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大波乱のSSBJ第30回会合(1)

2023年6月の、IFRS S1・S2リリースを受けて、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は日本版のS1・S2を策定すべく、精力的に会合を実施しています。年も明け、公開草案の発表が年度末に迫り、佳境に入ってきました。

SSBJウェブサイトより

委員会では、論点毎に慎重に審議していると認識しており、できるだけチェックするようにしています。

委員会に提出される事務局資料は、基本、全てサイトで公開されています。
しかしながら、文案等の審議資料は「審議中」なので非公開扱いです。

事務局資料中に「事務局による提案の要約」「事務局による提案」及び「事務局による分析」はあるものの、全ての委員の意見を網羅、尊重することを旨とするため、当日の発言等々によって、柔軟に変更されます。

個人的には、どの委員がどの発言を、どのようの口調で、あるいは、どのような背景を踏まえながら行っているのか、事務局が、どのようにその内容を受けているのか、等々が重要だと思っています。

ですが、ご安心を。SSBJは審議状況をYouTubeで公開してくれています。
私は、関心が非常に高い場合は、時間を割いて視聴しています。
どのような内容が記載されている「文案」に対する意見かは分かりませんが、「場の雰囲気」は十二分に感じることができます。

ただ、第30回会合のYouTube動画では、サプライズがありました。

日本版S1・S2の対象はプライム上場企業又はその一部と想定する

議事概要にも同様の記述があり、「対象は有価証券報告書提出企業」と理解していたので「?」となりつつ、これは見なければと興味津々で視聴。私だけで無く、SSBJ事務局や委員にとっても「サプライズ」だったことが判明。

というのも、金融庁の野崎課長がこの内容を発表した際、委員はもとより、川西委員長も動揺しており、まさしく「場の雰囲気」がリアルに伝わってきたからです。

この発言の後「この後の議論は金融庁さんが退席されてから行います」と委員長。退席されてから開口一番「対象が一部になることによって、意思決定が場合によっては変わる可能性があります。理屈では、やり直すことになります。」

というのも、国際的な基準と取り扱いを変えたところもあれば、中小企業も対象に含まれる前提だったので、緩和したところもあるからです。

これについては、事務局が再提示を行い再審議をすることになりました。加えて、採り上げる論点の有無を委員に依頼も行いました。業界団体と意見調整をする必要もあるでしょうしね。

さて、2022年6月13日に金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの提言に基づき、企業の有価証券報告書等においてサステナビリティに関する考え方及び取組の記載が新設されることとなり、サステナビリティ情報の開示が求められるようになったのはご存知でしょう。

ですが、この改正では記載欄が新設されただけで、具体的に何を開示すべきかは明らかにされておらず、実際、開示した企業は限られていました。なので、開示事項はS1・S2に委ねられると思われていたところの、今回の開示要請企業範囲の変更。爆弾とでも言ってよいのでは無いでしょうか。

開示が要請される企業の範囲については、2022年12月のディスクロージャーワーキング・グループで、主に上場企業を対象とすることが決定していることから、スタンダード、グロースへ拡がる可能性は高いと、野崎課長は仰りはしたものの、歯切れが悪く、否定的な口調にも思えました。

課長は短い発言の中で「グローバル投資課との建設的な対話を中心に据えた企業向け、プライム上場企業もしくはその一部から始めるのが必要」というフレーズを2度も繰り返していたことから、「その一部」である可能性が高いでしょうね。

サスティナビリティ関連情報開示といえば、CSRDが思いつきますが、対象となる日本企業数は約800社だそうです。他方、プライム市場上場企業数は、1,655社(2/9現在)であることを考えると、半分くらいが妥当な線でしょうか?

最後に川西委員長の言葉をお伝えしておきましょう。
これがが全てを物語っているかもしれません。

4,000社が1900社、適用企業が半分になる。考え方が変わるかもしれない。

3月開催のオープンセミナー参加してきますので、またご報告しますね。
ちなみに、あっという間に350名の定員埋まってしまってました(^_^;)

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