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CBAM 移行期間は移行期間〜しっかり勉強を

今年23年10月から「移行期間(Transition period)」が開始したCBAM。
第1回目の報告義務期限が来年24年1月31日に迫る中、対象セクター及びそのサプライチェーン企業は、その対応について準備を急いでいることでしょう。

5月から7月まで実施された、移行期間のみに適用されるルールに関する、コンサルテーションが実施された際には、寄せられたフィードバックを分析しました。

このときは、EU域外からのフィードバックに限って内容を確認しましたが、メディアが騒ぐほどのコメントは上がっていませんでした。

様々な意見が寄せられていましたが、次の5点に集約されていました。

1.機密情報の扱い
2.EU-ETSに対する不公平感
3.炭素価格の定義
4.緩和措置や移行措置、算定方法について
5.WTO違反について

ただ、文章でのフィードバックですので、企業・業界団体の「温度感」を感じることはできず、それぞれ、淡々とアピールしているだけのように見えていたということも否めません。

ですが、EU-Japan Centerが実施したウェビナーを視聴して、特に、鉄鋼セクターの「不満」をリアルに感じ取ることができました。

こちらのサイトに、動画のリンク及びプレゼ資料が掲載されていますので、是非ご覧頂ければと思います。

まとめると、次の5点。
フィードバックで挙がっていたものと同じではあります。(対応させました)

1.機密情報がインポーターに漏洩してしまう
2.EU-ETSよりも報告・支払義務における不公平が大きい
3.GX-ETSや炭素賦課金も考慮すべき
4.移行期間なのに罰則を課すのはおかしい
5.そもそもWTOに抵触している

ですが、重点を置いていたのは、1と4だったと感じました。
レジュメでは、上記以外にも、次のような訴求もされていますが、「とりあえず、言っておかねば」というレベルの扱いでした。

・EU-ETSが「設備単位」に対して、CBAMは「製品単位」
・CBAMには、支払を繰り越すEU-ETSのような「Banking」が無い
・EU諸国では、多岐に亘る税控除や補助金が支給されている
・検証費用及び期間に対する懸念

1については、確かに重要。

EUへ輸出する際は、インポーターを利用しますが、そのインポーターがCBAM当局とコミュニケーションすることになります。ですが、インポーターは、唯一の企業の製品のみを扱うのではありません。競合他社である場合も当然ある訳です。

報告する内容は、単純な「Embedded emissions」だけに留まらず、製造工程や原料(Precursor)、直接・間接の使用エネルギー量、製造拠点などなど多岐に亘ります。そのような、極めて機敏な情報が、インポーターに集約されるのです。

果たして、インポーター内に、相互の情報を遮断する「Fire wall」を設けることができるのでしょうか?

電力全面自由化のときに、旧電力事業者内でおきた、送電部門と小売部門間の情報漏洩を思い出してみても、「起きるのが当たり前」と想定すべきでしょう。

4についても、熱く語っていました。

双方が納得できるルールを構築するための、2年間の「勉強期間」であるはず。
算定ルールも曖昧で複雑、報告もEU-ETSの年1回に対して四半期毎。
「罰金とはけしからん」というのは、当然の反応ですね。

これについて、EU担当者からの明確な回答は無し。
まぁ、自分では判断できないでしょうから、何も言えないのでしょうが。

とはいえ、皆さん大人ですから、「バカヤロー解散」とはならず(笑)
鉄鋼連盟の「まとめ」をお持ち帰り頂いて、検討願うことになりました。

鉄鋼連盟レジュメより

なお、EU域外企業向けのガイダンスとテンプレートが、アップデートされています。CBAMポータルでは、この他、セクター毎のウェビナー動画や、各種資料、最新情報等が発信されていますので、定期的にチェックされることをお奨めします。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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