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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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2023年6月の記事一覧

カーボンプライシングとGX戦略(3)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、3回目です。 2回目では、「カーボンプライシング」の定義と「GX戦略」の内容について、簡単にご説明しました。「成長志向型カーボンプライシング」のロードマップもざっとご案内したところです。 それを踏まえた上で、どのように活用していけばよいのかを、一緒に考えて行きたいと思います。 中小企業の経営者であれば事業に直結しますし、大企業のサス担当であれば経営戦略に環

カーボンプライシングとGX戦略(2)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、2回目です。 1回目は、こちら。 まずは、耳にタコかもしれませんが、定義のお話を。 「Emission Allowance」という「権利」を「取引(Trading)」するものなので、個人的には「排出量取引」ではなく「排出権取引」であるべきというスタンスですが、政府がこのように表現するので合わせておきます。ちなみに、「排出枠取引」と言っているメディアもありま

カーボンプライシングとGX戦略(1)

最近、とみに聞く言葉ですよね。 noteでは「カーボンプライシング」については何度となくお伝えしているところ、「GX戦略」は知っているけど、その実あまり理解できていない、そんな方もいらっしゃるかと思います。 かく言う私も、熟知している訳ではありませんが、関係については理解しているつもりです。簡単に言うと、「一度で二度美味しい」施策です。 個人的には、「やらないと損」どころではなく、「ダメージ」を受けるレベルだと考えています。なので、常々、このようにご案内しています。 そ

日本のクレジット市場 一歩前へ

皆さん、「BeZero Carbon」ってご存知ですか? このnoteでも、繰り返し「高品質なクレジットとは何ぞや」についてご案内してきました。どのような資質を備えていれば「高品質」なのか。どうすれば、ウォッシュの誹りを免れるのか。 元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏らが、ボランタリークレジット市場の拡大を目指して2020年に設立した「TSVCM(Taskforce on Scaling Volungtary Carbon Market)」傘下のICVCMが今年公

インドETS、念願なるか?

排出量の多い製品の輸出入に対する措置として、EUがCBAM、USがCCAという制度を導入、綱引きの様相を呈している旨を、前回お届けしました。 EUのCBAMであれば、EU域内では排出枠を購入しなければならないので、域外で製造して輸入しようという事業者に対し、「出ていってもいいけど、輸入するときにはCBAM証書を購入する必要があるからね」というもの。 いわゆる「リーケージ」を防ぐ手段です。 代わりに、今まで「出ていかないでね。その代わり、無償で排出枠を割り当てるから」とい

非化石価値取引結果 22年度第4回

22年度第4回目(約定は23年5月24日)の非化石価値取引市場の取引結果が、JEPXから25日公表されました。 約定量を見ると、FIT非化石証書は順調に増えているのが一目瞭然。 こちらは、取引開始からトラッキング付きですので、RE100に使えますし、もちろん、温対法の報告において、他社から購入した電力量より差し引いて、調整後排出量として報告することも可能です。 そもそも、海外と比較して、再エネ電力の調達手段が限られている中、使い勝手がよい手法として認知が進み、かつ、小売