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読書録:ハリケーン 高嶋哲夫 幻冬舎文庫

超大型台風が上陸し、気象庁の田久保は進路分析や避難勧告を出すために奔走。関東で土砂災害が次々と起こり、田久保の家族も巻き込まれる。妻や子どもが逃げ込んだ避難所自体が危険な地盤上にあったのだ。田久保はさらなる非難を促したが、風雨が激しく、遂に斜面が崩れる……。自然の猛威に翻弄される人間の焦燥と葛藤を描く旋律の予言小説。
引用:ハリケーン 高嶋哲夫 より

時間 2時間程度

高嶋哲夫さんというと、「メルトダウン」や「TSUNAMI 津波」といった作品のように災害がテーマの作品を思い浮かべると思う。

今回の小説も上記引用にもあるように、災害の話がメインかと思って読み進めると少し驚いてしまう。

主人公田久保と妻・息子、そして自衛官 中村のそれぞれが抱える悩みにフォーカスされストーリーが進んでいく。8割はその悩みや葛藤といった人間臭さを感じる内容。

私が刺さるくらいよくわかるのが、田久保の妻の話。彼女は大手広告代理店でプロジェクトリーダーを務めるなどエリート中のエリート。しかし案件のミスを押し付けられ脱落する。一生懸命さがあるものの、自分の主張ばかり、周りが見えないといった人間はどこにでもいる。自分の考えだけで物事をすべて決めてしまい、例えばプロジェクトに関わっているメンバーの意見に耳を傾けず反発を食らったり、それでも強引に推し進める描写は、彼女の息子のエピソードにもつながる。

災害物だという認識で読むと拍子抜けしてしまうし、賛否両論があるストーリー。だが、ヒューマンドラマとしてみると結構おもしろいなと感じた。


最期までお読みいただきありがとうございました!