【たくさんの主人公のいる店】2024/07/23
「もし、世界に明るい物語しかなかったら、僕の人生は今よりも悲惨なものになっていたでしょう。」この文章を目にした時、私の共感のボルテージはMAXでした。
これは中村文則さんの野間文芸新人賞受賞作『遮光』の帯に又吉さんが書かれている文章です。本作は狂気や暴力性をはらんだ話ですが、”明るい物語”というのは決して題材のことではなく、その表現や作品の中に漂う雰囲気を仰っているだろうと思います。
私は愛や希望がテーマでも、内に内に籠ってグルグルしてしまうタイプの話のほうが好みです。友情!努力!勝利!とか今の私には眩しすぎます。近頃、マンガやTVドラマを見れなくなってきたのもそのせいかもしれません。
そんな私ですが、月に1作品は心底ハッピーな物語を読むまたは見るようにしています。さすがにこの年になると人生には酸いも甘いもあるということはわかっていますから、その気持ちを忘れないよう。たくさんの主人公が頭の中に登場できるようにしておきたい。だからこそ開店前の薄暗いcomxcom店内でひとり過ごす時間は大切で貴重なのです。
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