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ISCC認証がにわかに注目?

以前「ISCC認証(International Sustainable Carbon Certification:
国際持続可能性カーボン認証)」について、ご紹介したことがありました。

前回は、私が注目している、ICAO(国際民間航空機関) が実施している排出削減の取組「CORSIA(The Carbon Offsetting and Reduction  Scheme for International Aviation)」で使用できる燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuels)の要件を、「ISCC CORSIA」が全て網羅していたからです。

ですが、ここに来て、別の形で注目を浴びてきています。

というのも、環境界隈では著名な専門誌「日経ESG」が3月号において「予算に応じてオーダーメイド」というタイトルで、ISCC PLUS認証を取得した場合、「マスバランス方式」を採ることにより、「実質バイオプラ100%」を実現できるという記事を掲載したからではないかと思っています。

マスバランス方式(CoCオプション)

マスバランス方式とは、原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:廃棄物由来原料)とそうでない原料(バージン原料)を混合させる場合に、特性を持った原ヶ料の投入量に応じて、製品の一部に対し、その特性の割り当てを行う手法のこと。一般的に紙(FSC認証)、パーム油(RSPO認証)、電力(グリーン電力証書)などで適用されている手法。ISCC PLUSではマスバランスは拠点ごとに計算される必要があり、計算期間は最長で3ヶ月である。

Bureau Veritus Japan ウェビナーより

ここで、ISCCの定義を確認してみましょう。
ISCCのウェブサイトによると、こうあります。

ISCCは世界的に適用可能な持続可能性認証制度であり、農林産バイオマス、バイオベース・循環型素材、再生可能エネルギーなど、すべての持続可能な原料を対象としています。ISCC規格に基づく認証は、完全に透明で森林破壊のないサプライチェーンと、生物多様性の価値が高く炭素蓄積量の多い土地の保護を保証するものです。ISCC規格は、人権、労働権、土地の権利、および優れた経営慣行を遵守しています。さらに、ISCCは、温室効果ガスの排出量と排出削減量を計算・検証するための方法論、規則、ガイドラインを提供しています。

ISCCウェブサイトより(著者翻訳)

つまり、ISCC認証を取得した場合、バイオマスに関するサプライチェーンが証明されているので、それを特定の商品に割り当てることにより、実質「100%バイオプラスチック」が実現出来るのです。

非化石証書やグリーン電力証書を購入することにより「再エネ100%電力」が実現するのと、同様なイメージでしょうか。(厳密には異なりますが)

日本でも一昨年頃より、一部の大手樹脂メーカーにおいて始まった取組ですが、大手に採り上げられたことにより、「日の目を見た」形ですね。


確かに、品質とコストを兼ね備えた「完全100%バイオプラ」実現は難しいところ、現実的な選択肢であり、移行期間においては認められる仕組みだと、個人的には評価しています。

が、やはりよくは思わない環境NGOがいることも事実。
実際、早くもこのように、CO2の排出が完全にゼロであることを謳う商品を発売するという企業が出てきました。

原料はリサイクルされた鉄鋼、使用するエネルギー及び輸送を含む製造に関わる排出量がゼロとしています。(厳密には、製造する鉄鋼1kg当たりのスコープ1+2排出量が0.05kg未満)

加えて、「カーボンオフセットやマスバランス方式を利用していない」と明示しています。

SSABプレスリリースより

Volvoグループが、この「SSAB Zero」のファーストカスタマーだそうです。

いわゆる、取引先から要求されて回答する「製品単位の排出量」ですが、完全に「ゼロ」だと購入側はラクですよね。スコープ3カテゴリー1で算定する必要がありませんから。

ISCC認証は、特に化学業界ではホットトピックになっているようで、今後認証が事実上デファクトになる可能性もあるとする意見もあります。

GX-ETSで、検証依頼がどの程度増えるか先行きが見えない中、別のところでも需要が発生するのでしょうか。

「検証ビジネス」「算定ビジネス」がバブルにならないよう、両方に携わる身としては、誠実に業務を推進していきたいと思います。


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