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メニカンbiweekly #3 ばらばらの物語をつなぐ道 −三部作を成立させるものについて−

執筆: 福留 愛

先日、イランの映画監督 アッバス・キアロスタミ(Abbas Kiarostami)による「The Koker Trilogy (a.k.a ジグザグ道三部作)」を観ました。映画の三部作というものを今まで観たことがなかったので、何をもって”三部作”というものが成立するのか気になって観始めました。

3作ともカスピ海近辺のコケールという街が舞台で、時間は1作品目→2作品目→3作品目の順に流れ、2では1がフィクションであること、3では2がフィクションであることが描かれています。フィクションが入れ子状になることで前作がネタバラシされるため、1作品ごとに物語は完結していますが、全ての作品にジグザグ道が登場することによって3作がまとまりをもって見えてきます。

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図1 各作品のジグザグ道シーン(筆者作成)

ジグザグ道は、誰かが誰かを追いかけるとき登場します。
1作目『友だちのうちはどこ? 』(1987年)では、友達の宿題を間違えて家に持ち帰った少年が、その友達を隣町まで追いかけ(図1-1)、2作目『そして人生はつづく』(1992年)では、1作目の主役の少年を監督が追いかけ(図1-2)、3作目『オリーブの林をぬけて 』(1994年)では、青年が愛する人を追いかけます。(図1-3)

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図2 ジグザグ道シーンの重ね合わせ(筆者作成)


普段、建築を考えるとき、一つのかたちの中にもなるべく多くの物語が存在できたらなと思っています。このジグザグ道はかたちを変えずに、作品によって大きさを変えていく。個々の作品で描かれる繊細な物語はそれぞれで完結しているけれど、3作つなげて観てみるとおおきな一つの物語にも見えてくる。そのような大らかなかたちのある建築をつくることができたらいいなと夢は広がります。

メニカンbiweeklyの私の担当回では内容はあまり固定せず、自分が書くタイミングでちょうど考えたことと、考えるきっかけになったことを書いていけたらと思います。


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