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大波乱のSSBJ第30回会合(3)

前回まで、2回に亘って、金融庁の野崎課長の発言及びそれから想定される将来の規制について、想いをはせてきました。

課長退席後は、通常の委員会に戻りましたので、そちらの議論もお届けしておきますね。

個人的に着目したのは、次の3点

1.マテリアリティの原則
2.同時報告原則(期ずれの論点)
3.絶対総量の合計値の開示
4.国際海運・国際航空
5.排出係数

1は皆さん気になるところでしょう。
ESRSにおいても、EFRAGのドラフトに対し、欧州委員会から出てきた修正案では、「マテリアリティ」に関わらず開示すべきとされる対象が大幅に削られ、「骨抜きにされた」といった議論が持ち上がったことは記憶に新しいところ。

日本版S1・S2はどうかというと、IFRS S1・S2を踏襲し、基本的には、企業が自社のマテリアリティに基づいて判断できることになります。

マテリアリティ評価対象外(ESRS1,2)のshall datapoint →開示義務

マテリアリティ評価対象の shall datapoint
マテリアルでない場合→開示任意

マテリアリティ評価対象の may datapoint
マテリアルな場合→開示推奨(good practice)

ESRS Q&Aより

なお、法令によって開示しないことができるという情報でも、マテリアルな情報については、開示しなければならないことに留意。つまり、法令に「開示しないでいいよ」とあっても、それを理由に開示しないとすることはできないということ。

2は、例えば、暦年報告のところ、年度報告でよいか、といったもの。
企業によっては、事業年度毎がよい場合もあるでしょう。

事務局は、つながりのある情報を提供すべき、関連のある財務諸表と同じ報告期間であることが有用と言う観点から、例外を設けるべきでは無いという立場。期間調整の加減算で実務的に対応できるので、問題はないのではと。

ただ、温対法では、算定対象期間は、HFC、PFC、SF₆、NF₃の代替フロン等ガス以外の温室効果ガスは年度ごと、代替フロン等ガスは暦年ごととなっています。

また、GHGプロトコルは報告期間の柔軟性を提供し、企業や組織が自身の状況に最適な報告期間を選択できるようになっています。選択された期間は一貫性を持ち、報告の透明性と比較可能性を確保するために明確にされる必要があればよいという立場。

さらに、例えば、GXリーグでは、温対法に報告したデータを使用するのであれば、信頼性が担保されているとして、第三者検証は不要としています。

なので、個人的には、一貫性・透明性が担保されることを条件に、再計算して報告書を作成することは不要とすればよいと思います。委員からも同様の意見もありましたしね。

3は、スコープ1・2はよいとして、スコープ3を合算するのはいかがかという論点。皆さんご存知のように、算定対象とするカテゴリーが様々であることに加え、算定粒度もそれぞれ異なります。それを合算する意味があるのか?

私も、算定支援する場合に、特にスコープ3については「他社比較でなく、自社比較」である点を繰り返しお伝えしています。ですので、正直に算定しましょうと。開示して比較されるとなれば、邪心も働こうというもの。今回の委員からの指摘を受け、どのように修正してくるか注目しましょう。

4は個人的に、注目している論点。
「国際」であるために、どの法域にも属さない排出量だからです。
ですので、どのNDCにもカウントされない。でも、それぞれ、世界のGHG排出量の約2%を占めていることを考慮すると、無視できない量です。

これについては、両者とも、ICAO及びIMOという国際機関のもと、排出削減に取り組んでいることから、SSBJとしては、補足する程度に留めるようです。川西委員長も、「業界は分かってるから、心配してません」とぶっちゃけてました。

最後の5は、特にご関心が高い論点では無いでしょうか?

算定支援を行っていて一番多いのが、排出係数に関する質問。
適切な係数が、環境省のDBに無いので、購入する必要があるのか。
実務では、毎年算定を行っていく中で粒度を上げていきますが、その際に検討しましょう、とアドバイスします。少なくない出費、それもサブスクですからね。

こちらは、補足文書で紹介するとなると、改訂には委員会の承認が必要となるので、ウェブで公開が現実的ではと。ただ、メンテナンスが大変になるので、どうしようかというところだそうで。

結局、温対法のような公式の係数が出てくることはないということ。
どの排出係数を使ったのか、出自を示してくれればよい、とのことでした。
現在の算定の悩みどころは変わらないでしょう。

ということで、波乱含みの第30回サステナビリティ基準委員会について、「場の雰囲気」をお伝えしてきました。

今年度末のリリースに向けて、極力リアルタイムに状況をお届けできればと思っています。いずれにせよ、算定はマストですので、皆さんにおかれては、コツコツと作業を続けていってもらえればと思います。

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