どんどん弱く優しくなる祖母のこと

先日、祖母の82歳の誕生日だった。

私が実家を出た頃(十数年前)にはまだまだ元気だった祖母も、その後脚を悪くして外に出るのを億劫がったり、少しボケたみたいになったりしたみたいだけれど(私も一度帰省した時に母と間違えられたりした)、現在は健康食品で体の不調も結構改善しているようだ。

健康食品というものの効用を私は薬ほどには信じていないのだけれど、実際に効いて病院で出される薬の種類が減ったという人の話は聞いたことがある。
祖母もそうだし、学生時代にドラッグストアで働いていた頃にもお客さんがそういう理由である青汁の商品を褒めていたのにも遭遇した。
祖母は電話で「よく分からないけど、それを飲み始めてから薬も減ったし血圧も下がったので、それのおかげなのだろう」と言っていた。盲信しているのではなく、結果から冷静に考えられていて偉いと思った。

祖母は孫たちに激甘だったし、特に私は初孫で可愛がってもらったと思うのだが、気難しい人だというのはあった。
思っていないことは言わないのでそう見えたというのもある。
この気質は私も受け継いでいる。思ったことを全て言ってしまうのではない。発言された内容はすべて、本当に思ったことだということだ。
そんな事ない人の方が多いと思う。お世辞を言ったりする人というのはめちゃくちゃ多いし、自分は言わないので、言われた時になんと言えばいいのがわからず、「あー」とか「えー」とか言っている。ピンチになると母音が出てくる。

そんな祖母は祖父への当たりが一時期めちゃくちゃ強くなっていた。
足が悪いので祖父に買い物を頼む。メモを見て祖父が買い物をして帰ってくると、
「頼んだものしか買ってこない!」
と怒っていたらしい。
母から聞いてめちゃくちゃ笑ってしまった。
(祖母は母方の祖母である。父方は祖父母のどちらももういない)

そういう理不尽な時期が2年ほどあった後、祖母はふわふわして弱くなり、そして周りのもの全てに優しくなった。
電話でも何かを悪くいうことはなく、祖父とも同じ老人ホームに入るしかないなどと惚気じみたことも言うようになった。
車で外に連れて行ってくれる母や叔母への感謝の言葉を口にしたりもする。

「コロナで外出が減ってつまらないけどなんとかやってる…」
と言っていたので母に言うと、「病院と買い物で連れ出しているので、コロナの前と外出頻度は変わってない」とのこと。
ニュースでも暗い話題ばかりなので、なんとなく閉塞感があって、出かけられてないと思うんじゃないかと思う。私もそうだ。

私も将来こんなふうな過程を辿って最終的に祖母のような、おもしろ優し可愛人間になっていくならいいな、と思う。
(そうなりたいと言うわけではなく、遺伝的な要素でそうなるのであれば、私にもその見込みがあるので嬉しいなという、もう少し打算的な希望。遺伝に関係なく全員そうなるというのでも良い)

本人がそれを心地よく感じているのかは知らないけど、私にはある種の修行を終えた人みたいにみえる。

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