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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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#カーボン・クレジット

VCMに革命をもたらす10のイノベーション(4)

BeZero Carbonのレポートを、簡単な説明と、個人的見解を交えてご案内しているシリーズ、最終回。 前回までで1〜6まで紹介しましたので、今回は、残りの7〜10です。 よろしければ、こちらもご参照下さい。 10のイノベーションはこちらでした。 7. Insurance - giving the risk to people who want it クレジットを買う側からすると、これまでは、プロジェクトが実現するか、イニシャルのリスクが大きかったように思います。つ

VCMに革命をもたらす10のイノベーション(1)

クレジットの創生に東奔西走する私としては、捨て置くわけにはいかないタイトルのレポートを、BeZero Carbonが出していました。 BeZero Carbonは、独立したリスクベースでプロジェクトの品質を評価するカーボン・クレジット格付企業です。 専門のアナリストと独自のモデルにより、ライフサイクルのあらゆる段階に対するレーティングとリスク分析を行っており、その方法論や評価フレームワークが常に公開されていることから、個人的に期待しています。継続的に監視され更新されるのも

VCMのプラットフォーム〜ACX

VCMの動向をチェックするのにお世話になっているのが「ACX」 カーボン・クレジットの取引が全てウェブ上で完結するマーケットを提供する企業です。安全で信頼性が高く、堅牢なプラットフォームを提供、透明な価格設定、効率的な取引、決済リスクの軽減、低い手数料を謳っています。 皆さんご存じのように、ボランタリークレジットは、まだまだ相対取引がほとんどを占めているため、いくらで取引されたのかは分かりません。そこに、ACXのような、クレジット価格がウェブ上で確認できる市場の存在価値は

ETSとカーボン・クレジット市場は違います

このところ「カーボン・クレジット」という名称の知名度が上がり、「なんとなく知っている」という方が多くなってきたように感じています。 また、JPXがカーボン・クレジット市場を開設したために、株式と同じようにマーケットを通じて売買できるということを知った方もいるでしょう。 ですが、市場を通じて(もちろん、相対でもできますが)売買できる「カーボン・クレジット」全てが、EU-ETSを始めとする、ETS(Emission Trading Scheme)でも使用できると思っている人も

カーボン・クレジット〜How Much?!

株価を毎日チェックする人は数多いても、カーボン・クレジット価格をチェックする人は、果たしてどれだけいるのでしょうか。 私は、EUAとCORSIA適格ユニットのチェックは日課となっています。 10月31日現在はこちら。 ①がEU-ETSで取引されるクレジット「EUA:EU allowance」 ②がCORSIAで取引できるクレジットに基づいた指標(インデックス)です。 種類が何種類もあるので、その値動きに合わせて算出されるものです。 値動きは、こんな感じになっています。

アジアで勃興?!炭素市場

10月23日付の日経産業に、IETA(国際排出取引協会、International Emissions Trading Association)CEO、ダーク・フォリスター氏のインタビューが掲載されていました。 IETAは、国際的な排出取引の確立を目的とする国際的な協会です。ネットゼロ目標を達成するためには、高い信頼性を持つETSが必要という認識の下設立された非営利のビジネスグループであり、企業が気候行動に参加し、パリ協定の目的を進めるためのネットゼロの野心を追求することを

カーボン・クレジットマーケット元年

先月末、JPXが「カーボン・クレジット市場」の開設日を発表しました。 メディアが一斉に伝えましたので、皆さんもよくご案内のことでしょう。 2022年9月から2023年4月まで実施した試行事業では、実証参加者は183者、実際に注文したのは60者、売買が成立したのは55者だったとのこと。活況とは言えない状況ではありましたが、本稼働ではどうでしょうか。 取引対象は、当面はJ-クレジットのみですが、JCMやGXリーグの超過排出枠にも対象を拡げたいとしています。また、立会外取引も想