鳥の旅140(後半ハーフ) / 16年越しの甲州街道の旅

■プロローグ


2023年6月24日~25日にかけて、鳥の旅(後半ハーフ)を走りました。甲府城址から旧甲州街道を辿り、日本橋を経て浜町公園までの140キロに及ぶ旅です。

実はこの甲州街道の旅に、私は特別な思いがあるのです。今から16年前の2007年9月に「甲州夢街道215キロ」という諏訪から日本橋を目指す大会に参加しました。それまでに100キロの完走は経験していたものの、それを超えるウルトラマラソンは初めての挑戦でした。しかし、途中から降り始めた冷たい雨に気力も体力を奪われ、夜明けを迎えた上野原でついに心折れ、リタイアした悔しい思いの残った大会です。

そしてその年を最後に「甲州夢街道」は開催されず、私の甲州街道の旅は、2007年以来諏訪から上野原までで止まったままになっていました。しかし形を変えて旧甲州街道を走る「鳥の旅」に出会い、上野原から先のまだ見ぬ道を日本橋まで繋ぐチャンスが今年巡ってきたのです。2007年に諏訪~上野原、そして2023年に甲府から日本橋まで、16年越しの甲州街道コンプリートに向けて、6月24日に甲府城址をスタートしました。

2007年9月には寒さに震えて旅をしたけれど、2023年6月は猛暑に悶えながらの旅になりました。


12:00スタートなので新宿初8:30の特急かいじに乗ると、甲府着10:14。甲府駅前で腹ごしらえしても、ゆっくりスタートには間に合う。前泊不要で帰りの交通費もかからないのはお得。
甲府城址の北西の角が集合場所だ。
甲府城址には天守閣は残っていないが、立派な石垣や天守台が保存され、広々とした公園になっている。スタートまで少し時間があったので、この公園で少し休息。
甲府市内を見下ろす天守台 


天守台からの眺め。甲府駅南口方面。


12:00に近づくと、徐々にランナーの数が増えてくる。


■甲府城~笹子峠~黒野田第一エイド(33km)

昼の12時にスタートしてから勝沼あたりまでは暑さとの闘いに。そして最初の難所である笹子峠は黙々と歩いて超えてゆきます。途中車道を離れてトレイルに入りましたが、斜面の崩落があったようで、コースが分かりにくい場所があって道に迷いかけました。周囲の残された樹木に結ばれたピンクのリボンと僅かな踏み跡を頼りになんとか乗り切って、無事に笹子峠に到着した時には、ほんとうにほっとしました。そこからは一気に坂道を5km駆け下り、国道20号線に合流したところに黒野田第1エイドがありました。明るいうちにここまで着けたのは良かったけれど、33kmに6時間以上かかりました。もうすでにかなりの疲労感もあって、残り110キロも行けるのかと不安になります。しかし頂いたカレーとスタッフの激励にエネルギーをもらって、先に進みます。

甲府城址をスタートすると、旧甲州街道(411号線)を石和に向かう。
笛吹川を渡ると、10キロ地点。
土手の道は遮るものもなく、ジリジリと日差しがきつい。
山梨市に入る。
勝沼手前からは、上り坂が続く。
秋には葡萄狩りで賑わうこの辺りも、今は静か。
東京はまだ遠い!


所々、国道20号線を外れて旧街道を行く。
駒飼宿


笹子峠へは曲がりくねったロードを行くが、途中からトレイルに入る。
丸木橋を越えてゆく。
峠の近くで、ロードへ合流。
上り詰めると、笹子峠トンネル。車のすれ違いが出来ない道で、中は真っ暗だ。
峠のトンネルから5キロ駆け下り20号線に合流すると、33キロ地点黒野田第1エイドに到着する。カレーで腹ごしらえする。


■黒野田第一エイド~大月~上野原~小仏峠~高尾第二エイド(92km)


次の高尾エイドは約60キロ先です。そこまでの道はヘッドランプを頼りの夜間走になので、道に迷ったり転倒したりのリスクもあってストレスがあります。まずは大月に向かって国道20号線を進みます。時には旧街道にそれながら大月までは下り基調。エイドを出発して30分くらい走ると、もうランナーとは誰とも合わなくなりました。夜の国道をライトを頼りに黙々と一人で走っていると、もうこのルートを走っているのは私だけなんじゃないというような気分に襲われます。もうみんな先に進んでしまって、自分だけが遥か後方に取り残されているような感覚になったりします。大月までは下り基調なので走りが中心だったけれど、その先は登ったり下ったりしながら道は続きます。もうこの変になると距離も50キロを超えていて、だんだん走るのがきつくなってきます。安全を優先して走るのは路面の良い下り斜面だけにして歩き主体で先へ進みますが、歩きだと10キロ進むのに2時間はかかるので、これもまた精神的にはストレスです。果たして計画通り夕方ゴールして、打ち上げできるのだろうか? いやそもそもゴールに辿り着けるのだろうか? もう5年も100キロオーバーの距離を走っていないので、不安になります。60kmを超えても、まだまだ半分にも程遠いと思うと気が重くなります。

70キロを超えたところで、上野原に差し掛かります。上野原は16年前の悔しいリタイアポイント。今回もかなり疲労はしていたけれど、ここを超えるために参加したのです。右折すると上野原駅に続く道を、今回はしっかりと見送って相模湖方面に進みます。ここからは未知の風景です。

しかし、そんな一人旅が突然終わります。75kmを超えた頃、藤野駅近くのコンビニに立ち寄ったところ、駐車場にたむろする5人のランナーの姿が目に飛び込んできました。駐車スペースに座り込んだり、なかにはアスファルトの路面に寝転がって爆睡しているランナーもいました。この瞬間、私以外のランナーが居た!と思ったら、めちゃめちゃ嬉しかったです。

ここからは、一人ではなくて4人で先に進みます。不思議ですね、それまでは歩いてばかりだったのに、同行者がいるというだけで元気が湧いてきます。走る気力も沸いてきました。しかし、この先には第2の難所、小仏峠が待ち構えています。ここはトレイルで超えなくてはいけません。試走することなく初参加している私にとって、同行者がいるのは本当に心強いものです。暗い夜道、知らない道を地図を頼りに、あ~だ、こ~だと詮索をしながらでは時間もかかります。そんな同行者のおかげで、迷うこともなくスムーズに小仏峠へのトレイルに進むことが出来ました。さすがに80kmくらい走ってきた足には小仏のトレイルはきつかったけれど、ちょうど夜が明けて明るくなった頃に、小仏峠を超えることが出来ました。ここまで来れば、高尾の第2エイドまではあとわずか。すっかり明るくなった日曜日早朝6時頃に、第2エイドに到着できました。

ここまで来れば、残りはもう約50km。いや50kmはなかなかの距離だけど、しかしもう山は無いし、暑いかもしれないけれど時間はある。たぶん完走は歩いても出来るのかなと思ったら、ほっとしました。そのタイミングで「ビールもありますよ!」の声。もちろん頂きました。美味しかったです。

■高尾第2エイド~日本橋~浜町公園ゴール


エイドを出た頃はまだ比較的涼しかったけれど、八王子辺りからはもう酷暑。休憩する時間がどんどん増えていきます。思うように距離が減りません。完走は確実だと思っても、30kmも40kmこの暑さの中を進むのは簡単ではありません。しかし、確実に距離は減るのだから、焦らず落ち着いて時間だけ気にしながらゴールへ進む。新宿の雑踏を縫うように進み、四谷見附を通過。半蔵門からは皇居ランのコースを駆け下る。もうゴールまであと僅か。

100kmオーバーのゴールは、実に8年ぶりになります。GPSのバッテリーが府中あたりで切れたので、正確な走行距離は確認できませんが、推定142kmくらいかと思います。
長かったです。久しぶりの私の足が最後まで持つのかという不安も常にありました。
でも、ゴールの瞬間はやってきました。やりました。嬉しいです。

新宿からゴールの浜町公園までは9.6キロある。
距離表示は少しずつ、そして確実に減って行く。
酷暑の中を、少しずつ進む。
ついに甲州街道の終点、日本橋へ。


そして、待望のゴール!


■エピローグ

既にゴールして寛いでいるランナーたち。私の後にゴールに到着するランナーたち。みんないい表情をしています。このゴールこそがウルトラマラソンの醍醐味ですね。不安はあったけれど、ゴール出来て良かったです。

明るいうちにゴール出来たおかげで、ゴールに駆けつけてくれた友人たちと、打ち上げをして帰宅。打ち上げは、至福の時間でした。


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