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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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#排出量

世界銀行のCPレポート 斜め読み(2)

世界銀行(世銀)が毎年リリースしている、「カーボン・プライシング・レポート」の2024年版が公開されたので、その内容を簡単にご紹介。 1回目は、導入で終わってしまいましたので、今回は、内容を具体的に説明していきたいと思います。 まずは、導入されている国・地域についてみてみましょう。 ICAPのレポートと同様、マップで示されていると分かりやすいですね。 世界では、75の炭素税及び排出権取引(ETS)が実運用されており、過去12ヶ月で2国・地域増加しています。この地図を見て

CBAM抜け道の指摘

先月のFTに、次のような記事が掲載されていました。 簡単に言うと、「現在のCBAMルールには抜け道があるから、目的・効果が達成できないばかりか、グリーンウォッシュも助長する」ということです。 記事では「溶解したものであれば、バージン・スクラップに関係なくゼロ排出とされることから、中国などの低コスト高排出の地域で生産されたアルミ製品が流入する可能性がある、と主張している」とあります。 「業界団体であるEuropean Aluminiumによると、EUの製錬所はアルミニウム

CBAM in motion(2)

2023年10月より導入が事実上確定したEUの炭素国境調整措置(CBAM)について、EY新日本有限責任監査法人が開催したウェビナーの資料を用いながら、内容について見ています。 1回目では概略の説明をしたところです。 2回目は、CBAMが及ぼす影響を、自分なりに考えたいと思います。 何と言っても「輸出業務が変わる」ことですね。 「当たり前だろ」と思われるでしょうが、当該業務に従事する方にとって「CO2排出量の算定」って未知の世界だと思います。 脱炭素に関する人材育成に

CBAM in motion(1)

EUの炭素国境調整措置(CBAM) が、13日、欧州議会とEU理事会がCBAMの導入について合意に達したことで、事実上導入が決定したことは、既にお伝えしておりました。 あとは、EU各国及び欧州議会において、セレモニー的な「採択(adoption)」が行われて最終決定となります。 詳細はどうなるのかなぁと思っていたところ、EY新日本有限責任監査法人がCBAMとCSRDについてのウェビナーを開催してくれたおかげで、かなり理解が進みました。 ということで、レジュメを使いながら

GHG削減待ったなしです

2023年に突入しました。 2022年は、4月にnoteを始めたのが、個人的に大きな進歩。 というのも、これまで、個人的な発信をほとんどしてこなかったからです。 もちろん単発的にはありましたが、継続したことがありませんでした。 ただ、お客様の脱二酸化炭素化、持続可能な研究開発、地域活性化等を支援していく中で、その活動のコアとなる部分はほとんど共通しており、繰り返しご説明する過程で、かなりの程度蓄積され、もっと活用できるようにしたいと思い、重い腰を上げたのでした。 具体的に

炭素国境調整措置の綱引き

これまでも、EUの炭素国境調整措置(CBAM:Carbon border Adjustment Mechanism)の話は何度かしてきました。 これについては、2方面で綱引きが発生しているようです。 1つめは:欧州議会環境委員会 VS 欧州議会 5月の欧州議会環境委員会では、CBAMの導入時期を26年から25年に前倒しする改正案を可決していたところ、導入とセットとなるEU-ETSの無償枠廃止の前倒し案が否決されたので、CBAM改正案も差戻となっていました。 6月22日

CBAMは「危機」なのか

ここまで引っ張るつもりがなかった、CBAMネタ。 書き出したら長くなって、3回目。 最後に、日本企業への影響について考えたいと思います。 まず、First Stageでの5セクターでは、影響は軽微だと思います。 CBAM導入に当たっては、保護主義的でない、国際ルールに反しないことに最大限の配慮を払う姿勢を見せています。 そのためには、製造における排出量が明確に区別され、対象となる製品に帰属される必要があります。それに基づき、CBAM certificate を納付すること