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セメントセクターガイドラインリリース(2)

GHG多排出セクター、セメントセクターのSDAをご案内しています。
1回目はこちら。

今回からは、内容について見ていきたいと思います。
まずは、目標設定ですね。

Step 1: 目標の境界とアプローチの決定
Step 2 : 排出量インベントリの算出
Step 3: 目標の設定
Step 4: SBTiへの目標提出

セメントSBTガイダンスより

これは全てに共通、何も言うことはございません。
続いて、バウンダリー(カバー率)です。

Near-term(短期SBT)
1.スコープ1・2 95%以上
2.スコープ3 スコープ3排出量が全体の40%以上→カバー率67%以上

セメントSBTガイダンスより

こちらもここまでは共通ですが、以下がセメントSDAの大きな特徴です。

セメント会社の短期SBTは、スコープ1・2・3排出量に占める割合に関わらず、購入したセメントとクリンカ(スコープ3のカテゴリー1「購入した商品とサービス」) からの排出を含むスコープ3目標を含めるものとする

この目標は、購入したセメントとクリンカからの直接排出と間接排出の少なくとも95%をカバーするものとする。

目標設定方法は、セメントSDA(購入したクリンカにもこのSDAを適用)とし、野心度は1.5℃、計算の分母は、購入セメントまたはクリンカ、あるいはクロスセクター絶対削減方法でなければならない。

セメントSBTガイダンスより

つまり、セメントとクリンカの製造による直接・間接排出量は、無条件に算定しなければならないということです。その排出量のカバー率は95%以上。

共通のルールにおける条件ありの場合でも、スコープ3排出量のカバー率67%以上のところ、カテゴリー1、それもセメントとクリンカのみですが、カバー率95%以上です。いやぁ、厳しい。

ですが、冷静になって考えると、この要求事項は極めて道理にかないます。
簡単に言うと、リーケージ防止ということですね。

SBTiは、このように説明しています。

この要求の導入は、購入したクリンカとセメントが自社で製造したものと同じ野心度であることを保証することを目的としている。これは、クリンカやセメントを製造するのではなく、購入するようになった会社が、スコープ1の排出量 は減少するが、目標が対象とするスコープ3の排出量は増加しないという「スコープリーケージ」のリスクを低減するものである。また、クリンカやセメントを主に購入する企業と、 主に製造する企業との間で、目標の境界と野心をより類似させることを推奨している。

セメントSBTガイダンスより

例えば、セメントやクリンカのメーカーは、製造による排出量は、自社の直接・間接排出量として算定しなければなりません。その排出量は馬鹿にならないほど多いはずです。

なので、それを嫌って自社製造から購買に変更した事業者がいたとしましょう。この要求事項がなかったら、ラクして自社の排出量を削減できてしまいます。自国でカーボンプライシングが導入されたから、他国生産に切り替えるのと同じような「抜け道」ですね。

なお、購入セメント及びクリンカの目標は、その他の目標とは区別して提出することが推奨されています。

当該セクターに投資している機関投資家はもちろん、知識のあるファンドは、「多排出セクター」であることは承知しているはずなので、明確に区別した上で、適切な目標を設定していれば、それがどの程度「野心的」なのかは理解してくれるはず。包み隠さず、オープンにしておきましょう。

ウェビナーでも、この点を重点的に説明していましたので、セメントSDAのキモであるのは確実。気合いも入っていました。

続いていきたいところですが、今回はここまでにしておきます。
まずはしっかり噛み砕いて理解しましょう。

次回は、目標設定アプローチについて説明していきます。
お楽しみに。

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