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GHGPガイダンスの現状把握

リリースが、24年の半ばに延長となっていた、GHGプロトコルの「Land Sector and Removals Guidance」。パイロットテストグループ及びレビューグループからのフィードバックから明らかになった課題が多く、対応に時間がかかるからという理由でした。

じゃぁ、今はどんな感じかなぁと思っていたら、今月タイミング良くSBTiがウェビナーをやっていたようで、視聴したところ、担当者が説明をしてくれていました。

とはいえ、6月末に開発の遅れを報告してすぐですので、これまでに判明していた内容と異なる点はありませんでしたが、さらっとご案内しますね。

最初に、気になるFAQを見ていきましょう。

ウェビナーレジュメより

やっぱり気になりますよね。
「データはどこから入手すればよいのか」って。

それに対する回答は「IPCCの排出係数やデフォルトデータ、Tier1データ及び参考にできるデータベースのリストが、ガイダンスのドラフト共にアップされているので、そちらを参照してくれと」のこと。

ガイダンスのサイトをスクロールすると「SUPPORTING DOCUMENTS」として紹介されている、こちらですね。

ですが、開いてみるとお分かりになりますが、膨大です。
紹介すればいいってもんじゃないと思ってしまいます。
温対法のように「これだけ使えばOK」にしてもらえないかなぁ。
とにかく、妥当なデータに辿り着くだけでめまいがしそうです。

個人的には、まずは、「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」の第5章「農業分野」と第6章「土地利用、土地利用変化及び林業分野」及び別添(Annex)7「NDCにおけるLULUCF分野の計上方法の詳細」を読むことをお奨めします。

noteで紹介しておりますので、参照されてください。

こちらは、UNFCCCインベントリ報告ガイドラインに則り、日本国のインベントリとして報告するものなので、算定の完全なお手本です。方法論まで含めて詳細に日本語で記述されているので、何とかなります。700ページを超えますけど。

2番目は、「情報のキャッチアップはどうするか」ですけど、単純にメルマガに登録してくれとだけ。親切なのかどうなのか、分かりませんが。

で、ウェビナーでFAQと表題を付けているのにたった2つだけ、というのが何なの?と思わずにはいられませんでしたが、それだけ、開発がテンパっているのでしょう。このセッションだけは、ライブではなく録画でしたから。


続いて、中身を見ていきましょう。
今回は、GHGプロトコル主催のウェビナーではなく、SBTiのFLAGウェビナーの中の1テーマでしたので、概念説明だけでした。

まずは、活動全体の俯瞰から入りました。

CO2が、大気・バイオマス・土壌・製品という4つの「カーボンプール」の間を「吸収源(Sink)」と「排出源(Source)」を通じて出入りしており、大気カーボンプールから、その他のプールへ取り込まれたCO2量が、吸収量(Removal)として算定されます。

Removalは、「吸収源を経由したGHGの移動」と「プール内での貯蔵」という2つの要素からなると定義されます。

なお、プールに貯蔵されても、すぐに放出されたら意味が無いですよね。
なので、6つの要求を満たす場合にのみ、信頼性のあるRemovalとされます。

森林が伐採されていないか、排出となる土地改変がされていないか、などなど、モニタリングが必要となる訳です。製品カーボンプールであれば、なおさらですね。

土地利用形態は、IPCCに基づき、以下の6種類に分類されます。

日本国温室効果ガスインベントリ報告書では、以下のように分類。

・森林
・農地
・草地
・湿地
・開発地
・その他の土地

土地管理については、CO2の「Removal」と「Emission」及び、non-CO2の「Emisssion」に分けて説明されていました。non-CO2の生体による吸収は想定していないということです。

大地ベースのカーボンプールという分類には、バイオマス・枯死有機物・土壌が含まれるとあり、土壌も、表面から2mmまでは「Belowground biomass」に分類されるようです。

製品カーボンプールの形態は、下記の4種類に分類。

原木や農産物などの生産物として始まり、その後、バリューチェーンを経て、加工や製造を経て半製品や中間製品、最終的には最終製品となります。

生物起源のCO2は、吸収量と排出量は、ネットでの報告と併せて、それぞれ単独でも報告することが要求されています。また、生物起源のCH4及びN2Oは、土地利用によるものではない排出として報告するとのこと。

ということで、ドラフト段階のガイダンスを、グラフィカルなスライドを参照しながら、ホントにざっと振り返ってみました。

FLAGの算定の困難さは、実際に着手してみないと分からないと思います。
前回のnoteでもご案内しましたが、何よりもその「困難さ」をさっさと実感しておいた方がよいです。私も支援を始めて気づきました。「こいつは大変だぞ」と。

なので、「まだ先の話だから」で済ませるのではなく、とりあえず、計算ツールを開いてみて、試しに数字を入力してみて、ということをやってみましょう。

基準年の排出量だけではなく、目標年の生産計画や、エリア別の調達量など、「こんなデータも必要なんだ」という気づきもあるはずです。

担当者だけが抱え込まずに済む、協力体制の構築に着手するのもよいかと。
一緒に頑張っていきましょう。

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