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世界観の話



どうも〜
こんしるです

最近なにかと物語コンテンツに触れたり謎解きコンテンツに触れたりあるいはそういうのを作ったりする機会があったりで、僕が個人的に気をつけていること・気にされているとウレシイことを言語化してみます。

一言で言えば「世界観のスコープ」です。



メタとストーリー

ここで2つの言葉を持ち出してみます。
「メタ」と「ストーリー」です。

企業じゃないよ バースでもないよ

「コンテンツの構成要素のうち、世界観や構成されるコンテクストではない部分」を呼ぶことにします
かつて所属していたところでの用法をそのまま使い古しています

(なんかたぶん一般用途じゃない言葉の使い方な気が最近してきて、それに代わる一般語が欲しいんですが、思いつかないので一旦このままでいきます)

例えば、よくあるゲームであれば「ゲーム機」「ボタン」「UI」とかがそうで、この記事であれば「共有ボタン」「これが表示されるディスプレイ」「『note』という記事サイト」とかがそうです。

対して、「コンテンツの構成要素のうち、世界観や構成されるコンテクストの部分」を僕はストーリーと呼んでいます。

注意として、この用法では必ずしも「ストーリー」は「物語」である必要はないです。大事なのはそのコンテンツが作り上げている文脈だってことです。

ゲームであれば「剣をゲットして敵を倒す」「宝箱を開けてアイテムをゲットする」とか、謎解きなら「密室から制限時間内に問題を解かないと死んでしまう」とか、この記事なら「実際の例をいくつか挙げて、『ストーリー』にあたるものを説明しているパート」とか……

でこうやってヌルっと、あたかも排反事象かのように書いてますが、これの分類分けが割と難しいっていうのと、でもってとても必要であるということをいいたいのです。


世界の境界

まず、メタとストーリーの線引きの大事さを伝えむとしてみます。

とりあえず例を挙げてみましょう。

  • ゲームのプレイキャラクターが、「僕はBボタンでダッシュするんだ!」と言ってくる

  • 教会にいるNPCが「ここまでのゲームをセーブしますか?」と言ってくる

  • 遊園地とかで「この着ぐるみのなかに〇〇さんがいます!!」と言ってくる

  • ゲーム内時間と関係なく、現実時間の時報がゲーム内に流れる

  • ゲーム内のメッセージツールが現実のメールとリンクしていて、普通に仕事のメールとかが来る

  • ゲーム内で家のインターホンを鳴らすと、連動して自宅のインターホンが鳴り出す

  • ゲーム内で死ぬとゲームをプレイしていたデバイスがシャットダウンする

  • ゲーム内でNPCに攻撃すると、現実で誰かに危害が加わる

  • 脱出ゲームとかで、解説で「スタッフの指示を無視して、立入禁止ってことになってる非常階段を使えば出られます!!」って言われる

  • 中世ヨーロッパが舞台の謎解きゲームで、漢字やいろは歌を使った問題が出てくる

一旦こんなとこにしておいて、いかがでしょうか?

間違いなく個人差はあると思いますが、なんで?となるもの、ウッとなるもの、なんか変な感じになるもの、怖いもの、いろいろあるのではないでしょうか。


こういうのに出会う明確なデメリットは、コンテンツへの没入感を削ぐことにあります。

コンテンツを体験している途中は少なからずプレイヤーはそこに没入しているわけで、そこで急に現実に戻されてしまうわけです。
メールのやつとかは顕著だと思います、中世ヨーロッパで漢字使うのも結構「え…なんで…???」となってしまいませんか?

もう一つは、想定外であるということです。

プレイヤーはコンテンツの世界観のスコープを想像して体験するので、急にその外側について言及されるのは完全に想定外の出来事になります。

例えばrpgゲームを体験するとき、プレイヤーはそのゲームの世界観、魔物がはびこって危機が訪れようとしているそのその世界にいます。
そのときプレイヤーはたしかに自宅にいて、たしかにスマートフォンを使ってゲームをプレイしていますが、プレイヤーの意識にそれらは上がっていません。プレイヤーがいま「体験している世界」は「魔物がいるその世界」なのです。

従って、ここでゲーム内の動作が原因で自宅のインターホンが鳴ったり、スマートフォンが再起動するのは急に人智を超越したおぞましい上位概念に首元を掴まれるようなびっくりイベントなのです。

そして、そこで生まれる感情は普通、興奮や楽しさではなく、驚きや恐怖です。

もちろん、縺薙≧繧?▲縺ヲ縲系ote縺ョ險倅コ九?阪→縺?≧荳也阜隕ウ縺ョ繧ケ繧ウ繝シ繝励b縺薙o縺励※縺薙%縺ォ繧?▲縺ヲ縺上k縺ョ繧ゅΓ繧ソ縺ィ繧ケ繝医?繝ェ繝シ繧堤?エ螢翫☆繧区─縺倥〒縺吶′縲√%縺ョ譁?ュ怜喧縺代′諢丞峙縺輔l縺ヲ鄂ョ縺九l縺滓枚蟄怜喧縺代〒縺溘?繧捺э蜻ウ縺後≠繧九□繧阪≧縺ィ縲梧枚蟄怜喧縺代b荳也阜隕ウ蜀?↓蜈・繧後k縲阪′縺ゅ▲縺溘°繧峨%縺昴↑縺ョ縺ァ縺吶


今このnoteでは「メタとストーリー」についてこうして書いているわけで、僕こんしるが考えている内容がこのnoteでは続くだろう、と想定しているはずです。もはや「日本語で書かれていること」というのはたとえそれが事実であっても意識されず、言ってしまえばメタにあてはまります。

ここで急に日本語で書かれていることをぶち壊して急に文字化けを用意すると、想定されていなかったので恐怖とまではいかずとも驚きにはなります。

(逆に言えば恐怖になるということでホラーとの相性はいいですよね。某ゲームとか某ゲームとか。某ゲームに関しては「ホラーである」ことすら予想できないので、なお一層恐怖を与えられていて設計としてすごいですよね。有名になりすぎてしまったのが唯一の悲しいポイントかもしれませんが…)

ここで補足しておくと、ややこしいですが「一部溶け込むもの」も存在していますよね。
ゲーム内時間が実際の時間と同期するものだったり、現実とゲーム内のナニカがリンクするものなど。
あれはコンテンツが生み出す文脈に「現実側もゲーム内にリンクしている」ということが存在している、すなわち事前に現実とリンクしていることを知らされていることが大事です。
その事前共有があることで、「現実も巻き込まれること」が「ストーリー」に含まれ、予想の範囲内に無事収まるのです。


まあこんな感じで、メタとストーリーの境界におざなりだと、没入感を削ぎ、驚きや恐怖を与えうるわけです。あまり好ましくありません。

ということでしっかり世界観設定をする必要があるわけです。



線引き

先程「メタとストーリーの境界が雑になっている例」としていろいろな例を挙げてみましたが、「こういうゲームあるけど全然普通じゃない?」みたいな例もあったかもしれません。

「設計次第ではうまく境界をひける」、あるいは「設定をうまくやってはっきり分けなければならない」という好例なのでちょっとそんな例を。

  • 古の伝承にある謎のメモには「Aボタンでメニューが出せる」と書いてあるが一体何のことだろう…?

  • UIで操作を説明する

  • 会話ダイアログは博士が作った「自動テキスト化マシン」だった

  • 教会にいるNPCが「ここまでの冒険を記録しますか?」と言ってくる

  • ゲーム内でなんやかんやあって主人公が「え!?これはゲームの世界だったのか…??」って気づいたあと、殺されて、そのままゲームソフトが落ちる

  • 脱出ゲームとかで探索すると『脱出ゲームの作り方』なるドキュメントを発見し、この脱出ゲームの設計の穴が「立入禁止エリア」にあること、最初の「立入禁止」の説明が「悪魔による誘導」だったことを知り、指示を無視して非常口に向かう

  • なんか誕生日サプライズで友人からもらったゲームをプレイしていたらでっかいケーキが出てきて、ボタンを押してケーキの火を消すと画面いっぱいに『ハピバ!』と表示されて同時にその部屋の電気が消え、隣に隠れていた友人がケーキを持って出てくる

(ちょっと例が強引すぎるかもしれないですが)さっきよりはよっぽどしっくり来ないでしょうか

メタ情報をストーリー世界観内のことばで記述して落とし込んだり、メタ情報が登場するという文脈を事前に用意しておく、ということです

逆に言えばこういうメタい情報を登場させたりギミックとして用いる場合は、入念に(テストプレイなども通して)事前認識として植え付けられているか確認する必要があります
急に世界観の外側のものを使ってはいけないし、持ち込んではいけない。

(ところで、どんな要素でも設定を盛り込みまくれば世界観内のオブジェクトとして扱えはしますが、そういう充分な説明がなければならないということはあまり直感的ではないということなので、あまりよくありません。
「この中世ヨーロッパの都市には実は以前に現代日本人がタイムスリップしてやってきた過去があって、その人が作ったから漢字の問題がある」って説明されてもいまいち納得はしきれません。無理なものは無理です。)


実例

なんかリファレンスになる実例を持ってきたいんですが、実は結構クリティカルなネタバレになるものが多くちょっと難しいな〜となっています 例が少ないかもだし、結局ネタバレかもしれない、許して……

  • Project Summer Flare(VRChatワールド)

    • 「VRChatワールドであること」「Instance」「アバターであること」が全てしっかり世界観内の物語で言及されていて、それゆえのある「他のワールドでは殆ど無いようなある行動」を要求されます。しかもすべてのUIにも理由がある。設定が凝りすぎててすごい。

  • collide(VRChatワールド)

    • 急に自分の作品をおいて自分語りをするカス なぐらないで…!

    • VRChatのギミックを使うことをコンセプトに作った謎ワですが、初手で「VRChatワールドめぐりで来た人のコメント」を載せることで最初からVRChatがストーリーのスコープに入っていることを明示しています。これによってVRChatのギミックを使う選択肢を取りやすくしていました。

  • OneShot(ゲーム)

    • 初手でこちらに語りかけてきて、しっかり「壁を超えてこっちに来たりするんだな」となってから、様々な超越的な行動をする必要が出てきます。ストーリーとそこへの落とし込みがすごい。ここまで暴れても「一連の物語の一部」に落とし込めている。

  • There Is No Game: Wrong Dimension(ゲーム)

    • サムネのやつ。タイトルからいきなり「このゲームでは『これがゲームであるかどうか』自体がゲームになってるんだ」とわかるのが好き。バチバチに「ゲームではない」を擦ってくるし、それでいてそれが集まってこのゲームになっているのが最高に訳わかんなくて好き。

  • Baba is You(パズルゲーム)

    • たすけて

    • 徐々にメタ(だと想定されていたであろうもの)がギミックとしてゲームの文脈に溶けていく設計になっているし、それが自分で気づいていく(ゲーム側から明示的に示されない)のがすごい。ってかそこで何ができるか試行錯誤するフェーズになったりする。なんというか、凄まじい

  • The Witness(パズルゲーム)

    • ふと、ゲームプレイ上あんまり関係ないだろうと意識もされなかったそれが、ゲームのパズルの中にあることに気づき、そこからはあっという間にゲーム内のメタ風なものがゲームのどのポジションに位置するか分からなくなる。なんなら普段道を歩いていても見つけてしまう。それを。


謎解きのストーリー

ところで謎解きについて触れると、謎解きってあらゆる情報や事前知識をもとに推測する総合格闘技なわけですが、それゆえあらゆるものが「謎解きのヒントかもしれない」、つまりあらゆるものが常にここでいうストーリーに入る可能性があると思っています。

この塩梅が最高に難しい気がしていて、ものによっては「ストーリー内に絶対ないだろうと思ってたものがラス謎だった」みたいなことは往々にある気がします。
だいたい自分が無意識に囚われてた固定観念に気付かされる系のものですね。某一色部屋とか。

ただし、絶対に、どんなに飛躍的な発送や固定観念のぶち壊しがあろうとも、それが可能になるのは十分なヒントorストーリーにそれらが入りうることの示唆がないといけないと思っています。
要は「謎解きにはその考えに至るべき動線が必要」ってことです。

とはいえその動線に前提知識を要する場合もあって、想定されていた世界観の幅の出題側と体験側のチューニングに失敗、みたいな例はかなりあると思っています。
「急に元素記号なんて思いつくわけないだろ!」「元素20番までなら使ってもいいかな…」とか、「流石に方角は常識として使っていいよね?」「英語わかんない、のーすってどう書くんだっけ…」とか……

もし「腑に落ちない謎解き」があったら、こういう点から考察してみてもいいのかもしれません。
仮に合わなかった、つまらなかったとしても、それはチューニングがあってないだけなので双方の問題であり、一方的に謎ワを批判するのは誰にとっても嬉しくないです(制作側なので特にそう感じています)。
あと解けなかったから「謎解き向いてないな…」みたいに悲観する必要もないと思います。もしかしたら問題の方に問題があるかもしれません。シンプルに自分が楽しいかどうかを優先してあげてください。

え?あんまり面白くない?大丈夫。そんなに普通みんながみんな好きなもんじゃないさ(ホラーみたいなもんだ)

あるいは制作側であれば、ここのチューニングのためにも第三者のテストプレイを大事にするべきです。テストプレイは「ゲームが通しで最低限動作することの確認」ではなく「満足に遊べるようにするために必要な箇所を洗い出す」ものだと思います。テスターも建設的な意見を述べるとハッピーだと思います。
あとはストーリーの内側にあると受け容れられやすくする努力は必要そうです。
急に周期表の問題を出すんじゃなくて、化学謎解きみたいなタイトルにしちゃうとか、部屋に周期表置くとか、実験器具置くとか……


余談ですが、謎解き界隈はこの「世界観のぶち壊し、固定観念のぶち壊し」が大好きです。
世の中には「『謎解きゲーム〇〇からの脱出』を遊びに来たんだけど、大変な事態に巻き込まれちゃった!脱出」みたいな、謎との世界観内に謎解きが登場するもの(公演内公演と呼ばれたりする)もあったりします。
この場合、「謎解き公演を解くときに存在するもの(スタッフ、ブース、ゲームのルール説明)」が謎解きのストーリーの中に存在することになるので、かなりややこしくなります。公演内公演のルール説明用紙と、公演のルール説明用紙がどっちもあるわけです。
すごい概念。

えっ?謎解きワールド「COPERATE」とかいうのがVRChatにあるんですか?そんな…動物たちが住む森を守りたい……



と雑に書き散らしてあらかた満足しました

みんなも「え、すごいこれこういう風な設定にしてんだ、自然じゃん」って感動するやつ、やってみてほしいな〜

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