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BUMP OF CHICKENとなんばグランド花月

2019年9月11日、私は大阪にいた。「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」、36000人を詰め込んだ京セラドームは、雨の中でも大いに揺れていた。

スケジュールの調整に調整を重ねて臨んだ水曜日。翌日も休暇だ。高揚感と少しの背徳感。新幹線はあっという間に私を西の中心へと運んだ。


思えば、人生で初めて購入したCDがBUMP OF CHICKENだった。2002年2月リリース、「jupiter」。朝から晩まで夢中で聞いた。

夜更かしを覚えだしたのもこの頃だ。ノイズまみれのオールナイトニッポンが教えてくれた「Stage of the ground」。長いイントロの後、満を持して発せられる第一声。CDを買って、ようやくフルサイズを聞けたときは本当に嬉しかった。当時はまだJ-POPのコーナーには置かれていなくって少しドキドキしながら手にとったことをまだ鮮明に覚えているし、封入されていたステッカーは中学時代の3年間、生徒手帳とともに常に胸ポケットのところにあった。日本全国の生徒手帳事情は分からないが、裏表紙のビニールカバーが透明になっているところに贔屓のアーティストやキャラクターを挟み、これ見よがしに友人に発信する、そんな最重要スペースだったのだ。

楽しいことばかりではなかったあの頃。大人になってしまえば取るに足らない出来事でも、思春期の小さな胸にはとうてい抱えられないものもある。あるいは、今思えばこその赤面すべき言動もある。そんなものを突き放したり、無視したり、たまに見ぬふりもできなくなったりしながら、ありがたくも忙殺される日々にまかせ、今にたどりつく。BUMP OF CHICKENのアルバムも、その間に6枚。「jupiter」を手にとった頃の記憶を封印したくて聞かない時期もあったし、ひたすら貪るように新譜を浴びた時期もあった。

そういう、ありふれた年月を経て迎えたaurora arkがいかに素晴らしいものであったか。


コロナ禍の中にあるこの連休初日、これまでに出かけたいろいろなイベントのことを思い出す。地元の小さなライブハウスの思い出もあれば、地方のショッピングモールのフリーライブの思い出もある。おいおい綴っていければと思う。

ドーム規模のイベントは、aurora arkが最後だ。ツアーを通して、のべ35万人を動員したという。あの日々が戻ってくるのはいつになるのだろう。見通しの立たないこの先のことに、ふれるだけで勇気が要る。


幸せだったあの9月を思う

大阪2日目、何も決めずにホテルを出て、向かった先は難波の界隈。平日の難波は特に良い。当地の人の生活も、旅行者の非日常も、まばゆい最新の流行も、胡散臭い客引きも、全てを一手にはらんで形成される街のにぎわい。この雑多な街は一人旅にはことに居心地がいい。病んだら大阪、もしくは博多。人生に行き詰ったときの合言葉である。


行動の基本はダメ元。グッズショップでも見て行くか、ぐらいの気持ちでなんばグランド花月を訪ねると、運のよいことに当日券を入手できた。それも、1階席ど真ん中。こういうハッピーなめぐり逢いは、一人で旅行しているとよくあることだ。

この日は寄席と新喜劇の2部構成。演者と目の合う距離で繰り広げられる、絶え間無いかけ合い。緩も急も駆使するベテランの話芸。「朝から晩まで笑わせまっせ」のあおり文に示された矜持を体現するような、生きた芸能を目の当たりにした。

これをこの時期に書くのは非常につらいのだけれど、「対面のもつ力」を身をもって感じたのだ。確信といってもいいと思った。切り取ったものでなく、生身の人間同士が接する場のもつエネルギーがいかに大きいか。

私は芸人ではないが、人前でしゃべるような業務を行う機会がある。聞き手をどっと笑わせるような力量は私にはないが、ライブ感は大切にせねばならないと、初心に立ち返るような感慨を得たのだ。


その後、あの日大阪で味わったライブ感が忘れられず、輪をかけていろいろなイベントに足を運ぶようになった。大人であることを謳歌していた。生き急ぐような感覚もあった。

だからこその、喪失感。書き始めたときは、あまり暗い記事にする意思はなかったのに。


されどエンターテインメントの灯は消えない。今やれること、これからのためにやるべきことを考えている人がたくさんいる。たちまち今をしのぐ術だけではなく、その後の主流にもなりうるような表現形式が確立されるかもしれない。その日のために、この黎明期をしっかり見届けておかねばと強く思う。

あとがき

ラジオの形態、当時とはずいぶん変わったなあと思います。あの頃は本物のアナログ電波だった。今はアプリでも聞ける時代、radikoには本当にお世話になっています。

ラジオは結構長く聞いてました。Wikipediaで歴代パーソナリティを眺めてるだけでも時間がすぐ過ぎます。聞き始めた頃のAllnightnippon SUPER!はすごく覚えていて、西川貴教、ロンドンブーツ1号2号、ゆず、とっても好きでした。


あの頃ロンドンブーツはCDも出してましたよね。今聞くと声がすごく若いけど、「岬」とか「声」とか。元気の出る名曲だと思います。芸人さんの曲つながりでいうと、ついでに「全てが僕の力になる!」も合わせて推したい。2004年リリース、宮迫博之と山口智充のユニット「くず」の曲。カラオケ入れると大体思い出話に花が咲いて、世代が離れた人ともいい感じになれます。

新規というよりは、久しぶりの人に聞き直してほしい。色々いろいろあったけど、かつて自分が好きだったもの、良いと思ったものはそう変わんないものかなって思います。


関連

[1] BUMP OF CHICKEN (公式Webサイト)
https://www.bumpofchicken.com/

[2] 吉本興業 なんばグランド花月 (公式Webサイト)
http://www.yoshimoto.co.jp/ngk/

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