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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

誰かの"今"に寄り添う者

altdeusをいい感じに遊んだので、忘れる前に書けるものを書いておきます。

*このnoteはVRゲーム「ALTDEUS: Beyond Chronos」のネタバレを含みます





 とか偉そうなor強そうな感想note感を感じるかもしれませんが、そんなことはありません。というのも、僕にとってaltdeusが初めてのノベルゲー体験だからです。もしかしたらノベルゲーという括りでは普通のことを大袈裟に書くかもしれません。あらかじめ断っておきます。

 (追記注:ノベルゲーではなくアドベンチャーゲームです。完全に誤解してました。)







 ネタバレを踏みたくない人はここまででブラウザバックしてくれたと信じつつ、いろいろ書いていきます。






 僕は現時点で4周しています。順に、

・Astray from the Polaris (以降メテオラエンド)

・The Celestial Cradle (以降アニマエンド)

・The Fairy's Ark (以降ノアエンド)

・Flowers for an Unknown Tomorrow (以降クロエエンド)

です。まだエンドあるっぽいですが、トゥルーっぽいのに辿り着けたので一段落です。


で、わざわざnote使ってまで昇華したい感情は、主に上の3つ目のエンド周りの話です。


そう、ノアです。


 語彙力を失えばただただ尊い子だったわけなんですが、頑張って僕なりに色々考えてみました。

・ノアの成長

・各エンドのその後はどうなるのか



 ノアはコーコの死後、ジュリィ博士によって作られたAARC=人工拡張認識結晶。コーコをモデルに作られた彼女は、歌声や瞳がコーコに似ていて、度々クロエを悩ませていました。彼女の体験した過去を追体験できるのがノアエンドでした。実際に彼女がコーコを模して造られた理由は、ジュリィ博士によるメテオラをどうにかする計画の一端だったわけですが(詳しくはABCDEを読めばわかりそうですが僕はまだ読んでいないので触れません)、博士の思惑をはるかに超えた独自の成長をしていきました。

 もちろん知能的な側面でも成長していましたが(睡眠の獲得、感涙の獲得、味覚の獲得)、二次サーバーを作ったりパトロクスを扇動したり生みの親であるジュリィを攻撃したりと、徹底的に悪になってまでクロエを守る。その非合理的な非人工的な判断は、もはや人間のそれといって差し支えないと思います。

 もちろん、その非人工的な判断の大本は、ココノエ邸で名前のなかった彼女と出会ったコーコでしょう。単にクロエとコーコを目標としていた存在が、クロエの笑顔という目的を初めて持つわけです。彼女にとっての、唯一の存在意義といってもいい、その目標が与えられました。

 しかし彼女は自分を人間であるとは思っていない。名前を「Noa」にした理由や、あくまでも見返りを求めようとせず『人に寄り添う』姿勢にみられる通り。最終的にクロエを守って自己犠牲に落ち着こうとするのも、彼女にとっての唯一の存在意義クロエを失いたくなかったからでしょう。

 彼女は人間になりたかった。どこまでも人間を目指す姿勢もそうですが、クロエと直接触れられない、サンルームに逃避するクロエを止められないことにただただ罪悪感を覚えているのだろうとおもいます。彼女の流した涙の理由には、その人間とアークとの差異が絡んでいるのでしょう。グライアイとか全力で嫌ってると思います。

 だからこそ、懸命にクロエを制して失敗するアニマエンドとメテオラエンドは僕にとってとてもつらくありました。クロエを失ったノアがかわいそうすぎます。ノアエンドを経験してしまった以上、あのエンドを繰り返すのは罪悪感で僕は死にそうになると思います。

 そんな彼女に、もう人間だよと、もう自分のために動いていいんだよと、ピトスでクロエはそう彼女に伝えます。その人間の温かさを、かつてコーコに教わる側だったクロエが、今度は教える側になる。ここにクロエの成長も見られるわけです。ノアだって人間だと気づけたし、クロエだって人間になれたんです。

 ピトスでノアを助けようとしたとき、ノアが抵抗する気持ちもわかる気がします。だってノアはクロエを守れたはずだったんです。巨大メテオラはこれで発生しなくなるはずだったんです。クロエを守りたい気持ちとともに、きっと戸惑いもあったのかもしれません。自分の欲望に従ってピトスから出たとして、自分の存在意義が不明になってしまうからです。

 だから、クロエにマキアでビンタされて、クロエの笑顔とともに存在を肯定された彼女は、そのまんまの意味で救われたのだと思います。クロエに自分の欲望を問われて、ノアは「みんなの前で歌いたい」って言いますが絶対に絶対に一番の望みは「クロエと一緒にいたい」だと思っています。

 クロエエンドを迎えて、地上で新しく生活する人々の前で、ノアはきっとアイドルとしてもクロエのパートナーとしてもアニマの友達としても自分を出していくことだろうと思います。本当にトゥルーエンドです。




 さて、問題はノアエンドの話。実はトゥルーエンドより刺さっていたりするので、ここでしっかり言語化したいと思います。

 メモリーを徹底的に消去されたノアは、初期設定の人格のない、まさに機械としてのノアに変わります。この状況で旧ノアの過去がどんどん明かされていくわけです。

 機械的な新ノアと人間的な旧ノアの差が感じられて、本当につらくなりました。旧ノアはここまで人間性を、クロエのために、獲得してきたんですね。新ノアが話せば話すほど、旧ノアの喪失感が募っちゃってヤバくなっていました。

 僕がこのゲームで一番心に残っているといってもいいシーンが、クロエとノアがサンルームで出会う回想シーンです。まだ旧ノアも誕生した手で機械っぽかった状態で、コーコを失って廃人と化していたクロエを彼女なりに励まそうとしたところで、クロエはコーコの偽物だと叫んでサンルームから追い出します。僕はここの両者の行き違いが本当に切なくて号泣していました。

 旧ノアの真実を知ったクロエ(と僕)はピトスを用いて旧ノアを復旧しようとします。ところが、本当に切ない話ですが、復旧不可であることが判明します。一時的に再構築された旧ノアはその情報の煩雑なシステムが保てず不安定で、崩壊してしまうのです。

 ここで新ノアが身を挺して「旧ノアとクロエの空間」を作ってくれました。ここも切ないポイントだと思います。新ノアだってクロエの笑顔のために、旧ノアの復活という目的のために自分の身を顧みず行動するのです。でも当然、新ノアだって生きていていいはずです。クロエと過ごして、また彼女なりの新しい人間性を得たっていいはずです。なのに彼女はそれをせず、ただ旧ノアのために、クロエのために、自身の消去を選びます。

 旧ノアと会うことになるクロエだって、このことを多少は意識するでしょう。だから絶対に彼女は旧ノアとの時間を大切にします。ノアと歌って、ノアと笑って、ノアと語らうサンルームを模した部屋にいるのは、彼女以外にはダリアとイチゴだけ。ここで初めて両者は、物理的にも精神的にも直接触れ合えるようになるのです。両者にとってただ幸福な空間。文字通り時間を忘れて、存在し続けるでしょう。


 そして、しかし。永遠の時間は存在しません。特に人工物であるノアは、です。いつか必ず別れの時がやってきます。その最期の時に、ノアはクロエの笑顔を見ながら停止するのでしょうか、それとも自分の喪失していくメモリーを恐れてクロエを自分から突き放すのでしょうか。なんとなく後者な気がします。

 二回目の別れを経験することになるクロエが、このあと一体どうするのか、いろいろ考えてしまいます。もうこの世界にはどこを探してもどのノアもいません。コーコに次ぐ罪の意識が増えるのか塗り替えられるのかわかりませんが、僕はクロエがピトスから出ないような気がしています。出ても何もないことを知ってしまっているからです。永遠に変わらない電脳世界のサンルームで、ダリアに水をあげているのでしょうか。





 長文になってしまいましたが、以上が僕が書きたかったことです。ノアに本当に心を揺さぶられた人間がここにいるんだよ、ということがもし伝わればそれだけで十分です。

 駄文ですが以上です、ありがとうございました。


 


p.s. 万が一見てくれている開発者の方へ

 本当に、ありがとうございました。



p.p.s. Save the Worldの歌詞が知りたいです。

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