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万葉集とすゑひろがりず

同じものを見ていても、それを好きだという人同士であっても、その角度は絶妙に違うものである。刺さる場所、切り取る場所、その一部分を選んだ背景には個人的な事情だってあるだろう。自分の「好き」と他者の「好き」はそれぞれだ。同じであってもいいし、違っていてもいい。どっちだっていいのだけれど、最近印象的だったのは、自分が「好き」だと思っているものを、同じように肯定的に見ている人の「好き」は、どういう部分であれ、聞いていて楽しいものだということだ。

9月22日、沼津ラクーンよしもと劇場で行われた「御前会議~二大芸人家臣集結トークライブ~」。すゑひろがりずの二大芸人家臣であるぬまんづ・原と男性ブランコ・浦井が、本人を交え、YouTubeチャンネル「すゑひろがりず局番」について語るトークライブ。原と浦井が選ぶ「すゑひろがりずの局番の好きなところ」に、共感するところもあり、ああそんなのあったなと懐かしいところもあり、「好き」を聞きながら笑うというのはどうにも得難く、あっという間に過ぎた良い時間だった。

◆配信日時
9/22(水)19:00-20:00
※見逃し視聴:9/29(水)19:00まで※
◆概要
すゑひろがりず局番の大ファンである男性ブランコ・浦井と、沼津の劇場ですゑひろがりずを癒すことに心血を注ぐぬまんづ原、二大芸人家臣がついにすゑひろがりずの前に集結。局番やテレビ番組の話などすゑ話中心に行われるちょっとディープなトークライブ!(うえたけも出るよ!)
◆出演者
ぬまんづ、すゑひろがりず、男性ブランコ浦井
御前会議~二大芸人家臣集結トークライブ~(9/22)


公演の4日後に、YouTubeで公開されたアフタートークもまた楽しかった。「一番面白かったシーン」や「神回ランキング」、たくさんの人の「好き」があふれ、こぼれていく。何か「1番」を決めるのは苦手な性分なので、最近のすゑひろがりず局番の中でこれは、と思ったものの話しを一つしてみたいと思う。


【検証】万葉集の和歌をすゑひろがりずなら簡単に現代語訳できる説

万葉集に収められている和歌を、すゑひろがりずの二人が現代語に訳す。書いては消しを繰り返して出されるボード。互いの出した細かなニュアンスの違いにも焦点をあてながら、4本の歌を一緒に味わう。講師役として古典を教えるのでもなく、生徒役として教わるのでもない。1300年も前の作品に接するふたりの感じがとても自然で、YouTube上に古典を扱った動画は数あれど、群を抜いて粋な企画だと感じた。

正確な現代語訳を追求していくのではなく、古典の文化をプレゼンするわけでもなく、ただただ感じておもしろがっている姿を絶妙なバランスで見せる。他の誰がやっても上手くいくわけがない企画を、いともたやすく形にまとめてしまうのは、芸歴10年のなせる技だろうか。「趣深く、おもしろい」を地でいく様が、まさに「をかし」を形容する一本。一般人の目の高さで、肩に力を入れることなく、和歌にあたれる動画なんて、他にどんな人が実現できるものだろう。

「蘇をつくってみた」の先に万葉集がある。4500首以上を収めた我が国最古の歌集である。まだまだ知られていない歌は無数にあることだろう。みやびで典雅な彼ら二人にぴったりの企画、続編が待たれる。

あとがき

すゑひろがりずと万葉集の企画との相性の良さ、これは本当に奇跡だと思ってます。古典にのびのびと接する感じは、専門家ではないからこそ出せる空気だなと。テストとか受験とか関係なく、娯楽として古典にふれる機会は本当に贅沢で、この遊び方こそ至高の雅。お二人が笑い合いながらやってるのがまたいいんだろうなと思います。

さて10月2日、すゑひろがりず三島さんお誕生日です!

昨年のお誕生日のときに投稿した記事にも、三島さんの文字が好きだということを書いてるのですが、1年経ってもやっぱり大好物です。万葉集の現代語訳のホワイトボード最高!良いところがぜーんぶ詰まった動画だなと思います。

 すゑひろがりずと文字の世界でいうと、南條さんのツイッターがまず浮かびます。ちょっとした告知にもキャラクターを乗せておられます。筆まめな方だなあと思います。
 あと、大喜利やってるときの三島さん。芸人さんに限らず、特長のある文字を書く人が好きで、良い意味で気になってしまうのですが、すごく味のある文字を書かれるなあと。まっすぐだけど丸い、サイズの安定した字。ホワイトボードを使うときのネタの字は、三島さんの手蹟のような気がしています。
 背をわずかに後ろに反らし、ペンがさらさらと走っていく。答えを出すとき、中の3本の指でボードを掲げ持つ、その手が高くあがる。ときどき、顔が隠れるぐらいその位置が高い。ボードを裏返す瞬間には、ちょっとだけ力のこもった動作が入る。所作といってもいいのかもしれない、三島さんのこの一連の大喜利の仕草。どうしてだか私はとても好きです。

すゑひろがりずのデビューシングル「雅― MIYABI―」。8月19日のリリースでフルバージョンが公開されて、一番印象に残ったのがサビのところでした。2013年の頃の元のネタにも入っているくだり、三島さんの「我のLyric(=詠歌)いとをかし」。この部分が「雅」のメロディではずいぶん高く上がるようになっていて、曲全体の中でインパクトを持って強く響く。最初に聴いたとき、この部分に端を発してじわっときたのを覚えています。

結成10周年ツアー、ライブDVD発売、楽曲配信、書籍上梓と怒涛のリリースラッシュと同時進行で、それぞれがお子様を持たれて父親となり、公私ともにますます忙しい日々を送られているすゑひろがりず。お祝い事が次々と続き、どれもこれも本当におめでたくてファン冥利につきます。

何回か書いてはいますが何度でも。引き続き、お二人のご健康とご多幸をお祈りしています。

出典

[1] 吉本興業 FANY ONLINE Ticket (公式Webサイト)
https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/

[2] YouTube「芸人が選ぶ「すゑひろがりず局番」の一番面白かったシーン&局番クイズ」(2021.9.26)
https://www.youtube.com/watch?v=mfO3BB96y6I

[3] YouTube「【検証】万葉集の和歌をすゑひろがりずなら簡単に現代語訳できる説」(2021.8.13)
https://www.youtube.com/watch?v=hIJZiV041Pk

[4] YouTube「【すゑひろがりず】話題の「蘇」作ってみた!〜歴史メシ作り〜」(2020.4.12)
https://www.youtube.com/watch?v=CTQO24howDY


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