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目指せネットゼロ、世界は既に動いてる

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2050年カーボンニュートラルを政府が打ち出す前から、すでに、世界は動いていました。「やるか、やらないか」ではありません。「いつやるか」です。そのために必要な情報を、提供していき…
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#クレジット

クレジットのおさらいをしておこう(3)

政府が、22年6月にリリースした「カーボン・クレジット・レポート」を利用して、クレジットのおさらいをしています。 サステナ関係は目まぐるしいスピードで変化するため、参照する情報には気を遣いますが、クレジットに関しては国内では右に出る者はいないという方々を委員に迎えた検討会を実施、その成果物として大本営がまとめたものですので、このレポートに基づいて理解しておけば間違い無いでしょう 1回目は、コンプライアンス・クレジットとボランタリー・クレジットの区別、及びボラクレのプログラ

クレジットのおさらいをしておこう(2)

政府が21年の年末から22年6月にかけて「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」を6回開催。その成果物としてまとめた「カーボン・クレジット・レポート」を利用して、クレジットのおさらいをしています。 前回は、コンプライアンス・クレジットとボランタリー・クレジットの区別、及びボラクレのプログラム(スキーム)についてご案内しました。 今回は、プロジェクト(方法論)の種類についてご案内していきます。 上図のように、大き

クレジットのおさらいをしておこう(1)

カーボン・クレジット・エバンジェリストとして(?!)、何度となくご案内してきましたが、話題になればなるほど、「最近知りました」という方が次々と現れ、同じ説明を繰り返すことも多くなってきました、 なので、ここでもう一度、簡単におさらいをしておこうと思います。 と言っても、一から説明するのも難しいし、さりとて、適切な参考資料もあまり見当たらない。そんな時に頼りになるのが、大本営がまとめた「カーボン・クレジット・レポート」 既に古くなった情報もありますが、クレジットの本質的な

Verraの「Scope3 Standard Program」に期待(3)

CDPとBCGによる、23年のCDP質問書回答を分析したレポート「Scope3 Upstream: Big Challenges, Simple Remedies」で明らかになった、スコープ3排出量算定の課題について、2回に亘ってお届けしています。 前回はこちら。 今回は、その課題に対し、Verraが「Scope 3 Standard Program」を推進しているのですが、その効果について話をしていきたいと思います。 「Scope 3 Standard Program

カーボン・クレジットの種類について

カーボン・クレジットについて説明する際は、無難で安心できる出典として、経産省の「カーボン・クレジット・レポート」を参照しています。 レポートによると、カーボン・クレジットは、次のように分類されるとあります。(本文は文章ばかりで分かりにくいので、概要を使って説明します) このように、「排出回避/削減」クレジットと「固定吸収/貯留」クレジットと、大きく2つに分かれます。前者は「削減回避系」、後者は「吸収除去系」とも呼ばれており、今後はこちらで表現しますので、ご承知おき下さい。

GX-ETS制度設計始動(1)

政府は、GXの実現に向け、成功志向型カーボンプライシング構想の具体化を進めていますが、2026年本格稼働を前に、GX-ETSの具体案に関して、有識者や産業界の意見を踏まえた検討を行うWGを設置。その第1回会合が、9月3日開催されました。 内閣官房は、金融庁のようにライブ配信のみで無くアーカイブを残してくれるし、環境省のように資料のアップロードが遅いということもないので、好感が持てます。経産省(エネ庁)も同じ感じですね。 個人的には、非常に期待しています。 というのも、委

カーボン・クレジットを活用していこう

カーボン・クレジットに関しての質問を非常に多く受けるようになったこの頃、まずご案内しているのが、経産省の「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」がとりまとめた「カーボン・クレジット・レポート」です。 21年の12月から22年3月までの3回の検討会でドラフトを公開、5月までのパブコメを経た後、第4回検討会でファイナライズ、6月に公開されました。 社内での説明には、第4回検討会の資料に含まれている概要が使いやすいです

SBTi Scope3 discussion paper の衝撃?!(1)

7月30日、SBTiが、Corporate Net-Zero Standard(CNZS)の改訂プロセスの初期段階として、4つの技術的成果を発表しましたが、このニュースで、サステナ界隈が少しザワザワしているように思います。 リサーチした訳ではありませんが、ポジティブな意見には、強い肯定的な感情を示すものが多かった一方で、ネガティブな意見は、比較的穏やかなトーンで表現されている傾向かなと。 地域としては、欧米企業やNGOからの発言が目立ち、アジア地域からの発言は比較的少なか

Additionalityに基づくICVCMの判断

ICVCMが、既存の再生可能エネルギー方法論に基づいて発行されたクレジットに対して、CCPラベルを付与しないことを発表しました。 CCPラベルとは、「高品質なクレジット」の証左とも言えるラベルで、次の2つのレベルで認証が行われます。 簡単に言うと、CCP-Eligibleは、クレジットプログラム(VCS、GS、ARTのようなボラクレスキーム)を認証するものであり、CCP-Approvedは、方法論(森林吸収やバイオ炭などのプロジェクト)を認証するものです。 詳細について

クレジットを安心して購入したい

これまで、何度か、クレジットが一般の商品になってきたという話を、noteでご案内してきました。 ここで、クレジットの普及へ向けて、開発・導入されているサービスをまとめておこうと思います。具体的には、次の5つかなと。 それぞれ説明していきますね。 「1.レーティング」はクレジットの「格付会社」。 例えば、「BeZero Carbon」が挙げられます。 株式と同じで、詳細な情報を入手するには契約が必要ですが、後ほど説明するACXとコラボしていているので、ACXが毎週リリー

クレジット活用の強い味方(2)

前回から、購入を後押しするクレジット向け保険の紹介をしています。 今回は、Swiss Re Corporate Solutionsとgoodcarbonが共同で立ち上げた、「保険対象クレジットの現物交換を提供する初の長期炭素クレジット購入保険」の紹介から。 この保険は、「高品質の炭素クレジット供給へのアクセスを提供するだけでなく、重要な生態系や脆弱なコミュニティに恩恵をもたらす自然ベースのプロジェクトへの資金流入を容易にする」ものだそうです。 なお、goodcarbon

中小企業の脱炭素経営状況は?

日本商工会議所と東京商工会議所が共同で「中小企業の省エネ・ 脱炭素に関する実態調査」を実施し、レポートを公開しておりました。 個人でコンサルしておりますので、非常に助かります。 検証人としては「エビデンスに基づいて」と呪文のように唱えておきながら、他方では何の根拠も無く現状を論じることはできませんから。 で、内容はというと「想定内」でした。 が、それを確認することも重要。 検証時「少量なので算定対象外にした」との説明を受けることも多いのですが、「少量の定義(例えば全体の

クレジット活用の強い味方(1)

2年前、NCSAが、6つの森林吸収プロジェクトを「Lighthouses」に指定したことをご紹介しました。NCSA(Natural Climate Solutions Alliance)は、自然気候ソリューションと炭素市場への投資の機会と障壁を特定することを目的とした、マルチステークホルダーグループです。 Lighthousesは、「灯台」という名前が示すとおり、指定されたプロジェクトは、NCSAの厳格な基準に合致しており、実施地域の自然資源、生活環境の保全・改善に寄与する

パリ協定 第6条クレジットの現状(2)

AlliedOffsetsのレポートについて、お届けしています。 前回は、こちらです。 さて、第6条クレジットに関して注目すべき動きがあったのは、ルワンダ、ガイアナ、タンザニアの3カ国でした。 ルワンダは、GSとVerraによって認証されたクレジットに対して最初の認可書(LOA)を発行。 両者とも、前回ご案内したように、創出が容易な「クックストーブ・プロジェクト」です。 ちなみに、LOAとは、ホスト国がその国内で行われるカーボンオフセットプロジェクトを公式に承認し、そ