CFPの算定・検証に関する検討会(その2)
9月22日に実施された「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証に関する検討会」の内容について、前回から引き続きご案内していきます。
前回は、設立趣旨の説明で終わってしまっていました。
今回は、CFPのこれまでの経緯や、その算定ルールに関する課題についてお話ししていきたいと思います。
CFPについては、これまでも議論・検討はされてきていました。
政府主導の試行事業は2011年に終了し、2012年からは「民」である「産環協」が事業を継承、2019年にはSuMPOに運営を移管、2022年からは「SuMPO環境ラベルプログラム」として運営されています。
ですが、このようにルールはできていても、必ずしも普及しているとは言えません。このマークのついた商品、皆さんご覧になったことありますか?
個人的には、やはりPCRの作成が困難なことに尽きるのではと思ってます。
J-クレジットで方法論を作るよりも、遥かに難易度が高い。
だからと言って、それがどの程度売上に貢献するかが不透明。
絶対的にインセンティブが不足していると思うのです。
2050年ゼロカーボンや、多様な開示要請の高まりなど、外濠が埋まってきても「アリバイ作り」のようなスタンスだったように感じていました。
それが、GXリーグ基本構想を打ち出したり、GX経済移行債計画を発表したり、今回のようにカーボンプライシングに資する検討会を改めて設置したりと、本気度を露わにしてきました。
想像でしかありませんが、温暖化対策に取り組む意義が、「やることによるメリット」よりも「やらないことによるデメリット」へ移行してきたからではないでしょうか。
(その1)で紹介した「検討会の設置趣旨」の一つ、「炭素国境調整措置」は、詳細なルールは決まっていないものの、導入されることは確実です。日本で相応の措置がとられない限り、当該地域へ輸出する企業なペナルティーを受けてしまうのです。
痛みを伴うものでなければ、動かないのでしょうね。
さて、検討会では算定に当たっての課題が説明されていました。
大きく分けて次の二つ。私も同意見です。
まずは、算定ルールについて。
バリューチェーン排出量の算定支援を行っていると、GHGプロトコルしか無いように思われるかもしれませんが、多数存在します。検討会では、製品カテゴリ横断型ルールとして、下記3つが紹介されていました。
製品カテゴリ特定型ルールとしては、下記のようなものがあります。
ルールが複数あることは、あまり問題では無いと思っています。
情報開示ルール(これが複数あることは問題と思ってます)毎に、使用する算定ルールが指定されていることが一般的なので、迷うことは無いでしょう。
例えば、CDPやSBTiは、GHGプロトコルに基づくよう求めています。
事務局は、「解釈の余地がある」ことが課題だとしています。
つまり、「裁量の余地が大きい」ことにより、製品間の公平な比較ができないと言う訳でしょう。
ただ、この点も「カーボンフットプリント(CFP)」だからこその問題意識だと思います。CFPは、製品に表示され、消費者が購入する際の判断基準にしてもらうことが目的。なので「比較可能性」が求められるんですね。
これが、単なる情報開示であれば問題になりませんし、ましてや、組織の排出量となれば、「比較できない(比較に用いることを企図していない)」と各イニシアチブは公言しています。
CDPは、バリューチェーン排出量を算定する目的は、「ホットスポットを特定し、サプライヤーと協業して(エンゲージメントして)、全体の排出量を削減すること」と繰り返し説明しています。
「競合他社はどれくらい排出していますか」と尋ねられることも多いのですが、「比較することが目的ではありません」と一貫してお答えしています。
まぁ、皆さん算定自体初めてなので、疑問に思われても当然です。このあたりが、コンサルとしてお役に立てるところだと思っております。
長くなってしまいましたので、2つ目の課題は次回に譲りたいと思います。
こちらが、本命ですね。
続いて、データ収集問題。
算定においては、もう、これに尽きると言っても過言ではないでしょう。
算定支援の現場では、「経理システムから金額データを取り込んで下さい」とお願いします。そして、金額ベースの排出係数DBの定番「IDEA」と掛け合わせて、スクリーニング、大ざっぱな全体の排出量を把握します。
短期SBTiでは、スコープ1・2はカバー率95%、スコープ3排出量が全体の40%以上の場合は、スコープ3のカバー率2/3以上、という条件がありますが、その母数となる排出量になります。
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