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Eugenの備忘録その52-11/18 大野和士指揮新国立劇場ヴェルディ《シモン・ボッカネグラ》

大野和士指揮新国立劇場
ヴェルディ:《シモン・ボッカネグラ》

シモン・ボッカネグラ:ロベルト・フロンターリ
アメーリア(マリア・ボッカネグラ):イリーナ・ルング
ヤコポ・フィエスコ:リッカルド・ザネッラート
ガブリエーレ・アドルノ:ルチアーノ・ガンチ
パオロ・アルビアーニ:シモーネ・アルベルギーニ
ピエトロ:須藤慎吾
隊長:村上敏明
侍女:鈴木涼子
合唱指揮:冨平恭平
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 タイトルロールのフロンターリは父の愛と総督としての苦悩を見事に演じ切る。とりわけパオロに毒を盛られて以降、体力や記憶が衰える中で娘たちを祝福する様は余りに切ない。アメーリアのルングは登場からひたすら繊細な表情。ガブリエーレのまっすぐなキャラをルチアーノが朗々と演じ切り、フィエスコのザネッラートは第3幕での毒がいよいよ身体に回ってしまったボッカネグラへの慈悲が素晴らしい。全体には華美なアリアやレチタティーヴォを控えているが故にストーリーが大変明確に味わえると実感。今公演に限った話ではないが、もう少しセットはどうにかならないのかと顔を顰めた。無機的で作品の舞台の世界観が欠片も残っていない抽象的な空間は昨今の流行りだが面白くない。特に終結のバックステージは皆既日食を思わせるオブジェでストーリーへの感銘がかなり醒めた。大野の指揮は例によってカタめだが、東フィルの軽めのサウンドがステージに代わり良い背景を成していた。演奏会形式でやっても充分楽しめるオペラ。バッティ東フィルでも聴きたいところ。セットはジェノヴァの世界観を感じさせる装置を待望する。往年の豪華セットを超えるのは難しいにせよ、生で折角舞台を観に行ってセットがあれでは演奏会形式との差も感じにくい。誕生日からキツめの感想、失礼致しました(すっかり忘れていたが先月の《ドン・カルロ》も同様)。

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