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GHGプロトコルとSHK制度の変換

省エネ法の報告と同時に報告している、温対法の報告。
算定報告公表制度(略してSHK制度:ダサッと思うのは私だけ?)

GHGプロトコルのスコープ1・2とSHK制度は、共に、組織のGHG排出量を算定する基準なのですが、微妙に異なっており、実務を担当している人間としては、悩ましい問題です。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

そこで、大本営の環境省が重い腰を上げて検討に入りました。

9月12日に第4回目が開催され、「GHGプロトコルと整合した算定への換算方法について(案)」が事務局から提示されました。

「ヤッター」と思ったのも束の間、その実、これまでやって来たこと、そのまんまでした。「正しいことをやってきたのね」と確認できただけです。

示されたのは、GHGプロトコルと整合した算定への換算方法というもの。

変換:SHK制度で算定した排出量について、GHGプロトコルで算定し直す
補足:SHK制度では算定していない排出量を、GHGプロトコルで追加算定
控除:SHK制度で算定した排出量から、一部を差し引く

上図において、
「相違点1」=「変換」
「相違点2」=「補足」
「相違点3」=「控除」
だそうです。

個人的には、GHGプロトコルが殆どデファクトスタンダードなので、SHK制度をGHGプロトコルに「整合」させるものだと期待していました。こんな資料を作っているんだし。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

これだと、「環境省謹製のアダプターをつくりました」です。残念。

まぁ、新たに算定業務に関わる方にとっては、非常に助かるツールではあります。ということで、必要なところを以下ご紹介しますね。


温対法は「tCO2」を報告するものなので、再エネ証書のように「kWh」単位で購入するものも「tCO2」に換算してマイナスしてました。

これを、先に「kWh」同士で引き算した後、電力の排出係数をかけて「tCO2」にするものです。

これこそ、SHK制度の方を変更してくれてもいいと思うのですが。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

J-クレジットは、環境省も運営主体なので、「温対法の報告に使用できる」というメリットは絶対外さないはず。ということで、この扱いは永遠に続くでしょう。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

廃棄物の原燃料使用は、GHGプロトコルではスコープ1となります。

廃棄物が生物由来ならまだしも、プラのサーマルリサイクルも有り得るわけで、これを産廃として処理すれば、「プラスチック-リサイクル」の排出係数で算定するわけです。

他社が行えば算定し、自社で行えば算定しない、というのはダブルスタンダードだと思ってました。これも、GHGプロトコルに寄せて欲しかったです。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

敷地境界の概念は、気をつける必要があります。
SHK制度では、敷地内のみカウントするのに対し、GHGプロトコルでは、自社所有、あるいは、自社が事実上支配しているものであれば、全て算定。

例えば、SHK制度では、工場の敷地内を走るフォークリフトの排出量は算定しますが、公道を走る社用車の排出量は算定しません。敷地境界内の排出量しか算定対象ではないからです。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

なお、組織境界も異なりますが、これは単純に、GHGプロトコルが企業グループ全体かつ国内外問わず、ということだけなので、問題ないでしょう。

SHK制度では、バイオマスはカーボン・ニュートラルとして算定対象外なのですが、GHGプロトコルでは、直接排出には仕分けないものの、別途報告する必要があります。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

自家発による電力の他社への供給も要注意。

GHGプロトコルは、発電事業者と同じ考え方で、燃料の直接排出として算定し、売電したからといって、控除するという概念はありません。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

その他、細かい相違もあるのですが、個別具体的になってくるので、まずは、この程度を抑えておけば十分でしょう。


最後に、「調整後排出量」について、理解をしておきましょう。
調整する前の排出量「基礎排出量」も報告することになってますので。

第4回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会より

担当者でも、「知らなかった」ということがあるかもしれません。

GHG排出量の算定は、SHK制度やCDPの報告、TCFDに基づいた情報開示、SBTi認定など、多様な場面で必要になります。加えて、GXリーグ基本構想では、排出量取引制度の議論が始まっているところ。

もう、覚悟を決めて、腰を据えて、取り組んで行きましょう。
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