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前編:ゼロから始めるコミュニティドクター論

コミドクについて

わたしたち”コミドク”は、病院からまちに飛び出して、地域に暮らすの人々とともに健康で幸せなまちづくりを探求、実践できる医師(=コミュニティドクター)を養成するための学びのコミュニティです。

(幸せ)はそれぞれのコミュニティで定義したいので()です

2023年7月現在、東京、長野の2カ所の医療機関と連携して、7人のドクターがそれぞれにコミュニティでの活動をしながら、定期的に集まって学びあっています。

2021年からスタートして2人のドクターが修了しました。

ドクターがまちに出るとどんなことが起こるのか、なぜまちに出る必要があるのか。
今回は、2023年4月に行われたコミドク公開講座から、コミドクの立ち上げ・運営メンバーの一人である密山(nickname: よーよー)による「ゼロから始めるコミュニティドクター論」を内容を前編・後編に分けて紹介します。

2023.04.11開催のコミドク講座. 全国から30名以上が参加.

なぜドクターがまちに出るのか

診察室の中でドクターが感じるモヤモヤ

わたしたちドクターは、病院や診療所といった医療機関の中で1日を過ごしていることがほとんどです。
特に「診察室」というハコの中で、「お医者さん」と「患者さん」という役割で出会うことがほとんどです。

しかし、そのハコの中で、日々さまざまなモヤモヤを感じています。
もっと早くきてくれたらより良いケアが提供できたのになぁ、と思ったり。(早期発見や予防)
患者さんのことを知りたいけれど、診察室の中では生活の様子や困りごとにいまいち具体的なイメージを持てなかったり。
関係が出来てきて困りごとを話してくれるようになっても、医療機関だけでは応えきれないことが多かったり。さまざまなモヤモヤを感じています。

そんな医療機関やドクターを取り巻く社会状況にまで視野を広げてみます。近年の医学トピックでは、健康問題は個人の努力以上に社会的要因の影響を受けている、つまり地域コミュニティや社会構造と健康問題が関連していることが社会疫学と呼ばれる領域の数々の研究で明らかにされています。それらは「健康の社会的決定要因(SDH)」や「健康格差」と呼ばれ注目されています。

健康の社会的決定要因、は多岐にわたる。

つまり、事件(健康問題)は診察室で起きているのではなく、現場(生活の場・"まち")で起きているのです。

また、医療機関に来るのはそもそもごく一部の人に限られていてます。まちの人たちからするとドクターって、自分や家族・友人が病気になってはじめて病院の中で出会う遠い存在だと言えます。

Ecology of medical care (ニッセイ基礎研究所の記事から引用)

ある研究では1,000人のうち1ヶ月で850人以上が何らかの健康問題を感じていますが、医師を受診するのは300人、病院に入院したり大学病院を受診するのは6、7人程度と言われています。Covid19の流行を経て、さらに医療機関に来るひとは減少していると言われています。

ドクター、まちに飛び出してみる

医療機関、そして診察室の中で感じるモヤモヤを乗り越えるためにわたしたちコミドクが提案しているのは、「まちで出会おう」ということ。
それもせっかく診察室ではなくてまちの中なのだから、医師と患者ではなく"私"と"あなた"の関係で出会ってみないですか、という提案です。

ラクガキbyよーよー

※まちとは、コミュニティのことで◯◯町といった地理的なものだけでなく、趣味の集まりや職場、あるいは外国ルーツといった属性などの社会的なもの、そして病気や障害、生きづらさなどを共有した集まりのことを合わせて"まち"=コミュニティとコミドクでは定義しています。

地域・コミュニティといっても定義はさまざま。

まちでの出会いがドクターを変える

まちで出会うと何が起きるのでしょうか。
ちょっと抽象的な話になりますが、お付き合いください。

まちで出会うと、"コト"が起きます。何か偶然の出来事が起きる。
コトが起きることで、2つの変化が起きると考えています。

コミドク、まちで出会うの図byよーよー

一つはわたし、が誰かと出会う前と出会う後で「わたし‘(ダッシュ)」になる。(造語です)
普段と違う、まちの中に出ていくことでわたし’ になっていく。
(密山の場合だと、まちの中で屋台を引いて、お祭りに参加して、その中で)時々、すごく自分を揺さぶられるような偶然の出会いがあって、価値観が変わることがある。わたしが変わる、つまり「わたし2.0」にOSがバージョンアップする出来事が起きたりします。
みなさんにとっても、自分が変化するような出会いというのは少なからずあるのではないでしょうか。
そういう変容する学びがまちに出ていくことで起きていく。

一方で、普段は診察室にばかりいるドクターと、わたしとあなたの関係でまちで出会って、こんな話ができたとか、こんな経験が一緒にできたといったふうに、あなた(まちの人)も出会いを通してあなた'(ダッシュ)やあなた2.0に変化していくかもしれない。
そんな小さな変化がどんどん積み重なっていって、まち・コミュニティがまち'(ダッシュ)やまち2.0へと変化するということが起きるかもしれない。

コミュニティドクターがまちの中に飛び出して関係を築いていくことで、まちの中でコトが起きていく、まちの人と一緒に、生きやすい(幸せ)なまちがつくられていく。そんなできゴトが起きるんじゃないか、そんな未来が生まれることを期待してわたしたちは活動しています。

おまけ〜在宅医療もおもしろい〜

もう一度、診察室に視点を戻してみると、実はドクターから患者へケアを提供しているようでいて、患者さんからケアされているという体験はしばしばあります。飴ちゃんをもらったり、先生も体に気をつけてねと言われたり、ぽつりと好きなこと・趣味を話してくれたり。この前、まちであったね〜という話になるとことさら場がほころびます。診察室の中でもそういったケアの相互作用は起きていて、わたし‘になることは実はあります。ドクターは、あめちゃんをもらうことに戸惑ったりする人も多いのだけど、もらって自分と相手に起きる変化を楽しむ、ことを推奨したいです。

診察室でも相互作用はあるし、在宅ならなおのこと関係性が変化しやすい。

特に、在宅医療という、家に訪問する医療の形は面白いです。在宅医療では、ゲストとホストが入れ替わり、病院の診察室よりもわたしとあなたで出会いやすくなる、まちと診察室の間のような不思議な関係性がうまれやすい場所と言えます。
そういうわけで、在宅医療はコミュニティドクターが人と出会い、まちと関わっていく上で重要な場所の一つと言えます。

ここまで、ドクターの視点で、なぜまちに出ていくのか、まちに出るとどんな変化が起きるかを書かせてもらいました。関心持って読んでいただいてありがとうございます。

後編は、ドクターでも医療専門職でもないけれどまちで出会ったパートナーとなりうる人たちにとっても、ドクターがまちに出ていくコミドクの活動にどんな関係があるのか、より広いまちづくりの視点から語っていければと思います。

(文責:よーよー)

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https://www.commudoc.com/

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