回したけども、SBTiへの撤回申告は予定なのでしょう。

ちなみに、WTWとは「well-to-wake」の略で、燃料を採掘してから飛行するまでの間に排出される排出量のことです。TTW「tank-to-wake」は、燃料が航空機の燃料タンクに入った後の排出量、すなわち主に飛行中の排出量になります。「wake」が「wheel」になると飛行機が自動車になります。

そもそも、SBTi認定(Near-term)を受けているエアラインは、16社しかありません。さらに、1.5℃目標達成経路での認定はそのうちの4社です。

Net-zeroを「Committed」しているエアラインも、わずか6社。「TARGET SET」となっているエアラインは皆無です。

WB2Cで認定を受けているニュージーランド航空は、世界のエアライン全体の枠組みで見ると、決して劣後している訳ではないことが分かります。

その要因として挙げているのが、「高効率機体の供給遅延」と「SAFの高騰」
特に、後者は、高騰以前に製造の技術的ハードルが解消しない限り、解決は難しいでしょう。そもそも、コロナ禍後の需要の高まりに、現在のジェット燃料もショートしている状態ですから。

このような背景の下に、今回のニュージーランド航空の動きを見ると、追随するエアラインが出てくることは必至なのではと考えます。

とはいえ、2030年目標の旗を下げたニュージーランド航空も、2050年ネットゼロの旗は維持するとしています。加えて、CORSIAから脱退することもありません。

CORSIAとは、ICAO(国際民間航空機関)による、航空機業界全体での排出量削減スキームです。

このように、1.運航改善 2.機体の高効率化 3.SAFの利用 4.市場メカニズムにより、2019年比△15%の排出量を維持することを目指しています。

このうちの、2と3、とりわけ3が制約事項となっているのはICAOは承知しており、これを補完するために4、つまり、ETSを過渡的に使用するとしていました。

CORSIAパンフレットより

であれば、CORSIA適格ユニット(CORSIA Eligible Emissions Units)の需要が高まる可能性もあるところ、こちらも、ウォッシュ批判の高まりや、認定ユニットの数の問題もあり、思惑通りに行くかは不透明。

「目標設定から移行計画へ」とは言いながら、じゃあ「実行可能な(doable)」な施策はあるかというと、甚だ疑問であるため、自己矛盾しているなとは思います。

ただ、航空や海運、鉄鋼やセメントなど、「hard to abate」なセクターがある一方で、比較的容易なセクターも存在します。

そんな中、全てのセクターに当てはまる(sector-agnostic)ような対策・目標を設定・推進するのではなく、セクター別の(sector-specific)目標や削減パスを個別具体的に設定、推進していくことが肝要かと思います。

もちろん、SBTiも「SDA」を策定していますが、セクターのリーディングカンパニー主導で策定し、同じ枠組みをセクター内の全ての企業に当てはめるのではなく、セクター毎にプレッジしてもらい、後は個別具体的に施策を推進してもらう方が、良いのではないでしょうか。

さらに言うと、SME向けがあるとしても、SBTiは規模による差異について、あまり配慮していないようにも思えますし。

ということで、一つの小さな記事から、近い未来に想いを馳せてみましたが、いかがだったでしょうか。

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