持ち込みデータの解析

 データ持込みで解析してヨ という依頼をしばしば受けることがありました。その昔は、まさに自分の仕事であって、時にマーケターより先に新発見ができるので、むしろ楽しみでもありました。でも困ったなぁと思ったこともしばしば。

 まず、データが依頼者が想定する解析に合わない形になっている場合。例えば、コレスポンデンス分析をやってと、持ってきたデータがスケールになっていた⤵とか。しかしながら、こういうときこそ引き出しの見せ所。データを加工したり、代わりとなる方法に切り替えたりして、近しいものにしてお返ししたものでした。

 さらに困るのは、データの素性がわからない場合。具体的に言えば
 ・どのような条件の人たちから
 ・どのような方法で得られたのか
 定かでなく、そのデータから知りたい対象を知りうるか不明な場合です。その昔、私がまだ若かった頃は、そんな素性のわからないデータは受け取れない!誤った判断をしかねない!!と、つき返したこともありました。

 でも年齢を重ね、そのまま受け取るようになりました。データを持ち込んできた人は、お金や時間をかけて取得したデータから、何かを出すことを命じられてきたのです。そこで私が原理原則を振りかざしてつき返しても、その人が困るだけだからです。


 でも素性の定かではないデータから得た結果を、そのまま受け容れたものか、よくわかりません。そこでマーケッター諸氏に尋ねるわけです。「こういう結果になっていますが、さもありなんですか?」と。これでマーケターの感覚と一致しているのなら、たぶんそれでいいのでしょう。是か非かは別として、マーケターが言いたいことを示すために調査データが使われるという向きがほとんどでしょうから。
 ところが、マーケターの感覚と違っていたら話はややこしくなります。データがおかしいのか、マーケターの認識がずれているのか、判別できません。幸か不幸かそれであれこれ議論した経験はあまりなかったのですが、実はこっそり(データを解析したこと自体)無かったことに、なっていたこともあったのでしょうね。

 このような依頼・要請にあたっては、まずどういう条件の人たちにどのような方法・状況で得たデータなのか、その説明からお願いしたいものですね。それによって不適切なデータであることが判明したとしても、上述の通り、つき返したりはしません。持ち込んできた人は何か持ち帰ることを命じられているわけですから。ただし、結果に潜む判断を誤るリスクは説明します。

 でもそれより、こういう解析・分析をしたいのだけど・・・と、調査実施前にご相談いただきたいと常々思っておりました。調査対象者の条件設定や、調査方法、質問の形式を考えるところから関わりたいものです。よいデータだからこそ、意味ある結果が得られる。ゴミデータだったらどんな高等な手法で解析しようと、所詮ゴミにしかならないとよく言われるところ。

 そうならないためにするのが「調査設計」というものなんですが、特別なツールを使うわけではなく、結局のところppt かWord で作成した数枚の文書でしかありません。大したことではないと思われているようです。「調査設計“くらい”はできます。」と宣う(特にリサーチの訓練を受けているわけではない)マーケターも多数。これがリサーチ現場の悲しい現実です。

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