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サウジアラビアを視察してきました(番外編)

10回に亘り、サウジアラビア視察レポートをお届けしてきました。

繰り返しになりますが、その目的は、ムハンマド皇太子が推進する「ビジョン2030」がどのように、サウジアラビアの「国の形」を変えつつあるのか、変わりつつあるのかを目の当たりにすることでした。

一言で言うと「同国を石油依存経済から脱却させ、多様化された繁栄する社会へと変革するための国家戦略」です。

このビジョンは、3つの主要な柱に基づいています。

1.活気ある社会
サウジアラビア国民の生活の質を向上させる
女性と若者のエンパワーメント
文化、エンターテイメント、スポーツの振興
健康で安全な社会の実現

2. 繁栄する経済
石油依存経済からの脱却
非石油部門の経済成長
民間部門の活性化
投資の誘致
イノベーションの促進

3. 野心的な国家
サウジアラビアを世界的なリーダーに位置づける
外交・国際関係の強化
持続可能な開発の推進

公開情報から著者作成

この中で、諸手を挙げて歓迎したいのは、女性の地位向上施策。
先進国では「当たり前」のことが今まで許されていませんでした。

運転免許取得の解禁(2018年)
スポーツへの参加拡大
女性専用公共交通機関の導入
女性起業家の支援
女性の政治参画促進

公開情報から著者作成

2010年は、空港や街中で見かけるのは、男性ばかり。
イスラム圏外からの観光客も、見当たりませんでした。

2010年の街の様子 上:空港(左:ジェッダ 右:リヤド) 下:夜のジェッダ旧市街

ところが、今回は、他の国と同様に「普通」に女性の姿が見られるだけでなく、カメラを向けても、顔を隠したり背けたりするどころか、物怖じすることなく声をかけてくれたり、一緒に写真に収まったりしてくれました。

旧市街を訪れていた地元の大学生

こちらは、ジェッダ旧市街を訪れた際に遭遇した、地元の女子大生の一行。
「どこから来たんですか?」と英語で話しかけられ、驚きました。

考えれば、ビジョン2030が公表されたのが2017年。それから7年経ちますから、彼女らにとっては「当たり前」になっているのかもしれません。

総じて「1.活気ある社会」を実現する施策については高評価で、視察でも随所にその効果が見られたのですが、他の2つの柱については、大いなる違和感を感じざるを得ません。

「石油依存経済からの脱却」「非石油部門の経済成長」の実現に向けた施策は、「持続可能な開発の推進」という目標に合致しているのでしょうか。

巨額の国家資金を運用するために公共投資基金(PIF)を設立、非石油部門への投資を拡大するとしていますが、その象徴である「NEOM」については、期待ではなく疑問しか感じません。

詳細は、公式ウェブサイトを参照頂くとして、紅海沿岸の約26,500k㎡の広大なエリアに、自然環境を最大限に活かした持続可能な都市を目指す直線状の都市(THE LINE)や、最新技術を活用した高度な製造業が集積したゾーン(OXAGON)、観光とリゾートに特化したゾーンなどを建設するそうです。

しかしながら、「砂漠のど真ん中に建設する必要があるのか」と思うのです。

もちろん、いずれのサイトも環境に最大限の配慮し、THE LINEは、100万人が暮らす再生可能エネルギー100%の環境配慮型の「ゼロカーボンシティ」を目指していると言いますが、逆にそれが免罪符のようになっていないでしょうか。「再エネ100%=サスティナブル」なのでしょうか。

NEOM公式サイトより(左上:THE LINE 右上:SINDALA 左下:OXAGON 右下:TROJENA)

環境影響については、トレードオフの関係にある場合も多々あります。
CO2の排出(カーボン・フットプリント)は減るけど、水使用(ウォーター・フットプリント)は増えてしまう、といった例です。

これについては、LIME3という環境影響評価方法がありますので、NEOMのような事業を企画立案していく場合には、活用してもらいたいところです。

ここで、日本の出番ではないでしょうか。

サウジアラビアだけでなく、中東・アフリカ地域は、これから人口が急増し、経済の中心になっていくことが予想されます。これから豊かになっていこうという国々に対して、「止めろ」というつもりは毛頭ありません。

皆さんご承知の通り、先進国は、環境に多大なるインパクトを与えながら発展してきてしまいました。ですが、この過程において、学習してきたというのも事実です。その知見を、まさに今から飛び立とうとしている国々のために、活かしていくことが、義務では無いかと考えるのです。

NEOMのような、超未来的なプロジェクトでなくても、日々の生活の中で、例えば、食事についても考えさせられることがあるかと思います。

今回の滞在中、サウジの伝統的な料理を始め、様々な料理を頂きました。
ただ、どれもが、大皿料理で、それぞれが自分の分を取り分けて戴く形。
何も悪いことでは無いのですが、「フードウェイスト」が出てしまいます。

一般的な日本人には多すぎる量が普通に供され、申し訳ないと思いつつ、ある皿は殆ど手を付けることなく、引いてもらわざるを得なかったり。

それを廃棄するのは、店側からすると、その分の費用は払ってもらっているので、経営的には何ら問題はないでしょう。

戴いた料理の数々

この他にも、まだまだ、不必要なパッケージがあったり、捨てることを前提に提供される商品があったり。そのようなものが「ゴミ」となって、街中に散乱していたり。

このような、現地の方にとっては「当たり前」のことが、日本人の目には「おかしい」と映るものが多数あるはずです。しかし、現地に行ってみなければ分かりません。

メディアにしてみれば、ニュース性がないから報道されません。もちろん、受ける側も求めないので、尚更です。私たちは、多数のフィルターを通った情報にしか接していないのです。

私は、持続可能な社会の実現に向けた技術や製品を持つ日本企業を応援しています。他方、そのような技術を必要としている国・地域があります。

今回のツアーのように、まずは自身が現状を目の当たりにした上で、互いをマッチングすることを「ライスワーク」ではなく「ライフワーク」にしています。

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