俳並連vsプレバト連合 完全版

こんにちは、コンフィと申します。
今回は、12/2に結果発表を行った俳並連vsプレバト連合の完全版になります。
よろしければスペースも録音してありますので私のXから是非ご覧ください!
出場者はそれぞれの試合でお名前を、審査員はいかちゃんさん、山本先生、嶋村らぴさんにお願いを致しました。審査員の方からいただいた評価の方は、文体などの微調整だけいれてできる限り頂いたまま載せております。
結果表示については敬称略とさせていただきます。

ルール 5人vs5人の団体戦、審査員は良い方の句に必ず10点をつける。合計得点の高い方の勝利。

今回の兼題

先鋒戦
俳並連 栗田すずさん
牛肉の半額を待つ葱一把
vs
プレバト連合 たーとるQ
あきかぜをほらソーセージちゅうぶらりん

嶋村らぴ
7vs10 たーとるQ
山本先生
8vs10  たーとるQ
いかちゃん
8vs10 たーとるQ
合計
23vs30 たーとるQの勝利

審査員の評価


いかちゃん

すずさんの句は、季語「葱」の主役感がもう少し欲しかったですね。「待つ」が「葱」に繋がっているように見えてしまう構造も、できれば回避したいところです。
対してたーとるさんの句は、まずこういう光景を面白がれる感性がとても魅力的で、言葉のチョイスや表記の仕方などの狙いがスベらずに成功していると思いました。個人的には、「ほら」がちょっと面白くしすぎてしまった感があり、ここだけ気になりますが……。じゅうぶん良い句だと思います。

山本先生

良い勝負でした。
すずさんの句は実感があり景がよく見える、よくできた句です。半額シールが貼られるのを待つ状況に俳諧味があり、下五に時候の季語などではなく、モノを取り合わせる判断もよかったと思います。強いて言うなら、食べ物に食べ物を取り合わせるのは難易度が高く、季語が主役に立っているかという点で若干損をしてしまったかもしれません。
たーとるさんの句は攻めているのに破綻していない、企みが成功している句です。干されて風に揺れるソーセージというモノを小さく切り取り、非常に映像的な句になっています。「ちゅうぶらりん」というどこかマイナスなイメージも含む言葉が「あきかぜ」の寂しさとも響き合います。評価の分かれ目は「ほら」ですが、この一語によって、このソーセージを指さす人物まで見えてくる、テクニカルで効果的な選択でした。

嶋村らぴ

まずたーとるさんの句の「ほら」は本当に必要なのか(音数調整だけの二音になっていないか)考えました。結果「必要」と判断し今日の私はたーとるさんの句を選びました。この「ほら」は、切れ字と言うと語弊があるかもしれませんが映像のカット(またはモーションブラーなどのような効果)を生み出している気がしたからです。感覚的な説明で申し訳ないのですが「あきかぜをソーセージ」より「あきかぜをほらソーセージ」の方が、自然に視点移動出来る気がしませんか。
すずさんの句も、本当によく出来ているなと感じました。私じゃなかったらこちらの句を選んでいた可能性はすごく高い気がします。この句の惜しいと思った点は「牛肉」である必要性です。確かに牛肉高いけどね。本当に作者は葱と一緒に牛肉の半額を待っていたのかもしれないけど、作品として二つの句を並べて「ほら」の必要性と「牛肉」の必要性について考えた時に「ほら」に軍配が上がってしまった…というのが勝敗を決めた理由です。

次鋒
俳並連 閑々鶏
ステーキ肉叩く夜寒の台所
vs
プレバト連合 北川颯
寒夕焼崩れて屠殺場の跡

嶋村らぴ
10vs6 閑々鶏
山本先生
8vs10 北川
いかちゃん
10-9 閑々鶏
合計
28vs25 閑々鶏の勝利

審査員の評価

いかちゃん

閑々鶏さんの句は、「ステーキ」「台所」を省略してもっと踏み込んだ表現をする余地があるものの、句意は明瞭で季語も無理がなく、成立はしている一句です。
対して北川さんの句は、「崩れて」が分かりづらく、表現が結球しきれていない印象を受けます。語順も逆のほうが良いでしょう。ポテンシャルは北川さんのほうがかなりあると思います。

山本先生

好カードでした。
閑々鶏さんの句は句またがりのリズムもよく、言葉に無駄のないよくできた句です。響く音がありありと思い浮かび、そこに一抹の不穏さも感じられますね。あえて指摘するとすれば、「夜寒」という季語がやや予定調和になってしまったことです。時間帯や温度感がその季語でベストだったのか、いろいろと季語を動かしてみるとよいでしょう。
北川さんの句は対照的に季語が生きていました。ここが勝敗の分かれ目です。「崩れて」という心象的な描写に対して、映像的な「屠殺場の跡」というおさえが上手いです。そして読み下した時の「寒夕焼」と「屠殺場の跡」のコントラストが儚くも美しいですね。

嶋村らぴ

閑々鶏さんの句は十七音に無駄がなく明快で良いと感じました。「叩く」という動作によって発生する音が「夜寒の台所」に響くような心地、「ステーキ肉」を叩いた時の触覚も伝わってくるような気がしました。「夜寒」という季語選びで場所の空気感や生活感が想像できるのも良いなあと感じました。今回の句の中でも好きな句です。
北川さんの句も描きたいと思う情景や句材は良いと思いました。「寒夕焼」と「屠殺場」の赤の繋がりは良いと思います。ここは感想が分かれる気がしますが「崩れて」は個人的にはやりすぎな印象を受けたのと、「崩れて」は良いとしても語順はこれで正解なのだろうかと気になり、閑々鶏さんの句と比較した時に選べませんでした。

中堅
俳並連 丁鼻トゥエルブ
オリオンやセドナの海を猛る銛 
vs
プレバト連合 京野さち
紅葉かつ散るドネルケバブの削がれゆく

嶋村らぴ
5vs10 京野さち
山本先生
8vs10 京野さち
いかちゃん
8vs10 京野さち
合計
21vs30 京野さちの勝利

審査員の評価

いかちゃん

丁鼻トゥエルブさんの句は、「オリオン」がギリシャ神話、「セドナ」がイヌイットの神話ということで、ぶつかり合ってしまう点が気になります。さらにこのぶつかり合いは、後半の措辞があるぶん「セドナ」のほうが勝ってしまう気がします。季語が変わるだけでものすごく良い句に変貌しそうです。
京野さちさんの句は、取り合わせ一本勝負であり、「紅葉かつ散る」と「ドネルケバブ」が響くかどうか、賛否両論でしょう。僕は、響いていると思いました。食肉にとって、焼き上がる瞬間は美しさのピーク。そして焼き上がればすぐさま削がれて落ちる。そのくり返し。まさに「紅葉かつ散る」料理です。「削がれゆく」は料理の内容に既に含まれているので、いっそ省略するか、+αの描写をするか、一考の余地はあるかもしれませんね。

山本先生

対照的な2句でした。
丁鼻トゥエルブさんの句は神話の世界観のある句。イメージの世界の句ですが、措辞に負けない「オリオン」の置き方が良かったです。「猛る銛」はやや唐突で分かりづらい印象です。
京野さちさんの句は実景としてよく分かる句です。「紅葉かつ散る」という難しい季語にチャレンジした姿勢も「ケバブ」との取り合わせも良いですね。もったいなかったのは「散る」と「削がれゆく」という言葉のイメージがどうしても重なってしまう点です。いわゆる「近い」というやつで、そこに意味通り過ぎると読者は「理屈」を感じてしまいます。違うケバブの描写が見付かるとさらに良い句になるかと思います。

嶋村らぴ

丁鼻トゥエルブさんの句の「セドナ」は検索して出てくるのはアメリカの地名ばかりです。「セドナの海を猛る銛」と聞けば、アメリカのセドナではなく海の女神のセドナなのだなと想像は可能なのですが…。ただそこまでしないと「セドナ」が見えてこないのは十七音しかない俳句にとっては大変不利な事だと思います。「オリオン」はあくまでも星の事ではありますが、わざわざ「オリオン」と呼ぶならばどうしてもギリシャ神話の狩人のイメージもついて来ると思います。ギリシャ神話とエスキモー系先住民族の神話…。季語と季語以外の言葉がお互いに強すぎて、お互いの良さを消し合っているような印象を受けてしまいました。「冬の星」なら見え方が変わってきたかもと思います。
京野さちさんの句は全ての句の中で1番好きな句です!「紅葉かつ散る」と「ドネルケバブ」の取り合わせにまず圧巻。紅葉が進みながら散りゆく姿と、焼かれながら削がれていくドネルケバブの対比。何より紅葉の赤とドネルケバブ(肉)の赤の対比。赤には色々なイメージが色彩心理的にあるのですがその中に「食欲増進」があるとされます。そう、食欲の秋。削がれていくドネルケバブ、絶対美味しそうじゃないですか。まさに「紅葉かつ散る」。また「散る(RU)」「ドネル(RU)」「ケバブ(bU)」「削がれ(Re)」「ゆく(kU)」の音のバランスも良いなと感じました。 やはり俳句は声に出した時の音の良さが1番。食べ物の俳句も美味しい句が1番。そう感じた句でした。すごい!

副将
俳並連 平良嘉列乙
年の瀬や牛の死を磨き枝肉
vs
プレバト連合 ギル
肉捏ねて光が秋の手に凝る

嶋村らぴ
5vs10 ギル
山本先生
10vs9 平良嘉列乙
いかちゃん
8vs10 ギル
合計
23vs29 ギルの勝利

審査員の評価

いかちゃん

平良さんの句は、内容的に破調であることは良いとしても、さすがに584というリズムは読みづらく、これが最も気になります。ほか、「○○した結果○○になる」という散文的な叙述、「死を磨く」という表現が掴みづらく「枝肉」の意味の説明の域を出ていない点、家畜の死という重いテーマを季語が受け止めきれていない点など、気になるところが多いです。
ギルさんの句は、こちらも「○○した結果○○になる」という散文的な叙述は損でしょう。また、「手」ではなく「光」に「秋」を感じたのでは?と思うのですが……。「秋の手」は本当に表現意図に適っているでしょうか。

山本先生

詩的な完成度の高い2句でした。
平良さんの句は「牛の死を磨き」という詩語が光ります。そこからの「枝肉」という着地に納得感があり景も立ち上がります。また、「年の瀬」という季語も、食肉をつくる仕事の現場が思われ、効果的に働いています。
ギルさんの句も「光が手に凝る」という書きぶりに詩的なリアリティがあり素晴らしいです。一点気になったのは、この句で言いたいことが「秋の手」なのか、ということです。「秋の光」としてしまうと、「秋の景色」という意味にもなるので避ける意図は分かりますが、それをふまえてでも「秋の光」が「手に凝る」とした方が、得が大きいように思います。


嶋村らぴ

これは本当にたまたまなのですが枝肉加工現場の映像(社外秘)を見る機会がありました。「年の瀬」という季語について、本当にぴったりだなと視聴後感じました。枝肉加工現場とは、労働の現場です。今日も何処かで誰かが、今日を生きるために肉を捌いて生活をしている。(そして私達消費者は、捌かれ精肉された肉をスーパーで買い、食べて生活をしている。)すごいですよ、本当職人です。
映像を見る前は平良さんの句の中七下五のリズムの悪さが気になっていたのですが、この悪さも良さだなと現場を見て考えを改めました。しかしその上でこの句は選びませんでした。理由は「牛の死を磨き」は「枝肉」の説明で終わっている印象を受けたからです。「年の瀬」と「枝肉」の取り合わせが素晴らしかっただけに残念です。
ギルさんの句は、たぶん出来る人の句だと思うので「もっとこの人なら出来るでしょ」という気持ちがたっぷりです。「凝る」を使うあたり。上五は本当に「肉捏ねて」で良かったのか(肉を捏ねる行為自体を否定している訳ではなく、言葉の選び方として吟味した上で選んだのか)くらいです。気になる所は。あとはにくいくらい秀句。肉だけにね!

大将
俳並連 ヒマラヤで平謝り
鶏頭やおまけのメンチカツひとつ
vs
プレバト連合 着流きるお
肉ケーキ運ばれてくる聖夜の宴

嶋村らぴ
10vs6 ヒマラヤで平謝り
山本先生
10vs8 ヒマラヤで平謝り
いかちゃん
10vs9 ヒマラヤで平謝り
合計
30vs23 ヒマラヤで平謝りの勝利

審査員の評価

いかちゃん

ヒマラヤさんの句は、「おまけ」とあれば「ひとつ」は想像できる範疇にあるので、その3音分を、取り合わせの意図を伝える描写に使いたいところです。
きるおさんの句は、「運ばれてくる」とあれば「宴」は言わずもがな。「肉ケーキ」に驚きがあるので、これを上五でネタばらししてしまったのも損です。
僅差ですが、きるおさんのほうが気になる点が目立った感じです。

山本先生

悩みました。両者とも題材がとても良い反面、この言葉は必要か? と指摘せざるを得ない点がありました。
ヒマラヤさんの句では「ひとつ」です。まず良い点は、「おまけのメンチカツ」ですね。日常の中でのちょっとした幸福、特別感が伝わってきます。「鶏頭」との取り合わせも季節感や字面など、魅力があります。「ひとつ」は、実感はありつつも、やはり言わなくてもわかるのではないかとも思ってしまいます。「メンチカツ」「ひとつ」の「つ」の韻は声に出すと気持ち良いですが。
きるおさんの句では「宴」がもったいないと感じました。「肉ケーキ」「聖夜」とくれば、「宴」であることはそのまま想像できます。ここは素直に「聖夜かな」と詠嘆してみてもよかったのではないでしょうか。もしくは意外性を持たせて「クリぼっち」とか。(真に受けなくて良いです。)とはいえ、「肉ケーキ」と「聖夜」という取り合わせ、題材は魅力的でした。

嶋村らぴ

ヒマラヤさんの句は基本の型としてとても良く纏まっているのと「鶏頭」と「メンチカツ(肉)」の距離感が良いと思いました。特に「おまけのメンチカツ」とした事で、商店街の買い物の風景のような賑やかさを背景に感じられたのがこちらの句を選んだ大きなポイントです。
きるおさんの句も楽しい雰囲気が伝わってきて、悪いとは思いませんでした。「肉ケーキ」も検索すれば出てきますし「聖夜の宴」との距離感も私は気になりませんでした。それよりも中七の「運ばれてくる」は本当に必要だったのかが気になりました。もっと言えば「てくる」の三音です。三音あれば「聖夜の宴」にもっと比重を置けそうな気がして、今回はヒマラヤさんの句を選びました。

最終結果
合計得点
125vs137 プレバト連合の勝利!

審査員それぞれの最優秀句
いかちゃん
紅葉かつ散るドネルケバブの削がれゆく 京野さち

山本先生
あきかぜをほらソーセージちゅうぶらりん たーとるQ

嶋村らぴ
紅葉かつ散るドネルケバブの削がれゆく 京野さち


結果発表本編はこちらで以上です。ここからは私コンフィがこの大会を少し語るおまけパート!!!!このパートは有料です!!!!



、、、、、なんて事言ったらきるおさんとヒマラヤさんにお金ではなくトマト投げつけられそうですね💦

もちろんお金なんて取るはずがございません。

こちらのパートではおまけとしてこの大会について主催として、そして一鑑賞者として少しお話ししていきたいと思います。

①コンフィの選ぶ最優秀句

鶏頭やおまけのメンチカツひとつ ヒマラヤで平謝り

この句、実は10人の中で1番最初に届きました。そしてこの句を見て、今回の大会が面白くなる事を私は確信しました。審査員の方々がおっしゃる通りひとつは議論するべき点であるのは間違いないです。もしかしたら俳句的にはこれ以上に適する表現があるかもしれません。
しかし、私はこの"ひとつ"は作者の世界観を作り上げる上で中々外しづらい言葉でもあるのかなと思います。おまけでもらった紙袋に入ったメンチカツをひとつ、宝物のように受け取る。私には効果的に映りました。

②兼題写真について
ホノルルのアラモアナセンターで撮りました。アメリカのお肉はスケールが大きく大好きです。発想が広げやすく、かなり詠みやすい兼題だったと思います。皆様もぜひ一句、、、

③参加はしたくなかったの???
正直めちゃくちゃ参加したかったです。ですが、自分は主催を貫く方がスムーズに運営できると判断したのが1番の要因ですね。あとは、自分が主催というポイントを抜きにしたときに、どちらのチームにも自分が選ばれるとは思えなかったのもあります。それだけ今回は素晴らしいメンバーに集まっていただきました。

最後に

こういった企画は、様々な方のご協力あってのものです。審査員の方々には無償でありながら大変質の高い審査をしていただき、参加者の素晴らしい俳句なくして大会の成功はありませんでした。とくにきるおさんとヒマラヤさんはほぼ運営側のように手伝っていただきました。
"主催頑張ったね"なんて言葉もいただきましたが、私が頑張るのは当たり前なんです。やりたい企画を好きなようにやるのだから。
これからもそれぞれがそれぞれの俳句人生を歩みます。何年後かに、こんなのやったなぁ〜と思い出していただければ私は嬉しいです。

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